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ヨシモト∞ホールとピスタチオ

お笑いコンビ・ピスタチオ、2022年5月末日をもって解散してしまった。所属事務所に籍を残しての運びということではあるが、寂しい限りである。

始めて2年ほどになる本noteにおいて、お笑いについてを主だったテーマとして記事を書いてきたわけではあるが、こと芸人のそれぞれのネタに関しては深い言及を避けてきた。好きなものについての文章を書くと、私の場合どうしたって長くなる。各ネタのどの部分がどういうふうに好きで、ということを長い文章で語り散らすのはどうにも無粋であるような気がして、このスタンスは今後も変わりなく続けていくのだろうと考えている。

だからこそ、誰もが知るところである「白目漫才」についてはこのスタンスを守りたいと思った。しかしその一方で、ピスタチオの「お母さんズ」に言及しないまま無言で最後を見送るのは、あまりに堪えがたいものがあった。無限大ホールで見てきたステージの中でも随一の、痛烈なインパクトを受けた一本だ。

無限大ホールの高さと近さ。この劇場固有の持ち味を誰よりも効果的に使い、最大限に生かしていた。目線の使い方と声量に心をつかまれた。客席とのつながりの作り方や熱の届け方が圧巻だった。生の舞台の素晴らしさを体現しているような、強い魅力を持ったコンビだったと思う。

そのときの動画がある。劇場公式のものなのでリンクを貼ることに障りはないが、これを貼ることに最後まで迷いが残ったことは記しておく。

同じものを現場で見たからこそ分かる。色々なものが映されていない。撮影者の力量とかそういう話でもなく、カメラが切り取れないもの、モニターに収まりきらないパフォーマンスがある。

テレビに愛される、それだけでも相当に難しいことだと思う。されどもその一方で、テレビが映しきれなかったもの――モニターに入りきらなかった、強い個性を放つ光が確かにそこにあったのだということをここに書き留めておきたい。その輝き方は、流星のようだった。その一瞬を見た者は、おそらく幸せになる。


あとがき

なんとか変わらずに、しゃべる仕事をしています。今はもういない人から引き継いだ現場もいくつかあります。苦しいことも多いのだけれど、それでもやはり壇の上は特別なところで、まだまだ降りたくないなと思います。一度本気で想像してみたことがありますが、これは相当にさみしいことでした。同時に、様々な事情でここを降りていった人が数多によぎり、在りし日のステージングを思いかえしては、やはり惜しいなと思わざるを得ません。

6月1日に放送された「NEWニューヨーク」でのピスタチオ解散式、小澤さんの奥様のメッセージの限りないあたたかさに胸を打たれました。舞台を降りるときの重さこそ、そこに上がるために背負わなくてはならない重さなのかなと、とりとめもなく考えた夜でした。

出典

[1]ORICON NEWS「5月31日解散のピスタチオ、12年の支えに感謝 若かりし頃の写真添え「ありがとうございましーたっ」」(2022.6.1)
https://www.oricon.co.jp/news/2236891/

[2] YouTube「【ご報告】ピスタチオ、解散します」(2022.4.27)
https://www.youtube.com/watch?v=eMfRcUvkQZc

[3] YouTube「【公式】ピスタチオ 漫才『お母さんズ』」(2021.1.9)
https://www.youtube.com/watch?v=wwqCJnp4AFY

[4] TVer「NEWニューヨーク」「【涙のラストステージ】ピスタチオ解散式」 (2022.6.8公開終了)
https://tver.jp/episodes/ep5nmg0y7t


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