韓国車が日本で苦戦しているように見える現状を色々考えてみた
2020年6月に現代自動車[以下ヒョンデ]のTwitterアカウントが開設され、2022年に電気自動車と燃料電池車[以下EVとFCV]を主軸として日本市場に再び参入することが発表されました。
ヒョンデは20年ほど前に日本上陸していたものの、販売不振によって2010年に乗用車販売からは撤退しており、10年の時を経ての再上陸となります。
日本導入車種はEVであるアイオニック5、そしてFCVであるネッソというラインナップになっています。
しかし販売台数はどうも苦戦しているように見られます。
ヒョンデによれば2022年5月の販売台数は''わずか''10台とのことです。
販売不振の理由として1部のメディアでは「日本の市場は排他的で、嫌韓感情や日韓関係の悪化などがある」とされています。
しかし本当に''嫌韓''の一言だけで片付けられる簡単な理由なのでしょうか?
これについて経験値があまりない20代前半の青二才の若僧が、個人的に色々考えたいと思います。
理由①.納車開始時期によるもの
まず最初の理由として、納車開始の時期が7月からとなっている点です。
記事によれば「納車は7月より順次開始する予定」とされています。
このことから5月や6月の販売台数は1桁や2桁でも腑に落ちる点はあります。
しかし納車が開始される7月以降となっても、ヒョンデの車の販売が日本で苦戦する理由はいくつか予想されるでしょう。
それについて私なりに考えたものが下記の複数となっています。
理由②.ヒョンデの日本におけるブランド力の無さ
次の理由として考えたのが、ヒョンデが日本において自動車メーカーとして認知されていない/ブランドとして認識されていない現状があるのではないか、ということです。
ヒョンデは日本市場での販売不振を理由に2010年をもって一度日本での乗用車販売を中止しており、2022年に再上陸するまでに12年ほどのブランクが存在していました。
また、日本市場はドイツ車御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)を初めとしてフィアットやルノーといった欧州メーカーが多く正規導入されており、それらのメーカーと比較した場合に高級性やブランドネーム、信頼度を構築できなかったのかもしれません。
これはヒョンデに限定したことではなくかつて日本に正規導入されていたものの撤退となった他のメーカー、例えばフォードやオペルにも言えることではないでしょうか。
また私の好きなメーカーであるゼネラルモーターズのブランドの1つ、ビュイックも歴史としてはメルセデス・ベンツやプジョーなどと肩を並べる老舗となります。
しかしメルセデス・ベンツやプジョーと比較して、ビュイックの知名度は日本国内では殆ど知られていないようです。
このように欧米の自動車メーカーでも日本市場から撤退したり、知名度がないメーカーが存在している中で、12年前まで日本で販売していたとはいえヒョンデを知らない人が多いのはある意味自然なことなのではないでしょうか。
理由③.品質に対する信頼度が低い
文章を書く中で考えついた理由として、ヒョンデの品質に対して一般的な日本人の信頼度が低いのではないか?ということです。
例えば韓国車についてTwitterやネットで検索すると「性能が低い」「品質が悪い」といった意見をよく見かけます。
これに拍車をかけるようにヒョンデの車のトラブルや事故などについて話題になることもあります。
例として2022年6月に報道されたアイオニック5の出火事故を挙げてみます。
事故の概要として「韓国・釜山市内の高速道路の料金所付近で、ヒョンデの電気自動車であるアイオニック5が、料金所のトールゲートに激突して火災が発生。
火災の消火活動は翌日の朝までかかり、車のドライバーと助手席にいた同乗者の2人は車内で遺体が発見された。」
といった凄惨なものです。
調査によると、アイオニック5がトールゲートに衝突から僅か数秒後に爆音とともにボンネットより出火、直後に車内を経て車全体に燃え広がったとされています。
またこの事故では衝撃により、電気自動車用バッテリーが破損したことでショートが起こり過電流によってバッテリーの温度が一瞬で高温となり、炎が一気に燃え広がる現象である熱暴走が事故車両で起こった、とも推定されています。
この報道についてSNS上では「走る棺桶」「スマホだけじゃなく車も爆発するのか」「何故日本で販売許可出した?」といった、非常にネガティブな意見がコメント欄や引用ツイートなどで多く寄せられました。
