【第667回】『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(ジョージ・ルーカス/1999)

 遠い昔、はるか彼方の銀河系。平和だった銀河共和国に混乱が訪れていた。通商連合は辺境の惑星との交易ルートヘの課税問題に決着をつけるべく、武装艦隊で惑星ナプーを武力封鎖。即位間もない若き女王アミダラ(ナタリー・ポートマン)は連合の要求を拒否し、事態は悪化。元老院は調停のため、ふたりのジェダイの騎士クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)とオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)を派遣するが、背後では暗黒卿ダーク・シディアスによって巨大な陰謀が進行していた。スター・ウォーズ・新トリロジー・シリーズの記念すべき第1作目(実質第4作目)。若き日のオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)には師匠となるマスターであるクワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)という男がおり、このクワイを主人公に物語は進む。交渉の場から追われたふたりのジェダイはドロイド軍によって侵略されるナプーに降り立ち、そこで出会った水中の種族グンガン族のジャー・ジャー・ビンクス(アーメド・ベスト)の導きでナプーの宮廷にたどりつく。ふたりは事態を打開すべく女王に脱出をすすめ、元老院の調停を求めるため、銀河共和国の首都コルサントを目指す。連合の襲撃で宇宙船は破損するが、優秀な宇宙船用ドロイドR2-D2の活躍もあって、一行は辺境の惑星タトゥイーンに逃れた。

 ここでは早くもシリーズの数百年に渡る橋渡し役となるドロイドR2-D2が、姿形はそのままに現れる。タトゥイーンと訪れたクワイとオビ=ワンはここで奴隷として働くある少年と出会う。この少年こそが後のダースベイダーとなる若き日のアナキン(ジェイク・ロイド)である。元々は奴隷出身だが、母親の口からアナキン少年の不思議な出生の秘密を聞かされたクワイは、少年にジェダイの運命を託す。ここでのレースの場面は今エピソードの最高沸点となる。今となっては99年仕様のフルCGがやたら古さを感じさせるものの、スピード・レースで後続を追い抜くアナキンの並外れた才能を感じたクワイは、アナキンに潜在するフォースは並居るジェダイを遥かに凌ぐほど強大であることに気付く。同じ奴隷の親子としてタトゥイーンで生活する母親シミ(ペルニラ・アウグスト)との別れのエピソードは涙を誘う。母親はアナキンに自由の身になったのよと言い、彼を気丈に送り出す。クワイはシミの肩にそっと手をやり、シミはそんなアナキン少年を優しい目で見つめる母親としての深い愛情を感じさせる名場面である。我々はエピソード4~6の無慈悲な男の姿を知っているだけに、余計に子供時代の可愛かったアナキンの姿が胸を打つ。ここではまだプロトタイプとも言えるC-3POも登場する。母親同様に、幼い頃のアナキンにとって唯一の友人としてのC-3POとここで一旦お別れをすることになるのである。

 惑星コルサントに向かう道中、今エピソード最大の敵となるシスの暗黒卿ダース・モール(レイ・パーク)とクワイは最初の遭遇を果たす。ここでは既にジェダイナイトとシスの暗黒卿との善と悪の戦いは火ぶたを切っている。彼は銀河帝国の最高権力者であるダース・シディアスの弟子であり、ジェダイが持っている最強の武器ライトセーバーが2倍になったダブルブレイドライトセーバーの使い手である。ダース・モールの追撃を交わし、タトゥイーンからコンサルトへ逃れたクワイは、早速アナキンをジェダイ評議会に推薦するが、ジェダイ評議会は強すぎるフォースを持つアナキンに不安を表明。クワイ=ガン・ジンはヨーダ(フランク・オズ)とメイス・.ウィンドウ(サミュエル・L・ジャクソン)を説得し、彼白身がアナキンの師となることを認めさせた。ここではクワイの直感もそうだが、ヨーダとメイスの直感を信じていれば、違う未来が訪れていたのではないか?彼らの不安はやがて的中し、銀河系そのもののバランスが崩れてしまうことを、マスターであったクワイは知る由もない。ただ純粋に、アナキンをジェダイの騎士にしようと思ったクワイの判断が、大河ドラマとなる今シリーズの重要な運命の分かれ道となる。元老院では最高議長バローラム(テレンス・スタンプ)は実権を失っており、野心家の議員パルパティーン(イアン・マクダーミド)が実力を伸ばしていた。議会でも問題は解決できず、新たに最高議長となったパルパティーンは、アミダラに都にとどまることをすすめるが、彼女は自らの星に帰って戦う決意を固めた。

 クライマックスは、グンガン族とジャー・ジャー・ビンクス(アーメド・ベスト)が、連合占領下にあるナプーに帰還した一行の救世主となり、同時に犠牲者ともなる。彼らがドロイドの大軍と戦闘を繰り広げる間に、わずかな手勢で宮廷に侵入。戦闘のさなか、ふたたびダース・モールが登場し、クワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービとの第二戦が幕を開ける。ライトセーバーに対し、ダブルブレイドライトセーバーの威力が2倍というわけではないのだろうが、ここでの戦いはオビ=ワン・ケノービにとって一生忘れることの出来ない悔恨を残す。その一方で、アナキン少年の天性の能力が彼らを救ったというのはあまりにも皮肉な事実である。オビ=ワン・ケノービはクワイ=ガン・ジンの最後の言葉を遺言として、アナキン少年を自らの弟子とするが、引き起こすことになる新たな遺恨をまだ彼は知らない。アナキン・スカイウォーカーとアミダラ女王の交流や、クワイ=ガン・ジンの遺言など、後に回収されることになる幾つかの伏線が散りばめられ、この星の因果関係のルーツが明らかにされる。今作は『エピソード6/ジェダイの帰還』から16年振りに製作され、ジョージ・ルーカスにとっても『エピソード4/新たなる希望』で一度監督業から撤退して以来、実に22年ぶりの監督作となった。

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