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鳥よ、花よと…

我が家の近くに用水路が流れている。
神の君、徳川家康が作らせたという県内最古の用水路である。
春はこの小さな用水路に色とりどりの花が咲き乱れる。用水路の両壁に様々な種類の桜や花桃が植えられていて、種類が違うため時間差で次々に咲く。それはそれは見応えがある。
地域には「桃の会」というボランティアグループがあり、消毒や剪定など樹木の世話をしてくれている。
私も知らなかったのだが、この辺りは昔、桃の名産地で10万本の桃の木が植えられていたそうだ。花の季節、電車の車窓から見える景色はまるで桃源郷のような美しさだったという。
しかし戦時中の食糧難で「桃は贅沢品」と言われ、10万本の木は切り倒され、田畑にされてしまったのだった。
そんな地域の歴史を残そうと、用水路には数々の花桃が植えられるようになったようだ。

私も最初は用水路に注目するのは、春の花の季節だけだった。
しかし、5月頃になるとやってくる小さな子ガモちゃん達の追っかけをしているうちに、用水路の自然に魅せられるようになってしまった。
桜や桃だけではなく、一年を通して用水路には実に多くの木々があり、花が咲き、実がなっていることに気がつく。
この小さな気付きは私の生活をちょっぴり豊かなものにした。
休みの日など、早朝から用水路を散歩する。気が付くとあっという間に2時間ぐらい経っていて驚く。ジョギングしている人たちを横目に、私はゆっくりゆっくり草花に目を向けて歩く。
ゆっくり歩かなければ見落としてしまう、小さな花や小さな虫たちに出会いたいからだ。

クワの実、クコの実、カリンの実。ビワの実、カキの実、ミカンの実。用水路には実にいろんな果樹がある。
時々大きなガキ大将が秘密兵器を使って、高い所になった実を取っている。

もうすぐ子ガモちゃんたちの季節がやってくる。用水路にいるのはカルガモだが、最近、頭が緑色の雄のマガモが現れて、カルガモたちと仲良く泳いでいる。もしかしたらマガモのハーフが産まれるかも?とちょっと楽しみにしている。
少し前にはここら辺では珍しいクロガモも見たが、カルガモたちに追い掛けられ逃げ去ってしまった。残念ながら、それ以来見てない。

さあ、散歩が楽しい季節がやってきた。

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