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夏祭りと花火と記憶

2023年8月、4年ぶりに夏祭りが開催された。それ自体はとても喜ばしいことで、ボクもとても楽しみにしていた。しかし、夏祭りと同時に強烈に思い出されることがある。今回はそれを書き連ねていく。

ボクには、大学生1年から社会人2年目まで付き合っていた男性がいる(約6年)。仮にAとしよう。ボクはAとの間でデートDV状態にあった。詳しい話はまた別に機会に記事にしようと思うのでここでは書かないが、「身体的な暴力」「経済的な暴力」「精神的な暴力」「性的な暴力」すべてを受けていた(まあ、ボクも19歳で双極性障害を発症して、コントロールができなかったが故の落ち度も多分にあるが…)。

で、夏祭りで何を思いだすか、なのだが。

当時、ボクにはAから借りた借金があった。40万。社会人2年目の頃に負ったものである。なぜAから借金をしていたかというと、双極性障害の病状が悪化し、休職したがゆえに生活費が底をついたからだ。一人暮らしで一人分の生活費を賄う程度であれば、(心底頼りたくはないが)親を頼ることが可能であった。しかし、Aが同棲ほぼ同然くらいに部屋に入り浸っており、食費や水道光熱費もボクの収入から出していたのだ。親にAのことはほぼ伝えていなかった。むしろ、大学生時代にAとトラブルを起こし、一度実家へ連れ戻されているのだ。そんな状態で親を頼ることはできなかった。しかも、運悪く部屋の更新も重なってしまった。収入が無い、いつ復帰できるかもわからない状況で出費が重なり、混乱を極めた。

Aは働いていた。しかも大手企業であり、ボクよりも手取りが1.5倍くらい多かったのだ。なのに1銭も出してくれなかった。外食も、デート代も、全部ボクが払っていた。
親に頼れない以上、頼みの綱はAしかいなかった。部屋で、額を床にこすりつけながら、いままでの生活費として40万出してほしいと懇願した。

Aが出した答えは「借用書を書いてほしい」。頭が真っ白になった。返すあてもないのに?今まで出してくれなかったのに?でも、お金は今すぐ必要だし…。Aを責め、自分を責め、パニックに陥っていた。借用書を書いてしまったら、そこから返済の義務は発生する。交際という関係性の中では、貸し借りのほうが正しいのかもしれない。しかし、どうしてもAを信じ切ることができなかった。同時に、Aしか頼れない空間で彷徨っていた。

気づいた時には、深夜の道路の真ん中に立っていた。自分なんかいなくなればいい、いなくなれば借金も更新も、お金周りのこと全部なくなる。そう考えていた。

残念ながら命を絶つことは叶わなかった。まあ成功していたらこういう文章も書いていないのだが。
ルーズリーフで作成した40万の借用書に、返済方法と拇印を押した。その後の記憶は、今となってはもうない。

時は流れ、今の夫と交際していた時、Aから「40万を早く返済しろ」とLINEが頻繁に来ていた。こちらが仕事中でも構わずLINEが来、返信をしないと電話が鳴る。そんな日々が続き、精神的にも摩耗していた。その様子を見かねた現夫が、連絡窓口を買って出てくれたのだ。その時、とても安心したことを覚えている。
ボクは別口で法テラスで借用書の件を相談した。弁護士曰く、「裁判を起こしたとして、弁護士費用を払ってもおつりが返ってくる」とのことであったので、それを現夫に伝えた。現夫からAに伝えてくれたらしい。この時点でAには10万を返していた。

そんなことがあった年の夏祭りの日。Aから現夫にLINEが来た。

「40万、もういいって。手を引くってさ。」

花火が上がった。あぁ、終わったんだ。やっと。そう思った日である。

今年は残念ながら花火は上がらなかった。来年こそは上がってほしいな、と思いながら、いつこの話を忘れられるだろうか、思いを馳せる。

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