【第673回】『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(アーヴィン・カーシュナー/1980)
宇宙要塞デス・スターが爆発し、その勢力も消滅したかと思われた帝国軍側は、やがて再び大きな軍団となって反撃を開始した。そのため反乱軍は後退し、レイア姫(キャリー・フィッシャー)は残された僅かな部下と銀河のはずれ惑星ホスに逃がれていた。そこはすべてが氷に閉ざされた惑星で反乱軍はそこに洞穴をつくって基地にしていた。シリーズ第2作となったトリロジー9部作のうちの5作目。ジョージ・ルーカスは監督を退き、職人監督であるアーヴィン・カーシュナーに監督を依頼。結果としてアクションがほどよく後退し、人間味の強いドラマに仕上がっている。ある日、惑星の乗物的動物、卜ーン・トーンに乗って偵察に出かけたルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)は、突然その惑星の怪獣ワンパに襲われた。が、ベン・ケノビ(アレック・ギネス)から伝授された霊力(フォース)を使い危いところを逃れ、途中迎えにきたハン・ソロ(ハリソン・フォード)に連れられて基地に戻ることができた。前作『新たなる希望』において、デス・スターに最後の一撃を食らわせた活躍が元で、ルークとハン・ソロは晴れて軍の隊長へと昇格した。だがハン・ソロはかつての星での多額の借金を心配しており、いつも星へ帰るフリをして、レイア姫の気を引こうとしている。今作はレイア姫とハン・ソロのロマンスが一方の主軸となっている。
もう一方の主軸は、ベン・ケノビ(アレック・ギネス)の霊力(フォース)によりルークに伝えられたジェダイになるための修行であり、マスター・ヨーダへの弟子入りである。ここでは旧シリーズでクワイ=ガン・ジンやオビ=ワン・ケノビの師として君臨した最後の生き残りのジェダイ・マスターであるヨーダが、ルークの到着を待ち侘びていた。ルークは最初、彼がマスターだとは夢にも思わないが、やがて偉大なフォースの力を見せつけられ、彼に教えを乞うことになる。ここでの修行のSFらしからぬ真にアナログな鍛錬が素晴らしい。新3部作ではあえて見せなかったアナキンの修行の様子も、ヨーダとルークの修行によりその一端が垣間見える。逆立ちに始まり、空中浮遊や予知など、ありとあらゆることをヨーダから学んでいく。修行も中盤に差し掛かり、瞑想にふけっていたルークはふと雲の都市でのレイアらの苦境を感知し、2人を救い出すべく雲の都市に向かう。それまでハン・ソロに対する恋心を素直に言えなかったレイア姫も、冷凍人間にされる寸前のハン・ソロに「あなたを愛しています」と告白した。その言葉を聞いたハン・ソロは、静かにうなづくとやがて冷凍器の中に姿を消した。レイア姫の気の強さはまさにアミダラ譲りの逞しさである。だがアミダラとアナキンがかつて恋に落ちたように、レイア姫とハン・ソロも互いの想いに徐々に気付いていく。新3部作ではジョージ・ルーカスがあまり得意ではなかった2人の恋に落ちる描写を、アーヴィン・カーシュナーはルーカス以上に器用に演出する。
霊力をもったルークを気にするダースベイダーは、彼が姿を現わすのを待ち構えていた。アナキンがかつて見た予知夢は息子であるルークにも受け継がれ、その不安の感情を巧みに操り、息子を暗黒面へと引きずり込もうとする。クライマックスのダースベイダーと、フォースの免許皆伝前のルークとの戦いの行方は陽を見るよりも明らかだろう。冷凍室から下層の回廊、更にクラウド・シティ中核へと場所を移した戦いの末に、致命傷を負わされたルークは、奈落の底へと落ちて行くのである。オビ=ワンもマスター・ヨーダも、ルークの父親がアナキンだという事実を知りながら、あえてルークには秘密にしていた。その残酷な事実をルークに対し、ダースベイダーが告げる場面はシリーズ屈指の緊迫感を誇る。誰よりも憎んだ男が、実は自分の父親だと知った時のルークのショックは計り知れない。前半に登場した惑星ホスの雪に囲まれた惑星の造形は、『遊星よりの物体X』とともにその後のSF作品における凍てつく寒さの描写を決定付けた。また早い段階で登場したAT-ATスノーウォーカー(全地域用装甲歩行機)の造形もその後の幾多のアニメ作品に影響を及ぼした。アーヴィン・カーシュナーはこの後も『ロボコップ2』や『007 サンダーボール作戦』をリメイクした『ネバーセイ・ネバーアゲイン』で、ショーン・コネリーを再びボンド役で召喚するなど職人監督としての人生を全うした。エピソード4と甲乙付けがたい傑作であり、個人的には『スター・ウォーズ』シリーズ7作品において、一番大好きな作品である。
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