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「パワー半導体次世代素材を国内量産 レゾナックやローム」に注目!

レゾナックやローム、パワー半導体の次世代素材を国内量産 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

電気自動車(EV)などに使うパワー半導体の性能向上を担う次世代素材について、国内のサプライチェーン(供給網)づくりが始まりました。レゾナック・ホールディングス(旧昭和電工)は約300億円を投じ、2027年から増産します。パワー半導体は日本勢が強みとしてきましたが、次世代素材は出遅れています。競争力を維持するために国内で一貫生産できるようにします。

英オムディアによると、2023年時点のパワー半導体のシェアは独インフィニオンテクノロジーズが22.8%と首位で、日本勢も三菱電機など上位10社のうち4社を占めるなど強みとします。素材も現在主流のシリコン製の基板では、信越化学工業やSUMCOなど日本勢の世界シェアが5割と高いです。

ただ、足元ではシリコンに代わり、炭素とシリコンを結合した炭化ケイ素(SiC)を使った基板の需要が強くなっています。SiC素材を使ったパワー半導体は、電力の変換効率が高まります。EVやデータセンターの省エネにつながるため、今後も市場の拡大が続く見通しです。日本勢はSiC基板では投資競争で出遅れており、日本の半導体メーカーでもSiC基板は9割超を海外に依存しています。

SiC半導体や基板でこれ以上の出遅れを防ぐために、官民あげて供給網づくりが進み始めました。

レゾナックHDは約300億円を投じ、山形県の工場などでSiC基板の生産ラインを新設し、2027年から量産を始めます。経済産業省も最大103億円を補助します。もともとSiC基板上に単結晶の薄膜をつくる工程を手がけており、世界シェアが22%と高いです。

国内勢の連携も進みます。半導体素材のオキサイドは2024年3月に山梨県北杜市で数十億円を投じ、基板の量産ラインを新設しました。パワー半導体の受託生産会社、JSファンダリ(東京・港)はオキサイド製の基板の採用を決めました。2027年までに新潟県内の工場でSiCパワー半導体の量産を始めます。オキサイド製の基板は名古屋大学の結晶生成の技術を使い、不良品を2割減らせます。

パワー半導体メーカーのロームは基板の内製化を進めます。2025年1月から宮崎県の工場で、自社の半導体用の基板の量産を始めます。半導体メーカーによる国内での基板量産は初めてです。2009年に買収した独サイクリスタルの技術を用います。SiCを使ったパワー半導体でロームの世界シェアは8%程度です。

SiC製のパワー半導体は日本勢が研究開発で先行していました。一方、量産では半導体・基板とも海外勢に比べ出遅れています。半導体ではスイス・STマイクロエレクトロニクスがシェア33%と首位に立ち、米テスラのEVにも採用されました。素材となるSiC基板も米国勢のほか中国勢が強く、日本勢は弱いです。

日本の半導体メーカーもSiC基板に関しては、海外の素材企業と長期契約を結んでいます。ルネサスエレクトロニクスは2023年、SiC基板でシェア首位の米ウルフスピードに20億ドル(約3000億円)の預託金を支払い、10年間のSiC基板の調達契約を結びました。三菱電機とデンソーは業界3位の米コヒレントのSiC事業にそれぞれ5億ドルを出資しました。

「SiC基板は品質にばらつきが出やすく、海外勢からの調達にはリスクも伴う」(国内半導体大手幹部)との指摘もあるなか、国内でパワー半導体の競争力を保ち続けるには素材から国内で供給する体制が重要となります。足元では中国メーカーも台頭し始めており、素材確保に向けた競争も激しくなっています。

調査会社の富士経済(東京・中央)によると、SiC半導体の市場規模は2023年の3870億円から、2030年には2兆1747億円と約6倍に伸びます。2026〜2027年ごろからEVに本格的に採用され始め、需要が急増します。

インフィニオンが新工場に最大70億ユーロ(約1兆1000億円)の投資を決めたほか、国内勢も三菱電機や富士電機が増産するなど投資競争は活発です。日本勢がパワー半導体市場で優位を保つには、半導体そのものだけではなく、素材を含めた供給網の整備が欠かせなくなっています。

デンソーは半導体分野の戦略としてパワー半導体をハイブリッド車やプラグインハイブリッド車用のには高性能Si(シリコン)を安定供給するとともに、EV化進展に電費向上で貢献するSiCの開発・投入を加速しています。SiCを適用することで、Siに比べてパワーモジュール電力損失が70%削減される利点があります。また、SiCウエハー開発・安定調達において、レゾナックやコヒレントとパートナーシップ締結を行っています。高品質、低コスト技術の手の内化と、開発・量産パートナー連携でウエハー安定供給を確保し、優位性を出そうとしています。

今後も、SiC分野では様々な進展が見込まれます。デンソーや信越化学工業の今後の取り組みに期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。