LGBT理解増進法について考える

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はじめに

今国会で審議されていて、Twitterや時事系YouTuberにも多く取り上げられている、いわゆるLGBT理解増進法(議案・性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案)について考えてみる。

この法案のメリット・デメリットを考える前に、この法案には様々な問題点があると私は考える。
私はこの法案に反対の立場であるが、可能な限り中立的な視点で法案について考察してみようと思う。

LGBT法の考察


1.      LGBTの概念について

LGBTは性的少数者ともいわれ、時にLGBTQ・LGBTQ+など説明する側の人によって定義が変わることがある。
つまり、恣意的に定義することが可能であり、後から「私達も性的少数者だ」と名乗りを上げることも可能だということ。
但し、LGBT理解増進法における差別解消の対象は性指向(恋愛対象又は性的感情の対象の性別)・性自認とされているため、ロリコン・ショタコン・ペドフィリアなどは、直ちに性的少数者に定義されることはないと思われる。
また一部の性的少数者からは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア(クエスチョニング)などをひとまとめに表現することそのものが差別的だとする声もある。性自認の概念が発生する前までは戸籍でも自認においても、レズビアンは女性でありゲイは男性であったため、それぞれの主張は違うものもあり、十把一絡げに法的な定義をするのは確かに乱暴であるといえる。

LGBTの概念という点においては、衆議院のHPに記されている法律案の表題が「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」となっているため直接の問題はないように思える。しかし理解増進を謳うのであれば、この概念の問題は置き去りにしてはならないだろう。

2.      LGBT理解増進法とLGBT差別禁止法

LGBT理解増進法が提案される前に、LGBT差別禁止法というものがあった。
2015年 LGBT法連合会によって発表されたLGBT差別禁止法は、2019年に自民党において議論されたものの反対派も多く、国会未提出に終わった。2021年にも、今度はLGBT理解増進法として特命委員会を設置し審議されたものの、こちらも法案未提出となっている。
理解増進法は、差別禁止法の問題点を解消・緩和して制作されたものと思われるが、一般社団法人LGBT理解増進会がその相違点を発表している。
このHPだけを見ると保守派にも理解を得られる優れた法案のように思えるが、当の保守派からは現在も様々な反対意見が出ており、推進派からはそれらに対する満足な回答は出ていない。

反対意見の一つとして挙げられるのは、性自認の問題である。
医師による鑑定を必要とする性同一性障害ではなく、自己申告による性自認を法に規定すると、現在の性別の法規定を完全に破壊するため、先天的性別で分けられていたスペースが、性自認によって分けられることになる懸念が挙げられている。よく出されている例として、女性用の浴場・トイレ・更衣室などに性自認女性(肉体的には男性)が入ってきても拒否できないことが挙げられる。性自認女性ではない男性が、性自認女性を自称して女性用スペースに侵入する恐れがあり、性犯罪を誘発するのではないかということである。LGBT理解増進法に禁止事項が設定された場合、双方の権利が競合するため簡単には解決できないだろう。

更には宗教の問題もある。近年キリスト教においては同性愛に寛容な向きもあるが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教・ヒンズー教など、原理的に同性愛を禁止する宗教も少なくないため、法が宗教を弾圧することになりかねない。
差別禁止が規定されても個人の信教は侵害しないものの、入信者に同性愛禁止の教義を守ることを求められなくなり、教義を護る権利が侵害される恐れがある。この点には配慮が必要だろう。

LGBT理解増進法推進派の中にLGBT禁止法推進派も含まれている点は、LGBT法反対派にとって最も懸念する点かもしれない。罰則規定を設けないとする理解増進法は、それを設けるとする禁止法を改善したものという位置付けではあるものの、禁止法推進派が法案成立にかかわる以上、より禁止法に近い法案になる可能性もある。又、理解増進法成立後に法改正することで、禁止法に近づけることも懸念される。これを払拭するためには、賛成派と反対派両方に十分議論させる必要があるだろう。

 3.   差別の定義


被差別を訴える人の中には、差別がどのような行為を指しているのか、はっきりと定義せずにその言葉を使う人がいる。「暴力を受けた」などの深刻なものから「いやな思いをした」というものまで様々だ。「端的に言って、万能すぎる」のである。
自分が不利益を得ることをすべて「差別」と、印籠のように掲げることで利益を得ることができてしまうと、それは特権になってしまう。
また、差別を訴えられるのを避けるために、マジョリティとマイノリティの間に溝ができてしまうと、LGBT法はその趣旨に反し理解を妨げる事になってしまう。
法によって差別を禁止するのであれば、してはならない差別行為を厳密に定義するのが最低限の条件だろう。
別の方法として、性的少数者を詳細に定義したうえで「日本国政府」として差別に反対する「宣言」を国際的に発表する、という手段もあるのではないだろうか。
いずれにしても、まだまだ議論が足りていないように思う。

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