見出し画像

ショートケア

そこは、私の居場所のひとつであり、私の心の実家のような場所だ。
そこに帰ると安心するし、ホッと出来る。
一般的に多くの人が実家に帰るとホッとするように、私はその場所に帰ると、安心できる。

私がそこに通い始めたのは、大学2年生になってからだ。
元々は地域活動支援センターだった通院先の系列施設が名称や形態を変えショートケアとなり、そこに以前は長期休みの間の居場所として通っていた。
その際は、短期間しかあまり継続的には通えなかったし、“学校の長期休暇に行く場所” というだけの場所だった。
私の中でも、そこまで特別な感情を持つような場所ではなかった。

しかし、転機となったのは大学の休学が決まったことだ。
大学内で自傷行為をしてしまい、もう限界なのでは、ということで大学2年生の2~3月頃休学が決定した。
その際、ショートケアに通い続けるため、病院や大学のある県(以下、「一人暮らし先」と表記)に残ることを私は切望した。
理由としては、ショートケアへの移動が楽なのもあるが、実家にいることがまだ…というか、多分ずっとだけれど、私のコンディションにとってあまり良くないからだ。

「実家からも通えるのではないか」
「実家にいた方が、貯金が出来る、金銭面の負担が減る」
これらの意見のように、親兄弟は実家に帰らせようとしてきたが、私は頑として譲らず、なんとかグループホーム(以下、「GH」と表記)への入居という形で一人暮らし先に残ることを許可してもらった。
そんなわけで、ショートケアへの通所とGHでの入居生活が私の生活の基盤となった。

最初こそ、特に特別な感情も抱かず、ただ単に “日中の通所をするところ” というだけの存在であった。
がしかし、参加回数を重ねていくごとに、徐々にタメ口で話せるような友達といえるような存在が出来てきたり、自分の出した意見がプログラムに反映されたり、という体験が積み重なった。
そのような成功体験ともいえる体験や他の利用者との関わりを経て、段々とショートケアという場所が、私にとって特別な場所となっていった。

その経過のなかで、欠かせなかった存在が、ショートケア担当のスタッフの方々、特に一番主導となって運営しているPSW(精神保健福祉士)さん(以下、「担当PSWさん」と表記)だ。

「まだまだあなたとやりたいこと、出来ることはたくさんある」
「もし復学して上手くいかなくても、戻ってくる場所はある、大丈夫」

これらの言葉からも垣間見られるように、いつもとても親身になって、話を聞いてくれたり、こまめな声かけをしたりしてくれる。
いつも、ショートケアが始まる前には、(これはショートケア担当のスタッフ全員がやっていることだが)人数が多くてもきちんと一人一人、目を見て挨拶・声かけをしてくれる。
特に担当PSWさんは挨拶だけでなく、「元気?」等、+αの声かけをよくしてくれる。

又、私は時々、というよりかなりの頻度でプログラム中にしんどくなってしまうことがあり、その時も私の変化に気付いて「しんどくなっちゃった?」と声をかけてくれる。その声かけが “分かってもらえている、自分のことを見てもらえている” という安心感に繋がっている。

いつだったか、「(だからどうこうってわけじゃないけれど)一番あなたに時間かけているよ」と言われたように、私がかなり担当PSWさんの手を焼かせている自覚もあるが、その分感謝ももちろんしている。
ショートケア担当のスタッフさん、特に担当PSWさんには、私の “OT(作業療法士)になりたい” という夢も後押ししてもらっている。
いつか、きちんとOTになるということ、もしなれなくても、何らかの形でユーザー(支援される側)から支援する側にまわることを通して、恩返しが出来たらな、なんて密かに思っていたりもしている。

話が少し逸れてしまったが、私にとって、ショートケアは第二の実家といえるくらい、大切な場所である(自分の実家が苦手なこともあり余計にその思いが強い)。
もちろん、いつまでも、永遠にそこに居続けることは出来ないこと、あくまでも一つの経過地点であることは分かっている。
いつかは、このショートケアから次のステージへ羽ばたくときが来る。
その時も、ここでの経験を糧にして次のステップに進めるといいな、と思っている。

実際、あと四ヶ月くらいしたら、まだショートケアには在籍はするものの、復学という次のステップに進むことから、少しショートケアの外の世界との関わりが濃くなる。
それでも、担当PSWさんの言葉のように、“戻ってこられる場所はあるんだ” ということを心のお守りとして覚えておきたいなと思う。

復学するのは、正直怖いし、多分最後の最後まで不安は尽きないだろう。
実際、この文章を打っている間も何度も涙があふれてきた。そんな思い入れのある場所から自ら決めたこととはいえ、外の世界へ行かなければならないのだから、不安が尽きないのは当然のことだ。

しかし、私は一人じゃないということ、必要としてくれる人や場所はちゃんとあることを忘れずに、どうにかもがいて進んでいきたい、今私はそう思っている。

                  text/あゆむ

-----------------------------------------------
こもれび文庫では皆さんからの投稿もお待ちしております。掲載する際にはこちらからご連絡いたします。
*投稿先
こもリズム研究会
メール comolism@gmail.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?