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語られるまでの時間

大人になるにつれ、身の上の話を端的にできなくなる局面は増える。事情のもつれ(痴情ではない)がより深刻になる印象だ。そりゃ成人すれば、ただただロマンティックでドラマティックではいられない。営みが介在するからだ。どう生きるかはとてもリアリスティックな話だ。どんな生活を理想とし、どう実現していくかはとてもシビアな決断が問われる。

なぜ、その時、そうした選択をしたのか。未だに説明できないこともたくさんある。分かってはいるが口にする勇気がないことたちも。なぜ?を相手によく問うてしまいながらも、とても残酷な問いかけだとは思う。こちらが聞かれても答えに窮する。だからこそ相手の顛末を知りたい欲も湧く。この人なら自身の文脈をどう整理しどう説明するのか、と。

相手と言葉を重ね、時を共にし、零れ落ちる言葉から相手の背景を類推する。語られるまでの時間をゆっくり、じっくり待れば良い。砂時計の落ちる砂をただ眺めるが如く。ただ、そういられるほど、私たちには余裕がなかったりもする。(2020/7/30)

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