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【感想】夢千鳥

大正浪漫抒情劇
『夢千鳥』
作・演出/栗田 優香

配信も観劇も観れなかったので、スカイステージの放送で念願叶って見ることができました。
Twitterでも大絶賛の嵐だったので、本当に楽しみで仕方なかった。
予想を遥かに超えて、退廃的な世界観が、自身の趣向にハマりかなり面白かったです。
一瞬でも目が離せない。非常に面白かったです。
以下は、ネタバレありの感想を初見で気持ちが深まりきれないままに綴りたいと思います。




主演の和希そらさん、天彩峰里さんの演技や歌の技術力の高さは言わずもがな、宙組さん全体のレベルの高さもあり、すっかり話に集中していました。上質な歌や芝居が良かった。

和希そらさんが演じる夢二は、精神的に未熟でとても弱い人間
暴力や仕事もせずに花街に行き浮気
浮気が本気に転じたり…
所謂、最低な男なのに和希そらさんが演じると魅力的で惹かれる人物になる。
横になっている姿勢も一枚の絵のようで耽美でした。

天彩さんは、ドールフェイスで元から好きな娘役さんのひとり。
情念の女を、品を損なわず演じる力に感嘆しかありません。まさに怪演。所作から色香が溢れていた。
彼女の演技によって話に奥行きと深まりを感じました。彦乃の両親に娘は女になったと告げる場面は冷えました。

紺野 陽平/恩地 孝四郎役の、留依蒔世さん歌が上手すぎて引き込まれた。すごいソロ歌唱だった。凛城きらさんといいコンビネーションだった。お二人とも上手い。
ミーハーだけど、亜音有星さんのお顔や繊細な演技も好感を増しました。ロケットの中央も彼女だったのですね、華やかだった。

美風さんの歌唱もさすがとしか言えない。彼女の高音にはいつも鳥肌が立つ。綺麗すぎて好き。優しい母を好演なさっていた。これが宙組最後という、カテコの挨拶も愛に溢れていて素敵だった。
歌手の花音さん、歌手以外も色んな場面におられるのだけど、花音さんはどの作品においても印象深いモブキャラクターをいくつも演じておられるので、ついつい目が向いてしまう。きっと次期の副組長だと勝手に思っていたので本当に残念。発表を知ってからカテコであおいさんに向けられる表情を見るだけで、なんとも言えない涙が出る。

山吹さんの彦乃も、若さゆえの視野狭窄振りがよく表現されていた…と昨夜下書きしていたのだけど、幼くて清純の仮面の下は、かなりの強かさがある役だったのかと気づいた。よく聞く、あざと女子というやつかと。
それを堂々と演じておられたのも良かった。声がかなり特徴的だなと思った。

水音さんの、お葉さんも妖艶で学はないとはいえ賢い女性像が垣間見えたように感じる。歌も上手いし宙組さん層が厚いなぁと思った。

作品について、色々と語りたいけれども…正直なところ、胸がいっぱいで言葉にならず。
退廃的、破滅型なラストをイメージしていたけれども落ち着くところに落ちた、高難度の着地ぶりに驚きつつも納得してしまう。
女三人の情念というか業の深さみたいなものが、これでもかと出てくるのかと思ったけど、湿度が高いのは、天彩さんの他万喜と赤羽が頭ひとつ抜きんでいたためか他の二人が少しばかりあっさりと感じてしまった。


要所に入るバレリーナ、羽や鳥籠の演出など、
暗澹たる気持ちだけに寄りすぎない演出などもすごく好み。栗田先生の次作が楽しみしかない。

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