歯医者

友達の歯をまじまじと眺める日があったのだが、考えれば自分の歯はガタガタな事に気付く

お金もある事だし、この際歯列矯正をすることに決めた

歯医者を予約出来たことにワクワクがとまらない

矯正開始までの残りの時間、私は道行く人全員に今のガタガタな歯を見せつけながら歩いた

顔を覚えられようと次会うときは歯が整っているはずなので羞恥心などなかった

ついに歯医者の日がやってきた
まずは、先生に今の歯の状態を見せるらしい

「あ〜!そういう感じの歯なんですね」

「結構ガタガタな歯ですよね〜痛くてもいいので綺麗にしちゃってくだせ!」

そうお願いすると先生は少し悩んだ表情をしていた

もしかして矯正をするのもそんな至難なのか?
すると先生は変なことを言ってきた

「いやこの歯なら、矯正しなくていいと思いますけどね」
「えでも、結構歯に隙間空いててガタガタなんですけど?」
「だからこそですよ!隙間が空きまくりじゃないですか!空きまくりだからこそ、この歯を生かすんですよ!」
「生かすってどんな風にですか?」
「質問ですが、貴方は歯間ブラシをやられた事がありますか?」
「ないかもです。」
「ね?生かせているでしょ?
歯がすきっ歯ってことは、歯間ブラシをやる手間が省けるんですよ!せっかくのその隙間を無駄にしないでください!」

そう言われた私は突然ハッとした
ここでもし矯正で隙間を埋めてしまったら、今までやらなくて良かったことを、これからやらないといけなくなる
次第には歯間ブラシの面倒くささに自ら歯をこじ開けて、隙間作ってしまうだろう

やはり一般人と歯に詳しい人間は考え方が違うなと考えさせられた

「あの、やっぱり矯正は大丈夫です。今までこの隙間の大切さに気付けてませんでした。
これからはこの隙間と一緒に幸せな家庭を築いていきたいと思います、ありがとうございました!」
「そうおっしゃっていただけて幸いです。」

私は失う前に大切なものに気付けて、先生には感謝しきれなかった

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