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ことのはいけばな’22 春分 第12候『雷乃発声』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

【蕾】…「蕾」という漢字。「雷」が入っておる。

*紫の雷鳴とよもす蕾かな咲きいづる音遠雷に似て
        
*むらさきの雷鳴とよもす蕾かな花咲きいづる遠き闇より

*さくら花暗やみ裂いて石群れのかみなりの春呼び交わす聲

*でんでんと裂ける十字のひしめきて花ひらくとき虹彩放つ

*光あれ最後にまぶた分かるればみどりの閃光桜花のごとし

【桜浪】

*うつくしと声重なるる桜坂惜しむおもひにめぐる春なり

永遠とこしえに浪寄す渚桜浪何年ここに通ゑるのだらふ

*幾年も花の波寄すはるけさよ道ゆく人のしゃぼんの淡さ

【桜雲】

*国見して舞ふ花びらの桜雲龍の通い路紫雲たなびく

*花叢のむら雲の室ねむり姫ぬくきしとねは八重に包まれ

*花曇り蜜蜂とよもす錯乱の蜜滴りて峰や崩るる

*花の下その花下の桜浪遊びをせんとや生まれけむとか

*桜雲かみなりいろの迸りおさなき龍の巣立つ春かも

*恋初めし桜のもとで三千世界みちあふちほうとしてきた生きものの世あり

*目のごとき万の桜花に身の竦み吹雪の中で君を探すも

*花灯りどうして君の手を取って行かむといわなかつたのだらふ

*まれびとの花とひととは隈無くも逢瀬を重ねここに立ち居り

*花や君まれびとならぬまたたきの星の数ほどまみえてきしを

*ひとはその空白にこそ恋をする桜見上げし時は止まりて

*揺るぎなくその一瞬の空隙を刻みつけてよ花の笑むとき
*揺るぎなくその一瞬の空隙を刻みつけてよ花落ちるとき

*絹糸の光のすうっと櫻雲春は生まれて死ぬる行き交ひ

*豪勢に死に急ぐほどたけなわに忽然と君いなくなるかも

*桜花千のひとみでひとをみつ天使のごとく落ちるひとひら

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