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「三菱商事、北米でリチウム鉱山開発 脱中国へ現地精製も」に注目!

三菱商事、北米でリチウム鉱山開発 脱中国へ現地精製も - 日本経済新聞 (nikkei.com)

三菱商事は北米でリチウム鉱山の開発に参画します。カナダの鉱山探鉱企業と合弁で事業を展開し、2027年にも生産を始めます。現地に精製拠点も設け、北米で鉱山の開発から鉱石の精製までできる体制を整えます。北米でリチウムを生産すれば日本企業で初めて。米中分断に備えて新たな供給網を確立する動きが広がってきました。

リチウムは主に塩湖のかん水からつくる方法と鉱石からつくる方法があります。塩湖は中国やチリなど地政学リスクが高い地域に集中します。鉱石はオーストラリアやカナダに多く眠りますが、電池用に加工する精製プラントは中国に多いです。2030年までの精製プラントの新設計画の半分は中国に偏在するとされ、経済安全保障上の課題となっていました。

北米でリチウム鉱山の権益を持つカナダのフロンティア・リチウムが設立する新会社に三菱商事が今春にも出資します。まず2500万カナダドル(約27億円)出資して7.5%の株式を取得、さらに50億円以上を投じて最大25%まで引き上げます。

参画を検討するリチウム鉱山はカナダ中東部のオンタリオ州にあります。資源量が5800万トンを超え、日本企業が権益を持つリチウム鉱山で最大になります。

2025年までに事業化に向けた調査を実施、2027年にもガラスやセラミックなど工業用から生産を始めます。2030年に電気自動車(EV)や蓄電池に使う電池向けに生産をめざします。

年間生産量はEV約30万台分に相当する約3800トン規模(炭酸リチウム換算で2万トン)になる見込み。総事業費は調査後に決めますが、設備投資を含めて1000億円を超える可能性があります。

リチウムはEVの電源やモバイル機器に不可欠なリチウムイオン電池の原材料に当たります。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年の需要は13万トンでしたが、EVの普及に伴い、2030年には3.5倍の45万トン規模に増える見通しです。

三菱商事は北米で鉱山の開発から操業、鉱石の精製までの一貫体制を確立し、中国を介さない供給網を整備します。米国は2025年から消費者がEVを購入する際の税優遇で、中国産リチウムを適用外にする方針です。米中摩擦が激化しても安定供給できる体制を整えます。

日本勢は官民一体でリチウムの確保を急いでいます。豊田通商がアルゼンチンの塩湖で生産するリチウムの権益を持つほか、出光興産はオーストラリアでリチウム探鉱を手掛ける企業に出資し、鉱山の操業や精錬で協業を検討してます。

従来のリチウム生産は、塩湖は各国で天日干しして精製・加工を、鉱石は権益はオーストラリアやカナダ等でしたが中国等で精製・加工していました。

今回は、カナダの権益をそのままカナダで精製まで行うことで、途上国リスクは低減できる見込みです。

なお、今回は昨年9月21日に日本とカナダでEV向け蓄電池のサプライチェーンを共同で作ることで合意したことの一環で、蓄電池に使う重要鉱物の探鉱や加工でカナダに進出する日本企業を補助金などで支援ものだそうです。

今後も、インフレ抑制法(IRA)もあるため、こういった動きが出てくることも予想されます。三菱商事の対応が米国市場へのEVの安定供給を支えることを期待しています。