ただヒョンデ・アイオニック5のネガティブキャンペーンにならないように記しておくと、アメリカなどの複数の国ではヒョンデ以外にもフォルクスワーゲン・ID.3やシボレー・ボルトといった車種の火災事故も確認されており、車そのものというよりはバッテリーの問題ではないか?とも考えることは出来るでしょう。
(どちらの車種もLG化学のバッテリーを搭載。)
ここで比較対象として挙げたいのは、日産自動車が生産している世界初の量販EVであるリーフ、そして先日納車が開始されたアリアの2台です。
リーフは2010年に発売を開始して以来、世界市場で50万台以上が販売されている世界屈指の大量生産モデルの電気自動車と言えます。
しかしこれまでに、リーフが出火した、爆発したという話は全くと言っていいほど聞いたことがありません。
以下MOTAの新型車解説(2021/11/18 )からの転載
リーフの試験については「日産 リーフの電池は、1つ1つがレトルトカレーのようなラミネートパック形状をしている。そこに釘のようなものを打ち込み、物理的に壊して、内部ショートを発生させるのだ。ところが、それで火を噴くことはなかった。ブスブスと燻るだけで、最後まで燃えずに済んでしまったのだ。」
とされています。
また、日産自動車はリーフについて氷点下となる寒冷地でも始動・走行テストから冠水路での走行テスト、洗車時の高圧洗浄によって機関に問題が生じないことを確認する高圧洗車テストに至るまで幅広い使用環境を想定した試験を実施しており、確かな安全性の確保に努めています。
一方アリアについてですが、日産自動車によれば「開発の初期段階から発売までに400回以上の衝突実験を行う予定」とされ、リーフと同じように法令基準よりも厳しい安全基準を設定しています。
納車が開始されたばかりであるため事故時の安全性についてはこれからの様子見となるでしょうが、日産による完璧さを求めた試験とリーフで積み重ねた信頼から、大きな出火事故などは起きないのではないかと信じています。
これらの事故の報道と日産・リーフとアリアの安全性について知った場合、多くの日本人にとって外国製の電気自動車のイメージ悪化に繋がり敬遠するようになる可能性が十分にあります。
もちろん市販になる前に衝突試験はしているでしょうが、日産の2台の安全性と比べた場合見劣りしている印象を拭えないからです。
普通の感覚を持つ人であれば、誰もが ''バッテリーから出火して車内が800℃近くの高温になり焼死するかもしれない車'' に乗りたいとは思わないのではないでしょうか。
理由④.ヒョンデの想定しているターゲット層は正しいのか
次に考えたものが、ヒョンデが想定しているターゲット層が実際に正しいものなのか、ということです。
ヒョンデは日本でのターゲット層を''音楽やドラマ等で韓国のカルチャーに興味を持つ若い世代''としているようです。
確かに韓流と一般的には称される音楽やアイドルグループ、ドラマ等は日本でも人気があるようですし、私の周囲にもK-POPや韓国料理が好きな友人は多くいます。
そしてここから考えたことは、このように韓国を好きな日本人の若年層が本当にヒョンデの顧客になり得るのか、という点です。
この先はオークネット.JPの『車選びで重視するポイント!20代と親世代ではどう変わる?』を参考として引用して書いたものですが、20代の若年層は車を購入する際に重視するポイントとして上位から
1位:価格・・・34%
2位:見た目・・・20%
3位:安全性能・・・15%
4位:燃費・・・12%
5位:乗り心地・・・10%
6位:走行性能・・・4%
7位:ブランド・・・3%
8位:その他・・・2%
という順位となっています。
この順位からは1位である ''価格'' については「収入に見合った車を購入したい」や「ガソリン代や保険等の維持費も考慮して価格帯の低い車種を選びたい」といった意図を読み取ることができます。
また上記の定額カルモくんの記事の前半部分は、年収と自動車価格の繋がりや車購入・維持の必要経費について纏められているため参考に読んで欲しい物となっています。
この記事中の最初にある「車は決して安い買い物ではありません。」という1文にある通り、400万円から500万円の車を簡単な気持ちでポンと買う人というのはかなり少数で限られた分類になると考えられます。
そこから考えた時に理由③とも関連がある理屈になりますが、''価格帯の低い車種を選びたいと考えている若者'' が日本において名前が知られていない自動車メーカーの電気自動車に400万円以上出す人が多くいるのか、疑問に感じるところがあります。
理由⑤.「世界で売れてる!」=日本でも売れるは本当か?
