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Vol. 15 2024年9月リーダー 「ビジネスの本当の意味 〜信じる力〜」 by 紫藤由美子

経済活動とは、限られた資源を効率よく使い、人々の生活水準を向上させ、ひいては地域や国家の繁栄に寄与するもの、と定義されています。その中で、長年、ビジネスとは利益を追求する活動だと理解されています。

確かに、経済的な成功や成長はビジネスの重要な側面です。でも、ビジネスの本質を深く探ると、それは金銭のやりとりや収益をあげることではなく「信じること」に根ざしていることがわかります。

この起源となるお話しを聞きました。四千年以上前のエーゲ海文明にさかのぼる、宗教家ヘルメスの話です。

この頃は物々交換の世界です。一つの地域で、ある季節は豊な収穫を得ても別の季節には何も採れないかもしれません。春に豊かな地域、夏に豊かな地域、などさまざまです。このような状況では飢えないためには奪い合い、争いしかありません。

それを憂いたヘルメスが「貨幣」と「貿易」の制度を作ったのだそうです。

自分たちの土地に作物が取れない時、発行された貨幣を実りのある別の土地に渡し、そこから作物をもらう、というそれ自体に価値を持たない貨幣を、食べ物と交換できる価値のあるものに変えたのです。物々交換を通貨に変えたのです。

ここで大事なのは、それを成り立たせるためには「信じること」が必要だったという事です。相手を信じることなしには成り立たない仕組みだったのです。

ヘルメスは流通・貿易の仕組みを作っただけではなく、そこに信仰心と精神力を鍛えることを意図したのだそうです。それが今でも貨幣の価値として成り立っているのですね。このヘルメスの像は三越デパートの入り口でも見ることができます。

今でも、ビジネスの世界では、顧客やパートナーとの信頼関係が不可欠です。信頼がなければ、どれほど優れた製品やサービスを提供しても、長期的な成功は望めません。

顧客は、商品やサービスを購入する時、それが期待通りの価値を提供してくれると信じています。ビジネスパートナーは、お互いの契約や約束が守られると信じて協働します。この信頼が崩れた時、ビジネスはたちまち崩壊してしまいます。

老舗と言われるような大企業の長年の実績に基づく信頼が、一瞬にして崩壊する例が続いているのでとてもわかりやすいですね。

10年以上前にベストセラーになった本の中で、Apple社が革新的に飛躍し、圧倒的な存在になった理由について触れています。Apple社は「全ては世界を変えたいという想い・信念でやっています」というなぜやるのかという信念がとても明確で、人々はこの想いや信念に動かされた、と書かれています。

また、期待されるものを提供するのではなく、期待を超えるものを創り続けたのです。想いに賛同した人たち、そして期待以上のものを受け取った人たちがAppleのファンになり、次の商品も他社に類似商品があったとしても、Appleから買う、という信者になっていったのだそうです。

消費者ではなく信者なのです。このような信者を持てる企業が儲かる、儲かるとは「信+者=儲かる」なのだそうです。

まず、ビジネスの成り立ち自体が、自分を信じることから始まるのですね。事業を立ち上げる際、自分のアイディアを信じ、その実現に向けて行動します。

リスクもある中で、自分のビジョンを信じ、未来に向かって突き進む勇気が原動力となり継続できるのですね。信じる者が夢を現実にできるのです。そこには揺るがない信念・信仰心が必要なのです。そして、偉大な経営者と言われる人たちは無私・無我の心で相手・お客様のことを考え続けると言われます。

ビジネスはお金を稼ぐ場ではなく、お尽くしする場であると帝王学でも言っています。「仁徳」の概念です。

仕事というのは「仕える事」、働くとは「側を楽にする=周りの人を楽にすること」と言っています。

自分を信じ、相手を想い相手から信頼されることがビジネスなのです。信頼の結果、利益という成果物を生むのですね。

これがビジネスの根幹であり、本質・本当の意味、ではないでしょうか。

写真:canva.com/metamorworks

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