【第310回】『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(ジョージ・ルーカス/2005)

 クローン大戦勃発から4年が経過し、戦争は銀河共和国優位の情勢にあった。しかしそんな中、パルパティーン最高議長(イアン・マクダーミド)がコルサントに襲来した独立星系連合軍に捕らえられてしまう。コルサント上空で繰り広げられる艦隊戦の中をパルパティーン救出に向かうオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、パルパティーンが捕らえられている敵の旗艦インビジブル・ハンドに突入し、再びドゥークー伯爵(クリストファー・リー)と対決、アナキンはドゥークーの両腕を切り落とし勝利したが、パルパティーンはドゥークーに止めを刺せとアナキンを扇動し、アナキンはドゥークーの首をはねてしまう。墜落寸前のインビジブル・ハンドからオビ=ワン、アナキン、パルパティーンは無事生還する一方で、分離主義者のリーダー格であるグリーヴァス将軍も無事脱出していた。

新シリーズ3部作の完結編にして、旧シリーズと新シリーズをつなぐ重要な役割も果たす最終編。前作からオビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーの不和は誰の目にも明らかだったものの、その亀裂がとうとう修復不可能となるまでを描いた悲劇である。アナキン・スカイウォーカーとパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)は秘密の恋を続けているが、パドメ・アミダラのお腹の中には赤ん坊がいることがわかる。だがその幸せな知らせも束の間、アナキンはトラウマに満ちた夢に悩まされる。前作でアナキンの心に深い傷を負わせることになった母親の不在が、ここではアミダラの死の予知夢へと昇華され、その一瞬の隙をダークサイドに突かれることになる。

冒頭、オビ=ワンとアナキンとR2-D2はいつも以上にウィットに富んだ冒険を見せる。緊迫したエレベーターの中でのやりとりはどこかユーモラスであり、オビ=ワンとアナキンの息の合った掛け合いが見られる。前作でラスボスとして登場し、マスター・ヨーダが惜しくも取り逃がしたドゥークー伯爵が早くも登場するが、ここでのアナキンのライトセーバー使いは前作の比ではない強さで、マスター・ヨーダも仕留めることが出来なかったドゥークー伯爵をあっさりと殺してしまう。相変わらずオビ=ワンは肝心なところではまったく歯が立たない 笑。結果として、このやりとりがオビ=ワンとアナキンの最後の共同作業となる。

ジェダイ評議会は非常時大権を盾に、長年権力の座にあり続けるパルパティーンに疑いの目を向けていた。評議会はパルパティーンと親しいアナキンをスパイとして情報を探ろうとするが、アナキンのジェダイ・マスターへの昇格は認めず、アナキンは自身に対する処遇に不満を抱く様になる。アナキンが暗黒面に落ちるきっかけとなる事件だけに、丁寧に描写して欲しかったが、残念ながらここでのやりとりは大味に終始し、要領を得ない。そもそものきっかけはアナキンの予知夢を止めることが出来るというバルバディーンの甘い囁きだったが、幼い頃から長年ジェダイとして銀河共和国に仕えてきたアナキンが、何故暗黒面に興味を持ち、バルバディーンの考えに心酔していなっかたのかが、今作におけるバルバディーンの言動や行動からは到底理解することが出来ない。アナキンの心の中にある葛藤が善と悪の間で何度も揺れなければドラマチックな場面とはならないが、バルバディーンに随分あっさりと陥落し、暗黒面へとすがってしまったのはやや短絡的である。暗黒面に堕ちたアナキンは、シスとしての名「ダース・ベイダー」を与えられる。

アナキンはクローン・トルーパーを率いて、ジェダイ聖堂に残っていたジェダイ達を幼い訓練生も含めて全員虐殺し、各星系で戦っていたジェダイ・マスター達もパルパティーンが発した極秘命令オーダー66により、次々と非業の死を遂げる。ここでの子供殺しのを想起させる描写が、スター・ウォーズ・シリーズで初めてレイティングシステムにおける「

PG-13」の措置を受けることになる。難を逃れたジェダイは、オビ=ワンと、チューバッカの助けにより落ち延びたヨーダと一部の者だけだった。親ジェダイ派の元老院議員ベイル・プレスター・オーガナ(ジミー・スミッツ)の助けでコルサントに戻ったオビ=ワンとヨーダは、アナキンがシスに堕ちた事を知る。

クライマックスの溶鉱炉の場面は、オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカー両者の怒りが渦巻き、身動きも取れないほど烈火のごとく燃えている。ここで師弟は初めて互いのライフセーバーを交え殺し合うことになる。新シリーズ3部作ではいつも肝心なところでやられてしまうオビ=ワン・ケノービだったが、幼い訓練生も含めてジェダイを全員虐殺したアナキンが心底許せず、弟子に引導を渡そうと最強の力でアナキンに立ち向かう。ここでのアナキンの目は既にかつての優しかった弟子の目ではなく、ダースベイダーとしての残虐非道な目である。アナキンはパドメ・アミダラの命を救うために自ら暗黒面に落ちたが、当のパドメ・アミダラはアナキンの判断が理解出来ない。我々観客にとってもさっぱり理解出来ない理由から、オビ=ワンとアナキンは殺し合い、やがてどちらかが致命的な一撃を浴びせる。

ラストのアミダラの出産シーンと、致命的な重傷を負ったアナキンの手術シーンの並行描写は、おそらくジョージ・ルーカスが新シリーズ3部作で最も撮りたかったであろう思い入れたっぷりの場面になっている。生の誕生と死の超越とが同時に起こり、後の旧シリーズ三部作につながったのだと思うと実に感慨深い。CG技術の発達により、旧シリーズよりも背景の進歩が明らかだったが、ジョージ・ルーカスの最後の思い入れに心打たれた。旧3部作と比べると余計に、自分が生み出した作品はやはり自分が幕引きするべきであると痛感させられる。

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