ヒョンデの車が日本で売れてない、人気がないというツイートやネットニュースに対して「世界では売れている」や「レビューや実際目にしてみて品質は良好」という意見を目にすることがあります。
しかしここで私が考えたいのは、そもそも国産メーカーの車でも世界で売れているから日本でも売れる、という訳ではないという点です。
例えば世界で人気の車ながら日本市場で苦戦している車として、私が普段から愛用しているホンダ・CR-Vは簡単に挙げられる例だと思います。
これらの情報から、CR-Vは昨年度アメリカでは年間36万台以上を売り上げたのに対して、日本市場ではレクサス・UX250hの販売台数である8263台を下回り車名別販売台数トップ50にも残ることが出来なかったことが分かります。
またその他にも海外では人気車種ながら日本では販売が振るわず生産終了となってしまった車種には、海外では新型が登場した日産・シルフィ(セントラ)なども加えることができるでしょう。
これらの車種の事例から分かるように、「世界で売れている」は日本国内でも売れるという理由にはならない場合があります。
世界で人気の車種が日本で売れないのには様々な理由があるでしょう。
「日本国内と世界で値付けや装備内容が異なる」「日本国内の需要と海外での需要・人気にズレがある」などが比較的すぐに挙げられます。
上記の理由から、世界で人気で売れている車が日本でも売れるとは限らないのです。
ヒョンデは日本では売れないのか?
今まで上に記してきた5つの大まかな理由から、ヒョンデの車は日本国内では苦戦するのではないかといったテーマで書いてきました。
最後に纏めていきたいのは、「ヒョンデは日本では売れないのか?」という事です。
これについては私の中の意見としては「分からない」となります。
ここまで色々書いてきて無責任じゃないかなどとツッコまれそうな最終結論ですが、実際にヒョンデにも分があるのではないかという要素も複数挙げられます。
まず挙げられるのがデザインです。
アイオニック5に対するポジティブなコメントとして、「レトロさと先進的な雰囲気を融合したユニークなデザイン」「レトロフューチャーという言葉がピッタリ」といったエクステリアに関連する声が多くあります。
実際に今年度のニューヨークモーターショーでは「2022ワールドカーデザインオブザイヤー」を受賞しており、世界的に見てもアイオニック5のデザインが評価されているということが言えるでしょう。
また世界の自動車販売台数ランキングでいえば既にフォードやホンダなどを抜いていることからも、世界シェアを徐々に伸ばしていることが分かります。
理由③で出火事故などを含めて品質等についても考察しましたが、それでも現時点ではEV化というものでやや日本車メーカー勢より先行していることを脅威として考える方も少なくはないと考えられます。
私の個人的な意見としては今現在の日本国内でヒョンデの名前を知っている層はEV/FCVといった先端技術に興味がある方々の他に、WRC(世界ラリー選手権)やWTCR(世界ツーリングカーカップ)といったモータースポーツ観ている人々ではないかと思っています。
その事からEV/FCVと並行しながらこれらの車種の導入などは1つのアイデアとしてどうなのかなどと妄想していますが、本当のところはどうなるのでしょうか…
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