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夏休み、追い込まれるひとり親世帯

家計苦しく「エアコンつけられない」


 もともと低所得傾向にあり、困窮しがちなひとり親世帯が、学校給食がなくなり、クーラー代など電気代の出費がかさむ夏休み時期にさらに苦しい状況に追い込まれている。

 ひとり親を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(赤石千衣子理事長)は8月2日から5日間、「2023夏ひとり親家庭生活調査」をWEB方式で実施し、その状況がデータとなって浮かび上がった。

44%「米買えない」、3.8%が「1日1食」


 調査は物価高や酷暑の中におけるひとり親の家庭の状況を可視化するため実施されたもの。対象は、同法人のメールマガジン会員で、20歳以下の子どもがいる世帯で、そのうち684人が調査に回答した。

 調査結果によると、「7月に入って家族が必要とするお米を買えないことがあった」と回答した世帯が44%に及んだ。子どもの食事の回数について、「1日2食」と答えた世帯は4割に上り、「1日1食」と回答した世帯は3・8%。また月収10万円前後のひとり親からは、家族の命を心配する声も寄せられた。

 同法人は「夏場を迎えて、普段の収入だけでは生活維持が困難になっているとみられる」と指摘し、児童手当や児童扶養手当の増額や、両手当の支給がない8月の特別な給付金など、支援策のさらなる拡充を求めている。

7月の就労収入平均、12・4万円


 また、回答者の7割(475人)が同NPOの食糧支援を受けており、大方の世帯で、通常の収入では生活が維持できない状態にあることがわかる。7月の就労収入は平均12・4万円で、国内の平均約49万円(総務省「家計調査」の勤労者世帯の1世帯の勤め先収入、22年現在)を著しく下回っている。

 温暖化の影響で、今年の7月は、猛暑日(最高気温25度以上)が2435地点で、集計を始めた2012年以降2番目であるなど、例年より暑かったことが報じられ、話題になっている。そんな酷暑の中でも、回答者の8割が電気代の節約のため、エアコン使用を控えているという結果となった。

お金なく「エアコンが買えない」

 回答では、節約の工夫として、エアコンを使わずしのぐ事例が寄せられた。具体的には、「エアコンがつけられない。食事の回数を減らし(親は1日1食)、衣類を買わず、子供の習い事を辞めさせた」(月収11万円、子1人、50代)▽「電気代節約のためエアコンを基本的に使わない。移動は徒歩か片道20キロまでなら自転車」(月収11万円、子2人、30代)▽「暑い時は汗をかいて過ごしています。夜はエアコンを使ったことがありません。扇風機と水枕で頑張っている」(休職中、子2人、30代)▽「エアコンは(使用を)控えているのではなく、お金がなくて買えない。1日家にいる子どもは死にそうだ。本当に死にたい」(月収10万円、子1人、40代)」――という声が寄せられている。

「どこにも連れて行けない」


 また夏休み中の過ごし方についても、「子どもを連れて遊びに行く予定がない」と回答した世帯が45%。自由記述には、「夏休みに行くところもなく、家も暑くて、みんなでピリピリしている。動くとお腹が空くから動かないと言って、ベッドに子どもが転がっているだけ」(月収3万円、子2人、40代)という例もある。

 また最低賃金の引き上げに伴い、非課税になる所得をわずかに超えることで、実質的な手取り収入が減ることを危惧する声が寄せられている。さらに、高校や大学の無償化などの支援制度の対象から外れる懸念もある。
 具体的には、「子どもを大学に行かせてあげられない。貧困の連鎖をさせたくない」(月収10万円、子2人、50代)という声が寄せられた。

「どうやって生きろと?」


 気温上昇や物価高などで出費が嵩む中、実現してほしい支援策として、児童扶養手当の増額を求める回答者が79%にのぼり、次いで、家賃の補助が65%と多かった。 夏場特有の出費と相まって、物価高や家賃が家計に重くのしかかる。

 「物価高が生命を脅かし始めている。つい『餓死、何日で死に至るか』と検索した」「体調が悪く非正規ながらフルタイムで働いても月10万円ほど。抽選でやっと入れた都民住宅家賃が6・9万円、どうやって生きろと?毎日明るい気持ちで朝は起きられません」(月収11万円、子2人、40代)といった、悲鳴に近い声も寄せられている。

ひとり親世帯の困窮状況、改善求める


 親の仕事が非正規の場合、21年の1年間の就労収入平均は女性が150万円、男性が192万円(厚生労働省調べ)で、いずれも200万円に届いていない。

 この調査結果を踏まえて、同NPOは、夏場のひとり親世帯の困窮状況を改善するため、給食がない夏休み期間の昼食代の支給に就学援助の対象を広げることや現在の児童扶養手当について約4万円から1人5万円(子1人あたりの満額)へと増額し、制度における所得制限の引き上げを提言している。また、物価高や最低賃金アップに伴い、非課税世帯の基準を見直し、ひとり親家庭に対する家賃補助や公営住宅の提供も求めている。       (吉永磨美)

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