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最果ての町の家族会議

はじめに

先日、FC琉球が開催したビジョン説明会に行ってきました。その場で感じたことは当日に何個かツイート(ポスト)したけど、説明会が終わってカンプノウに寄って、いつもエネルギッシュな店長の見たこともない落胆の顔を見て感じることも多かったし、数日経って頭の中を整理してみたので書いてみます。

説明会で感じたざっくりポジネガ

ポジティブ

まず、クラブがこういう場を設けたことは素直に評価したいですね。告知文を見て、ステークホルダーだけという縛りのある場所ではなく、あくまでオープンな中長期戦略の説明会という印象受けたので参加を決めました。私はサポーターでも当事者でもないので、よくある「参加人数:サポーター〇名」みたいな書き方だと参加しづらいし、ホールで観覧であれば大勢の人と混ざって隅っこに座れるかなという感じでした。ただ、会場入ると速攻でカンプノウの店長に見つかって近くに座らされたけどね。。(苦笑)

ネガティブ

エンブレムやチームカラーについては後述するとして、それ以外で気になったことを2点。

まず1点目。説明会ということなので、言葉で冷静にビジョンを説明する時間だと思っていたけど、育成の話になってスピーカーがスポーツダイレクター?の方に変わった途端に「私は声が大きいので」と断りを入れた後、会が終わるまでずーーっと大声でノーマイクで話をしていて。。それを情熱とか熱意と感じられる方は良いんですが、申し訳ないけど私は苦手です。大声は威圧と感じる方もいるし実際に聞き取りづらかった。欲しかったのは熱意ではなく説明なので、そんなエネルギーいらんからマイク使えよとしか思わなくて、育成についての話の内容が頭に入ってこなかった。会の前半から私のテンションは駄々下がりでした。

2点目は、社長の言葉のチョイスの問題。エンブレム変更のところで現行エンブレムを「旧エンブレム」と言ってしまったり、チームカラーのベンガラを「くすんだ赤」と言ってしまったり。新しいものを良く見せるための対比表現だったのかもしれないし、クラブの中ではもう決まったことだからと話しているのかもしれない。でも現在のエンブレムやベンガラ色を大切に思う方がいる前で使う言葉としては適切ではなかった。この言葉で気持ちが切れてしまった方も多かったんじゃないかな。

エンブレムの話

エンブレムの件もチームカラーの件も、参加者が聞きたかったのは、変更が必要になった「具体的な理由」だったと思う。サッカー界の流れを知っている方なら、スマホや印刷物での視認性を理由に、複雑なデザインのエンブレムをシンプルなデザインに変えていく流れがあることを知っていているかもしれないけど、もしそれが理由だったのであれば正直に説明して理解を求めれば良かったし、仮にJリーグからの指導があってやむを得ないみたいな感じだったとするならば、直接的な表現は控えたとしても、クラブ的に整理して大人の文章で説明するべきだったと思う。説明が無ければ、ただ突然変更を言い渡されただけになる。

エンブレムのデザインについては、感じ方は人によって違うと思うけど、それがどんな評価なのかというのは、世間の反応を見れば一目瞭然かなと思う。私は、エンブレムを変更するなら文化的な意図が伝わるものにしてほしいと思っている。例えば、現行のエンブレムに描かれている「対のシーサー」と「王冠」だけど、シンプル化するなら王冠をエンブレムの輪郭(背景)として使用し、中央に正面を向いたオスのシーサーの顔、みたいなシンプル化はどうだろうか。シーサーにはオスとメスがあって、口を開けているのがオス、口を閉じているのがメス、オスは邪気を払って福を呼び込む、メスは呼び込んだ福を離さないという役割があって、家屋には魔除けや守り神として置かれる。ただ、絶対に対でなければいけない訳では無くて、屋根の上にはオスのシーサーが一体だけ置かれているのもよく目にする。現在のエンブレムは少し斜めを向いた対のシーサーになっているけど、シーサーは正面を向けるとより広範囲を守護してしてくれると言われているので「シンプル化しながらも、これからアジアに、より広範囲に活動を広げていくという意味を込めて、オスのシーサーを正面に向けてみました」みたいな感じで、沖縄の文化的な理解のもとに変更の意図を感じるデザインであれば、もう少し沖縄の方も理解を示してくれたんじゃないかな。

私はエンブレムについては、デザインはともかく、現行のエンブレムをメイン、新エンブレムをスマホ等のマーケ用として使い分けるのが良いと思っています。現行のエンブレムは残してほしい。

チームカラーの話

以前もチームカラーを変更しようとしてサポーターと衝突したことがあって、その時は、その年、突然ユニフォームの8割が水色になって、次の年は水色、ベンガラ半々になって、翌年は全部ベンガラに戻るという、今振り返るとあれは何だったんだという期間でしたね(笑)。チームカラーが水色になりかけた時に、多くの関係者やサポーターが反対してベンガラに戻った経緯があると記憶しているけど、沖縄の方が、なぜそこまでベンガラ色に拘るのかというのを考えてほしい。

