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まんぼう(まん防)って何?~伝わらない言葉での説明は無意味です!

最近頻繁に耳にすることが増えた「まんぼう」。まったく魚の翻車魚(マンボウ)と関係のないシチュエーションで使われています。

それでも、世に出て暫くたった頃合い。多少は浸透したのか?と思いきや、今朝、家族に尋ねられました。

「このまんぼうって、最近よく聞くけれど、どういう意味なの?」

国民全体に伝えたいことを、伝わらない言葉で発信しているということですね。「まんぼう」の説明をしつつ、「なぜいきなり、こんな言葉が出てきたんだ?」を自分なりに考えます。

まんぼう(まん防)とは

初めて「まんぼう」を耳にしたのは、1週間の首都圏の緊急事態宣言延長を告げる記者会見であったと記憶しています。

諮問委員会の尾身(おみ)会長が幾度となく「まんぼう」と発言したことに対して、報道番組のキャスターが「この『まんぼう』というのは、『まん延防止等重点措置』(まんえんぼうしとうじゅうてんそち)の略語だそうですよ。」と間髪入れずに説明を入れてくれました。

おかげで、自分は迷わず、タイムラグも生じず理解ができたわけですが・・・。

そう、「まんぼう」は「まん防」だったのです。発音は魚の「まん(↘)ぼう(↘)」と異なり、平たく「まん(→)ぼう(→)」になると思われます。

因みに「諮問委員会」とは、「基本的対処方針等諮問委員会」が正式名称で、上流に設置されている「新型インフルエンザ等対策有識者会議」に対しての、諮問する(法令上定められた事項について、意見を求められたら答える)委員会ということになります。

尾身会長は地域医療・感染症などの専門家(医学博士)であり、独立行政法人地域医療機能推進機構の理事長を務めていらっしゃいます。余談ですが、専門家としての見解と政治(経済)の事情との板挟みになっている姿が、個人的には印象的で、「政治の視点は持ち込まないで話して欲しいな」なんて思いながら、いつも記者会見を拝見しています。

「まん延防止等重点措置」とは

「まん延防止等重点措置」とは、3月13日に施行された新型コロナウイルス対策の改正特別措置法で新設されたものです。よくわからなかったので、調べてみましたが、「そもそも、緊急事態宣言ってどういうこと?」という疑問まで湧いてしまいました。

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今回、感染者が下げ止まりでありながら中緊急事態宣言が解除されるにあたり、解除後であっても、営業時間短縮などコロナ感染予防に関する命令を継続し、違反者には罰則を科せるようにするもの・・・のようです。

「緊急事態宣言」の一歩手前で適用されるもののようですね。政治的には大きな違いがあるのだと思いますが、個人的感覚では、「まん防」であっても「緊急事態宣言」であっても多少のレベルの差があるだけで、自分がすべきことは変わらないと感じます。

キーワード開発=ブランディングとしての「まん防」

ごくごく自分の周りだけを見れば、家族も友人も「まん防」ってなんだよ?と怪訝な表情をしている人がチラホラ。皆さんはどうでしょうか?

「まん防」がどれだけ認知されているのかは、正確にはわかりません。ただ一般的な言葉ではなく、かつ、魚の「マンボウ」の可愛らしい姿がすぐに頭に浮かんでしまうため、お世辞にも「わかりやすいっ」、「うまいっ」という表現ではないな、と。

ではなぜ、この「まん防」を唐突に使い始めたのか。それは政府としてのキーワード開発ではないかと、個人的には考えています。

今まで「わかりにくい」「若者に伝わっていない」「誤解される」という評価と現実が政府の説明には多くありました。そこを緩和するために考え出されたのが、「まん防」だったのです。

「覚えやすい言葉で、国民に身近に感じてもらおう/覚えてもらおう」

「まん防」という短くシンプルな単語にして、「まん延防止等重点措置を今、とってくださいね」という政府のメッセージをわかりやすく、合言葉のように、もっと言えば流行語も目指しちゃおうかなといった感じで・・・広めよう、ということではないでしょうか。

いや、待てよ。実は昔からある言葉ではないのか?

・・・と一瞬思いましたが、Googleで約 4,540,000件表示される検索結果をざっと見た感じでは、ここ最近の記事しか発見することができませんでした。

キーワード開発の先駆者、小池東京都知事

なんでこんな事を急にし出したのだろう?いつも新しい言葉を使い注目を集める、東京都の小池知事の真似をしたのでしょうか?

