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便利は便利だけど…

『どうも』『ちょっと…』

日本語学習の現場においても学習項目に入っているこの二つ。非常に便利な使い方ができる表現です。

どうも(ありがとう)
どうも(すみません)
どうも(お世話になります)

ちょっと…(だめなんです)
ちょっと…(難しいです)
ちょっと…(賛成できません)

一言で色々な意味で使うことができる。

しかし便利だからという理由で多用してしまうと、肝心の伝えたいことが伝わらなくなることもある、そんなお話をしたいと思います。


伝えたいことは何か…

ここが大事なんですね。
「どうも」「ちょっと」だけで複数の用法があるということは、それだけで ”済ませている” という言い方もできます。
当然それで済ませないほうがいい時というのもあるわけですが、それはどんな場面だと思いますか?
皆さんも普段、普通に使い分けていると思います。


◯気持ちをちゃんと相手に伝えたい時
◯ぼかす、省略する、で誠実に聞こえる可能性があるとき


①「どうも」

後に続くことが多いのは、
「ありがとう」「すみません」でしょうか。

心から感謝している
お礼をどうしても伝えたい
心から謝罪をしている
謝る気持ちがあることを伝えたい

こんな時は「どうも」で済まさないことが多いはずです。
その後の部分、「ありがとう」「すみません」が本当に伝えたいことなわけですから、そこを言わないということは何だか誠意に欠ける気がしますよね。

「どうも」自体は省略した形で、感謝や謝罪の気持ちは含んでいません。相手との共通認識で気持ちをお互いが共有しているだけです。
それも推測ベースで。

ですから、

伝えたい感謝の気持ちはちゃんと言葉にすべき!

ノンネイティブの方にも、もれなく伝えていることです。


②「ちょっと…」

これは言いにくいことを言ったり、断ったりといったネガティブなことを伝えるときに使いますよね。
「ちょっと…」は、相手がこちらの意図を汲める道筋だけを作る、そんなイメージでしょうか。
「…」部分が真意です。

つまり、示唆をするだけに留めて相手を不快な思いにさせたり、自分が言いたくないことへの言及を避けるわけです。

では、この「ちょっと…」で気をつけるべき点はどこか。

それは、断る時です。
もう少し詳しく言うと、好意で誘ってくれた相手、気を使うべき相手に対する「断り」です。

このような相手に対して「断る」ことだけをほのめかし、理由を言わない。コミュニケーションとしては問題あり、な気がします。

これについても、

誠意はちゃんと言葉にすべき!

ノンネイティブの方にも、伝えています。


便利な表現だからといって多用している表現には、使い方をよく考える必要のあるものが数多くあります。
時には、コミュニケーション上好ましくない会話になってしまうことも。

ノンネイティブの方にとって便利な表現は魅力的です。
1つ覚えればいろいろな表現ができるわけですからね。
でも、逆にそういう表現こそ難しい…

「便利な表現です。いいでしょ?使ってみて。」
これは ”日本語を教えている” だけ。
「便利な表現です。いいでしょ?あ、でもね…」
こうなると ”日本語の使い方を教える” となります。

身近にノンネイティブがいらっしゃるという方、
何か質問されたら、是非「使い方」を教えてあげていただきたいと思います。

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