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corotate_seisakuten.apk

こんしるです~
ドゥモ~


先日、「東京大学制作展」というものがありました。

なんかすごそう!


そしてVR体験作品の「corotate」というものを作って、それを展示してアテンドしていました。

5日間。

計38時間。


制作も運営も設営もアテンドも大変だったけど、想定よりもずっと好評いただき、最高になりました。
もちろんコンテンツに満足しきっているわけではないし、会期中にとても有難いフィードバック(皮肉でもなんでもなくめっちゃコンテンツが良くなりそうなホント有難いフィードバック)もたくさんいただきました。
とりあえずそこそこ形のあるナニカを出せ、ひとまず安心はしています。


そして想定外~Second Edition~として、XRKaigiでも展示する運びになりました。
ぼくはxrのひよこです。
周囲のクリエイターたちに恐れおののき、ここ一週間は東西南北全ての方向を同時に向いて三時間に一回許しを乞うポーズをとっています。

さらには想定外~Second Edition II~として、XRTalkでも展示する運びになりました。Fatal Errorを起こしてそろそろ僕は蒸発するかもしれません。


XRKaigiでも「corotate」を展示するし、もしかしたら他でも出す可能性はなくはないなと思いつつ、ひとつだけ強調しておくと、制作展でのcorotateの体験は二度とできないと思っています。


このnoteはそんな「制作展でのcorotate」についてまとめたアーカイブです。






【注意】
制作展で出した段階からブラッシュアップする気しかないので、ここの内容は変わりうります。




corotateさせる

あなたは、VRゴーグルを装着する。VRゴーグルを通し、一人称の視点でバーチャル環境を見渡す。スピーカーからの音を通して、バーチャル環境に響く音を聞く。バーチャル環境の3Dアバターを自分の身体と同じように動かす。あなたは、もはやバーチャル環境の中に囚われている。 実環境を擬似的に再現できるVRによって、どのような体験が可能になるのだろうか?私の一つの答えは、環境を自由に操るという体験だ。 あなたは、環境を身体の一部のように動かすことができる。あなたの動きに合わせて、あなたを取り囲むバーチャル環境がなめらかに変わっていく。

制作展HPより

テーマは「簡単な身体動作で世界をなめらかに変えるVR体験」です。

日常VRユーザーとして「VRならではな体験って何だろう……?」みたいなのを結構考えていたんですが、その折で『なめらかな世界と、その敵』を思い出し、さらにOuterWildsとかいう激ヤバゲームをプレイしてしまったことで、それになってしまいました。

「何かを見ること/見ないこと/見ようとすることが世界に干渉する」「単純な身体動作だけで空間が変化する」「複数の空間に同時に存在することで、存在感をバグらせる」などを考えて、特に後ろ2つについて強調することにしました。

なお1個めについては、制作展で別にあった「まなざしの条件」という作品であまりにも最高に作り上げられていました。本当にああいう作品が好きなんだよな〜〜〜〜〜〜〜〜になりました。



何気ない身体運動で、会場を歩き回る必要がなくて、実装しやすそうな感じのものとして「回転」「ハンドジェスチャー」を選び、さらに「回転で星が回るとかだと割と自然かな」「でも星が回るって時間が動くってことじゃない??」「じゃあ回転に合わせて時間も変えちゃおう」となって周囲の環境だけでなく時間も変わるようにしました

回転の周期運動って時計とか暦とかの時間の周期にそっくりじゃないですか。

え!?時間の周期性の話!!!?!?

制作展で別にあった「¡¿ı̣」という作品であまりにも最高に作り上げられていました。本当にああいう常識覆し系作品が好きなんだよな〜〜〜〜〜〜〜〜になりました。



さて、実際の展示の話をします。

体験ブース外観


体験するブースには、作品のキャプションがあって、簡単なデモムービーがあって、暗幕で仕切られた体験エリアに入って体験する感じになっています。

さて、実際にこのブースの前にやってきたあなたは、暗幕の前で作品の説明(上で書いたこと)を受けると、暗幕の部屋に入ります。

暗幕の部屋は3m四方の正方形の形をしており、スタッフがいるだけで他には何もありません。
今入ってきた方の辺の暗幕に「出入口マーカー」があるだけです。
スタッフから「出入口の方を向いて、正面に立ち、VRゴーグルをつけてください」の指示の後、指示に従ってゴーグルをつけます。


ハンドトラッキングで目の前のボタンを押すと、あたりの風景が一気に表示されて、体験がスタート。
「ゆっくり時計回りに三周してください」

最初の一週目は回転に合わせて部屋の外にある星が動き、太陽が昇り、時計が動きます。回転に合わせて天球が動く、つまり時間を回転によって操っています。

二周目ではつまむアクションが解禁されます。
指をつまんで左右に動かすと、自分の視界がスリット上にタテの縞々になって、図書館の空間と部屋の空間を切り替えられるようになります。
もちろんパラメータを振り切って図書館だけの空間にすることもできるし、どちらも同時に表示して気持ち悪い不思議な感じになることもできます。

三周目はさらにもう一つの空間も表示されるようになります。
表示は先ほどと異なり、空間に固定された点から広がるようにベッドルームが広がっていきます。
三つの空間を同時に表示してヤバい空間にして遊んだりしていると、キャラクターが手を振ってくれています。キャラクターはどちらの空間にもいるので、間にすると「どっちにいるんだ…?」となることでしょう。


