【第668回】『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(ジョージ・ルーカス/2002)

 エピソード1より10年後。オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)と、彼の熟達したジェダイの弟子へと成長したアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、いまや高名な元老院議員となったパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)と久々に再会。パドメは暗殺の標的にされているのだが、その謎を突きとめようと、オビ=ワンは銀河の辺境へと旅立つ。そこで出会ったのは、かつては崇敬されたジェダイ・マスター、しかしいまは分離主義運動の指導者となっていたドゥークー伯爵(クリストファー・リー)だった。9つあるシリーズの2作目。エピソード1でのアナキン・スカイウォーカーとパドメ・アミダラの運命の出会いから10年、再会することになった2人のその後の運命と、ドゥークー伯爵とジェダイの騎士たちの戦いを描いている。銀河系の力関係は刻々と変化しており、旧態依然とした腐敗による機能低下が進む銀河共和国を見限り、数千の星系が離脱を表明。元ジェダイのドゥークー伯爵を中心に、分離主義勢力を形成して共和国との間に緊張状態を生じていた。この事態に対して、共和国の軍隊保有の是非を問う元老院議会での投票のため惑星コルサントを訪れたパドメ・アミダラ元老院議員は爆破テロに遭遇し、パドメ自身は難を逃れたものの侍従らに犠牲者を出す。

 パルパティーン最高議長の計らいで、オビ=ワン・ケノービと若きアナキン・スカイウォーカーがボディーガードをする事になり、オビ=ワンとアナキンはパドメを狙った刺客ザム・ウェセルから彼女を守る事に成功。ザムを捕らえて口を割ろうとするや、別の刺客(ジャンゴ・フェット)によってザムは殺されてしまった。オビ=ワンはザムを殺した凶器から手掛かりを得て、惑星カミーノへ向かう。既に今エピソードから、師匠であるオビ=ワン・ケノービと弟子であるアナキン・スカイウォーカーの些細な不和や衝突は顕在化している。オビ=ワンの師匠だったクワイ=ガン・ジンの遺言の通り、オビ=ワンはアナキンを一人前のジェダイへ育てようとするが、アナキンの若さゆえの過信と暴走ぶりは時に目に余る状態となり、なかなかオビ=ワンの言うことを聞こうとしない。ジェダイの騎士にとってマスターの教えは絶対だが、過激に暴走するアナキンの不安定な精神状態は、オビ=ワンだけでなく、ヨーダも不安視している。火種はところどころ見え隠れするものの、爆発まで行かないのは多くの場面でオビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーが別行動だからである。ヨーダの命を受け、アミダラ暗殺を試みた真犯人を捜すことがオビ=ワンの役目であり、その際、手薄になったアミダラの擁護をアナキンが一手に引き受けることになるのだが、若い男と女が始終2人っきりでいればどうなるかは陽を見るよりも明らかである。しかしジェダイの掟は、誰かを愛することを禁じているため、アナキンは愛と掟の間で苦悩する。

 並行して、アナキンの母親探しも描かれる。いつも夢でうなされ、母親不在に耐えきれなくなったアナキンは、オビ=ワンに隠れて、辺境の惑星タトゥイーンに住む母親シミ(ペルニラ・アウグスト)を助けに行く。かつての主人ワトーから、シミは奴隷から解放され、水耕農夫ラーズの後妻となっていた事を知る。ラーズ家を訪れたアナキンだったが、そこで知らされたのはシミが盗賊タスケン・レイダーに誘拐されたという事実だった。アナキンは必死の捜索でシミを発見するが、時遅く彼女は息子の腕の中で絶命、アナキンは怒りのままにタスケンを部族ごと虐殺する。この事件が、後に暗黒面に落ちることになるアナキンの心に深い爪痕を残したことは想像に難くない。オビ=ワンがいれば絶対に許されなかった禁断の実をアナキンとアミダラはかじることで、後の悪夢の気配を一瞬だけ見せるのである。中盤までの情報だらけの展開はシリーズ中、最も抑揚のない展開だと言っても過言ではない。相変わらず姫の護衛をしながら、真犯人とその目的を探すもそこにサスペンスはなく、オビ=ワンとアナキンの師匠と弟子のコミュニケーションもほとんど描かれていない。今作で最も力を入れた場面はおそらくアナキンとアミダラのロマンスであり、だからこそアクション映画としての求心力には欠けてしまう。

 だがラスト30分間のジェダイ軍とドロイド軍の戦闘はなかなか見ごたえがある。絶体絶命の状況の中、意外と頑張るアミダラにもびっくりだが、エピソード1では戦地に赴くことがなかったメイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)とヨーダが遂に彼らの助けに現れる。それゆえオビ=ワンとアナキンの活躍は前作よりも幾分抑えれらたものの、ヨーダが初めてフォースの力を見せつけることになるラスト・シーンは必見である。またC3-POとR2-D2の息のあった掛け合いも前作以上に描写され、続くシリーズへの期待が一層膨らむ。エピソード1では共和国側の大勝利に終わっていたが、ラストのヨーダの言葉にもあるように、シスの勢力が共和国側に不気味に侵食しつつあることを予感させるラストは決してハッピー・エンドではない。しかしながらこの時のアナキンとアミダラは人生の最高の瞬間を迎えようとしていた。

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