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ことのはいけばな’22 小満 第24候『麦秋至』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

五月のおわり、東信濃のとある風景。雲のことづてをきく。

*浮雲のことづてのそら見上げてはおおきお山のなお空みちる

五月雨 夜の雨
*五月雨や夜降り込めておちこちにあをくみだせりしらべにならず
*渾々と泉湧きいでよみがえる黄泉平坂息も切らさず
*そのみづを長雨ながめているよりすべもなくみずからのみづ水垂れ溺るる
に沈みこんで行くとき明けそめて憂鬱のかたち眠たくなりぬ

*あの晴れた空滲み落つあぢさゐのこうべはまるくうなづく五月
*さあいなる内緒の花の咲く宵に花の下にて戯れに酔ひ
*あぢさゐや雨をも呼びて染まりたりあさぎはなだにあをくむらさき
*あぢさゐのみづのうつわは溢れけり四ひらのひさし雨宿りして
*さらさらに鹿の蹄の跡残る鹿子斑らの木洩れ陽の沢
*羊歯ぎりり笹さめざめと三日月の五月の闇は小さきものへ
*苔のつゆさおとめ夜に息づける微かに光り脈を打つもの
*九輪草荼毘にふされし死者たちへ差し掛ける傘たれか微笑む
*禁足の湿りし草の降り積もり聖地に眠る木乃伊やすらへ



6月初めの花手水
 山法師、紫陽花、モナルダ、鳴子百合、土佐水木

*あの池に鯉いなければ散歩みち手水の下のひきに曳かれて
*ほら、あのとスコットランドの国の花それに似たると紅きモナルダ
*草はらに十字架並ぶ山法師いっせいに風灯るものあり
*葉隠れの緑の翳り鳴子百合花ほの白く何避けたらむ
*鳴子ゆり雀を追わず葉の下で何を負うなり内緒の手紙

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