淡々とした世界

ぼくは何時も違和感を持っていた
具体的に何がと、はっきりは言えないが
学校の友達
両親 親戚のおじさん達
隣のおばさん
何時もニコニコしている
何時も挨拶を交わす
ぼくがうつむいている時も
ニコニコ話しかけてくる
おはよう!
こんにちは
こんばんは
今日は学校?偉いわね
夕飯はなに食べたい?
今度の休みは君の行きたいところへ行こうか
日々交わされる優しい言葉
顔を見上げると
笑顔が仮面のように張り付いている
目がどんよりと曇っている
何かがおかしい
学校へ行っても
普通に交わされる会話
先生の授業
機械のように流れていく
感情は何処に有る?
突然立ったとして みな一斉に此方を見るが 一瞬で空気は元通り 淡々と時間は進む
放課後ひとりで教室にいると ホッとする
外の景色は部活の風景
聞こえる声は
無機質な適切なことば
そこに熱い感情はない
教えられた言葉を繰り返す
まだまだ出来るぞ
もう一周 ボールを見るんだ
セオリー通りの掛け声
そこに熱さはない
皆ただ立っているだけ
言葉だけが動いている
色が灰色に染まっているような気配
空を見上げてホッとする
夕焼けは朱に染まり 段々と夕闇に向かう
自然はまだ大丈夫だ
変わったのは人間だけ
テレビを見ても何処か上の空な表情
何処を見ている

ふと気づいた ボクも
本当の言葉が出ない
鏡を見たらニコニコ笑っている
何故?
行ってきますの言葉と張り付いた笑顔
ああ ボクもこの世界に馴染んだのか
哀しい筈なのに ニコニコ
隣のおばさんに挨拶する
何時もと変わらない風景
空は蒼く日差しは眩しい
  はず

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