しかし、ここが政府の読みの甘いところ。例えば、「ステイホーム」は小池知事の英語の中ではわかりやすく、今や当たり前のように日本国中で使われています。もっとも新しい一般用語の一つと言えますが、これは数少ない成功例です。

「ロックダウン」はどうでしょう。強烈なインパクトがあり、誰もが知るところになりましたが、海外のロックダウンと日本のロックダウンはレベルが異なり、むしろニュースを見ていると、「日本のロックダウンと違う?では、小池さんの言うロックダウンとは?」と混乱を招くことになりました(脅しとしては成功ですが)。

周囲では小池都知事が横文字を使うたびに、「なんで英語?」とざわざわします。「ロックダウン」も「『都市封鎖』でいいじゃん。その方がわかりやすい」と。

話題にはなるけれど、違和感や疑問、さらに不信感も募る。

これが何らかの製品やサービスのプロモーションであれば、それだけでも大きな成果かもしれませんが、「理解してもらってなんぼ」な政治家の言葉、ましてやそれが「実行してもらってなんぼ」のコロナ対策関連用語と考えると、決して及第点ではないでしょう。

説明のプロモーションが無いまま、垂れ流し状態

それでも、小池都知事のキーワード開発は個人的には好感がもてます。なぜなら、(伝わったかは別にして)小池都知事はパネルを用意したり、何度も説明をはさんだり、その新しい言葉の定着のプロモーションも同時に行っているからです。

覚えてもらおう、理解してもらおう、使ってもらおう。そうして、広めてもらおう。その目標に向かっての努力が見えます。

「まん防」はどうでしょう?「まん防」は突如登場しました。

あるいはいわゆる皆さんがおっしゃった「まん防」をいつ使うかというしっかりしたことを考えて、そういうようなことが今この2週間の間に私は求められて、そのことができるかどうかというのが解除をやるときに一つ重要な、当然考慮すべき点になってくると思います。
新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見

この記者会見のトランスクリプションを読んでみても、説明と言えるのは、

この、いわゆるまん延防止重点措置、いわゆるまん防ですよね。これについては、実は、私ども、私も含めて分科会はかなり強い関心を持っています。
新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見

この短い1文だけです。最初に耳にしてから3週間近く経ちましたが、初回を含めて報道番組で二回、キャスターによる説明を自分も耳にしただけなのです。

もちろん、どこかで説明していて報道する側がカットしたのかもしれませんが、政府は「まん防」の十分な周知もせずに、周知されているかも確認しないまま、「まん防」を連呼していことに代わりはありません。

そりゃ伝わるはずがないですよね。

今日の昼前の情報番組でも「『まん防』とは」の説明を久しぶりに耳にしました。まだまだ行きわたっていないことを、メディアは理解しているのでしょう。

「のぼりまんぼう」と「くだりまんぼう」

因みに、「まん防」にはバリエーションがあります。それが「上りまん防」「下りまん防」です。

どういった意味なのか?詳しいところを知りたくてネット検索したのですが、出てくるのは確実な意味ではなく、「どの段階で使われるのか」といった使うタイミングでの説明だけでした。

使うタイミングと合わせて考えると、「上りまん防」は「これから感染者が増える、なんとか食い止めようぜ」、「下りまん防」は「次第に感染者も減って行くから、少しずつ緩めるか」・・・的な意味だと思われます。

なんか、驚くほど曖昧というか、それ、明確に意味通じますか?

「伝わるメッセージ」を発信するには、「伝えられていない」ことを自覚するところから

以前noteに書いた「『伝える』ことの難しさ ~コロナ感染予防に関するメッセージ」にと同じ見出しになりますが、伝わるメッセージを発信するには、伝えられていないことを自覚することが肝心と考えます。

「理解して欲しい」ことは何か、ターゲットは誰か、どのように伝えるかなど詳細に企画し、世に出したら今度は「伝わっているか」の検証を行う。伝わっていないのであれば、課題は何か検証し改善案を考え、修正を加える。そう、認知施策において普通にPDCA(Plan・Do・Check・Action:モノゴトを継続的に改善するためのフレームワーク)を回すのと同じです。

政府からの情報発信ということで、少し変更するのにも悪意ある意見や反論が出てくるのは予測できますが、効かない効果を期待し続けているより、ちゃきちゃき改善を加え、「結果的には良かった」となって欲しいものです。

伝わらない言葉での説明は無意味です!もう一度、「まん防」とは何か、政府からのしっかりとした説明を聞きたいです。(もしくは、使うのをやめるか・・・の選択肢もあります)


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