ベンガラ色は、琉球血色とも言われる濃い赤色のことで、首里城の外壁や柱にも使用されている。「首里城の赤」といえば、それだけで説明は十分だと思うけど、私が沖縄で生活していて「首里城」について思うことがあったエピソードを紹介したい。

2019年に首里城の火災があった時のことを今でも鮮明に覚えている。深夜に火災の報を見てすぐにテレビをつけて嫁を叩き起こした。嫁はテレビに映る燃える首里城を見て号泣した。嫁は沖縄出身。普段の生活で首里城の話は出てこないので、まさか嫁が泣き崩れるとは思っていなかった。翌日、届け物があって知り合いの家に行った時にやはり首里城火災の話になった。沖縄出身の年配のご夫婦は首里城を「お城」と呼称して話をしながら涙ぐんでいた。その時に、はっと思い出したことがあった。私が地図の仕事で全国各地のお城を回っていたいた時、姫路城の近くで飲食店の方に道を尋ねた時に、「お城を右手に見て、、」と案内して頂いたんだけど、その「お城」という言い方には、単なる目印ではない何とも言えない温かい響きがあった。熊本城の近くでも同じような体験があった。私は首里城、姫路城、熊本城と言う、その土地の方は「お城」という。常に身近に当たり前にあるもの。アイデンティティなんだよね。

首里城の色は「くすんだ赤」ではないし、間違ってもそういう言い方をしてはいけない。そして「ベンガラをアップデート」とも言っていたけど、ベンガラは「アップデート」できない、それは別の色。言い方にあまりにも配慮が足りない。

私は、エンブレムはともかく、チームカラーを変えることには大反対だ。私は、これまでFC琉球がベンガラに拘ってきたのは、沖縄との地縁に拘る姿勢を示すためだと理解してきた。FC琉球はJ2を経験したクラブになったとはいえ、ルーツは母体を持たないアマチュアクラブだ。20年の歴史の中で、地元の方から斜に構えられることも多かったと思うし、今でもあると思う。だからこそ、経営者、スタッフ、選手が変わっても、沖縄のクラブとして存続して愛されるためには、所在地が沖縄だからということだけでなく、沖縄の文化を理解して寄り添い、より身近な存在となるように自らが努力し続けなければならない。現在のように、多くの理解者を得られているのは、FC琉球がJリーグのクラブになる以前から、沖縄のアイデンティティをチームカラーとして、沖縄に寄り添う姿勢を示してきたからだと思っている。チームカラーは絶対に変えてはいけない。

リブランディングの話

ちょっと意地悪な言い方になるけど、リブランディングとか言う前に、そもそもブランドが確立できているのかな?

FC琉球は今年で20周年。J2が4年、J3が6年、Jリーグに参入して10年というのは分かるけど、トップカテゴリーはまだ経験していない。その状態で見た目を変えて何か変わるんだろうか?J1で長く過ごして、全国のサッカーファンがみんな知ってる、沖縄県内ではサッカーを知らない人でも知っている状態を作ってブランドを確立させてからのリブランディングでも良いんじゃないかな。SNSの反応を見てみても、今回の騒動でFC琉球の現エンブレムを知ったり再認識した人も多いように見える。

認知度が足らないのは、そもそものやり方に問題があるからで、それはエンブレム、チームカラーと外側を変えて解消されるものではないよね。説明会でも、ビジョンの説明を聞いた上で、サポーターからスタジアムに行くバスの運行についての意見が出ていた。収入を増やすための拡大戦略は理解できるけど、足元で、もっとやらなきゃいけないことがたくさんあるという意見の方が私には正直刺さる。

さいごに

仮に、すごく良い話だったとしても、ここに至るまでに何一つ説明がなく、突然出てきた話にすぐ納得しろというのは無理な話だと思う。アジア戦略の話も、女子チームの話も、関東の4クラブとの提携の話も、良い話はたくさんあった。クラブがクラブを良くしたいと思って動いているのは理解できる。ファン、サポーターも、愛すべきクラブを守りたいと、クラブを良くしたいと思って動いている。お互いに、クラブを良くしたいと思っているのに、かみ合わないように見える今の状態はとても寂しい。

ファン、サポーターの声を受けて、クラブは話し合いの場を設置することを発表しました。発表を受けて、あるサポーターはそれを「家族会議」と言っていました。

いいじゃん。家族会議。

順序が違うとか、やり方が良くないとか、そこまで言うかとか、お互いに色々と思うところはあると思うけど、その場所が、文句を言い合う場所じゃなくて、家族の未来を話し合う良い場所、良い時間になることを願います。


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