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郵便ポストと英国王室

イギリスの郵便ポストのモノグラムに気がついた人もいるのではないでしょうか。これはイギリスではRoyal cypher (Tomlinson, 2016) と呼ばれ、設置当時の君主を示しています。

VRはヴィクトリア女王の在位中のもの。ドーセット(Dorset)にあるイギリス一古い現役のポストもVRが記されているとのこと (Royal Mail, 2016)。

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こちらのGRはジョージ5世のもの。ヴィクトリア女王以降にジョージを名乗る君主は2名、ジョージ5世とジョージ6世がいます。ジョージ5世はポストに同じ名が刻まれている前任者がいなかったのでGR、ジョージ6世は区別する必要があったためGVIRとなったのでしょう。

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モノグラムとは無関係ですが、こちらはランズ・エンド(Land's End)にある郵便ポスト。上部のプレートには"the first and last post box"とあります。今は使われておらず、何の変哲もない普通のポスト。「地の果て」ではすべてが始まりであり終わりになるようで、近所には"the first and last House"まであります。

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エリザベス女王2世のEIIRのモノグラムは最もよく目にする郵便ポスト。Royal Mail (2016) によると2016年の時点で全体の60%を占めていたとのこと。

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ところでスコットランドにはEIIRの郵便ポストは設置されていないそうです。Tomlinsonによると、これは現エリザベス女王を2世と認めないスコットランド人もおり、過去には破壊行為まであったためだといいます。そうした経緯もあり、スコットランドではモノグラムの代わりにスコットランドの王冠が記されているそう。チューダ朝の歴史が400年以上経った(エリザベス1世が亡くなったのは1603年)現代の郵便ポストにこんな形で影響を及ぼすとは。

ガイドブック等にも写真が掲載されて、イギリス文化の象徴の一つとして認識されつつある郵便ポスト。GOV.UK(2015)には現行の遺産保護システムを通じて可能な限り郵便ポストを保持し整備する最良の方法を見つけるために、新しい政策のもとHistoric EnglandがRoyal Mailと建設的に協力していくことになったとあります。イギリスの郵便ポストの重要性は国内外関わらず高まっているようです。

Reference List

・GOV.UK (2015) Preserving our post boxes [Online]. Available at: https://www.gov.uk/government/news/preserving-our-post-boxes (Accessed 9 July 2021).

・Royal Mail (2016) 'The UK’s oldest working post boxes', 500 Years of History [Online]. Available at: http://500years.royalmailgroup.com/gallery/the-uk-s-oldest-working-post-boxes/ (Accessed 29 June 2021)

・Royal Mail (2016) 'Use of the Royal cypher on post boxes', 500 Years of History [Online]. Available at: http://500years.royalmailgroup.com/gallery/use-of-the-royal-cypher-on-post-boxes/ (Accessed 29 June 2021).

・Tomlinson, G. (2016) 'Spotting a Royal Cypher', The Postal Museum, 17 June [Blog]. Available at: https://www.postalmuseum.org/blog/royal-cypher-appearances/ (Accessed 29 June 2021).

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