三周が終わると周囲は暗転して体験が終了。

「いかがでしたか?」と言われて、皆さん色々な感想やコメントをして下さりました。
気持ち悪い不思議な体験だった~とか、VRに感動した!とか、手で操作できるのが面白かったとか、時間変化の手がかりを増やしたほうがいいよとか、この切り替え手法めっちゃ面白いとか、あとでディスカッションしようね^^とか……

しばらく余韻に浸ったり振り返ったりしながら、あなたは正面の出入り口の暗幕に手を掛けて展示エリアの外に出ます。









corotateさせない

さっきのは半分ウソでした。


テーマは「簡単な身体動作で世界をなめらかに変えるVR体験」です。

と書きましたが、より正確には

サブテーマは「簡単な身体動作で世界をなめらかに変えるVR体験です。

というのが正しい表現でした。


「身体動作でなめらかな空間変化というVRならでは体験」は、このcorotateという作品のメインのテーマではありません。



暗幕の部屋に入り、三周VR環境を回り、感想を述べて、暗幕を出ようと出入口の暗幕を開けると、そこは暗幕の外の展示室・・・

ではありませんでした。


ディスプレイとキャプションが垂れ下がる、暗幕に囲まれた謎の空間に出ます。

ディスプレイには先ほどまでの自分と同じように回転する、先ほどのVR環境にいたキャラクターが映し出されています。

彼が手をつまみ動かすと、映像は縦に線が引かれたかと思えばそこから暗転し、彼の姿は消えます。

そして、次のように表示されます。


corotate
- [動] (他のものと)同じ速度で回転する。
                したように思わせる。


VRで3回転している間に、現実では1/4回転多く回っていた。


VRでは3回転しており、暗幕を出るまでは正面が出入口であったはずのものが、実際にはVR映像は少し早く回るようになっており、3と1/4回転していたため、正面は出入口ではなく別のエリアになっていたのです。

暗幕が正方形の形になっていたのも、隣の作品と間隔を開けずに暗幕が繋がっていたのも、隣に隠し部屋があることをにおわせないための工夫でした。



corotateのメインテーマは、「"VR体験"をVRゴーグルを装着したバーチャル環境内の体験にとどめず、現実世界に戻っても一連の体験が続くコンテンツ」でした。

なんでそうしたかって?おもしろいと思ったからです。
終わったと思ってたら終わってなかったときって興奮しませんか?


この回転角度をばれないように変えるのは「リダイレクション」という研究手法で、狭い部屋でも歩く方向をちょっとずつ変えることで広いバーチャル空間を歩けるようにするみたいな応用例があったりします。

このリダイレクションを事前に全く知らせずにコンテンツに用いてマジックのタネのように使ったら絶対に面白いだろう、と思っていたっていうのは動機のひとつとしてあります。



ここまでやってお客さんからは「うわ~~~騙された~~!!」とか、「は???おもしろ~~~」とか、なかなか驚きを伴う感じのいい反応を頂き、アテンドしてた身としてはとても面白かったです。

結構な人が騙されてくれて、疑いを持った人がだいたい2割ぐらい、正しい出入口から出ちゃう人が一日一人ぐらい、ほかはみんなしっかり騙されてました。やったぜ。





なかなか製作中はしんどい思いでしたが、みんなめちゃいい反応をしてくれたので完全に救われました。メンタルをリセットしたね~

やっぱり他者の反応におびえて自信を無くすフェーズと、他者の反応をみて自信を勝ち取るフェーズだよね、創作ってね


そしてとても嬉しいことに、制作展全体での事後ンケートにある「良かった展示はなんですか?」みたいな項目で、同率一位で最多票を頂きました。
個人的にはもう一つの最多票の「まなざしの条件」があまりにもコンテンツとして刺さっていたので、なんでこんなgood作品と並んでるんだ!!?!?!?というのが半分と、ちゃんとウケてよかった!!!!!!!!という安心が半分でした。

「体験」に全振りしたコンテンツだったので、若者というか学生にウケてアートとか研究とかの人にはちゃんとウケなかったような印象があります。

それはそう。
なにかを考えさせるパワーはなかったからな~


あとはVR体験がそもそも初めてで、メインの驚きの前のやつで感動のピークがきてそれで票を入れた、つまりはメインコンセプトが伝わってないのに票が入った例もあるんだろうなと推測しています。

まあなにはともあれ自信になったのでヨシ!!!



ここからは完全な感想大会ですが、5日間よく走り切ったな~と思いました。
結局みんな楽しんでくれてたっていうのも、一緒にアテンドを手伝ってくれた仲間or同じ部屋で他の作品を展示していた仲間がいたっていうのも効いてたと思います。
本当によく走り切ったな……

(というのはちょっと嘘で、本当は二日目が起きてから頭痛吐き気で死んでたので、最初2時間ぐらい動かせなかったという話もあります。
普通に吐いてました。ゆるしてください… 一緒に低気圧を憎みましょう。)


運営業務とか、作品制作とか、大変ではあったけど、間違いなく何かしらの経験として生きることが大きいだろうという気がします。

まあそれを早速生かさないといけないXRTalkとXRKaigiが迫ってるんですけどね!!!!!!!!!!!!


ウワ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




制作展4日目の夜に食べためちゃウマアヒージョの写真で読者に攻撃して、この記事を締めたいと思います。
がんばれ未来の自分~


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