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重層的で、プロフェッショナルな作品〜『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力〜

『ONE PIECE』なら、私はレイリーが好きです。
『天空の城ラピュタ』なら、ドーラが好きです。
『名探偵コナン』なら、灰原哀が好きです。
『SLAM DUNK』なら、安西先生が好きです。
『ハリー・ポッター』なら、セブルス・スネイプが好きです。
『溺れるナイフ』なら、大友が好きです。

 彼らは、主人公にとって「大事な局面」で、すぐそばにいます。
 そして、主人公が道を開くきっかけとなるのです。
 そのキャラクターのあり方や、主人公との関係性に、私は色気を感じます。

 それでは、『キングダム』なら、誰のことが一番気になるだろう? ・・・ものすごく悩みます。色んな人の顔が浮かびます。
 馬場啓介さんの新刊『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』を読み終わった今だと、「・・・騰かも」と思っちゃいます。


伊藤守さん

 今年に入ってから、私が著書をよく読んだ書き手が二人います。伊藤守さんと馬場啓介さんです。
 伊藤守さんは、『こころの対話』(1995年)がとても有名です。元ほぼ日CFOで、現在はオンライン1on1サービス「YeLL」を展開するエールの篠田真貴子さんがnoteを書かれていました。私はこのnoteを読み、手に取りました。

 私が驚いたのは、『こころの対話』が刊行されたのは、1995年、ということでした。
 というのも、伊藤さんは、昔のインタビューで、「コーチ(coach)」という言葉を知ったのは1996年だとおっしゃっています。つまり、『こころの対話』は伊藤守さんが「コーチング」と出会う前に書かれていた作品だったのです。実際、『こころの対話』は、内容はコーチングの大事なポイントを語っているにも関わらず、「コーチング」という言葉が一切出てきません。
 日本のコーチングの第一人者である伊藤守さんは、コーチングと出会う前からコーチだったのです。1951年生まれの伊藤さんは、45歳でした。

 伊藤守さんは1996年に「コーチ(coach)」と出会ったのち、翌年、コーチ・トゥエンティワンという会社を設立します。それが、現在まで続くコーチングカンパニー「コーチ・エィ」です。伊藤守さんの著書やコラムを追っていくと、コーチ・エィが様々なエグゼクティブに対してコーチングを展開してきたことが分かります。『コーチング・マネジメント』(2002年)は、現在17刷と、マネージャー層に長く愛され続けている本です。また、2011年秋にはNHK『クローズアップ現代』で「“コーチ”をつける社長たち」が特集されるなど、日本のビジネス業界において、「コーチ」「コーチング」という文化に長年寄与してきたことも分かります。


馬場啓介さん

 2006年、伊藤守さんが設立したコーチ・エィは10年目になっていました。その年に、ひとりの若者が転職してきます。それが、馬場啓介さんです。私は、今年に入って、伊藤守さんの本と同時に、馬場啓介さんの本も全部読んでいきました。

 馬場啓介さんは、大学を卒業後、外資系の人材サービス会社で営業をやっていました。著書やブログによると、「毎日100件の飛び込み営業」をし、入社から2年後、「身体が動かなくなった」そうです。

 24歳になっていた馬場さんは、ある日、本屋で「コーチング」の本に出会います。その本の著者が、伊藤守さんでした。馬場さんは、新刊『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』の中で、こう書かれています。

企業説明会に参加し、会場にいたコーチエィの当時の社長を追いかけて直談判したのです。

「やる気だけは誰にも負けないので、面接だけでも受けさせてください」

社長は歩きながら、私の顔を一瞬だけ見て、「いいね、おもしろいね」と言ってくれました。そのときの、後ろ姿のかっこよさ、大らかさ。それが、私の恩師である、コーチングのパイオニア伊藤守さんとの出会いでした。

 馬場さんはコーチ・エィで3年間コーチとして活躍したのち、2009年に独立します。キャリアコーチとして、オンラインサービス「ラストスクール」を運営し、『僕がトマト当時になって理由』(2011年)や『きららが見つけた幸せになるお金の稼ぎ方』(2012年)といった「夢や目標」をテーマとした作品を書きます。その頃から、母校の法政大学で自主マスコミゼミの講師を担当していました。

 また、プロのコーチのトレーナーとして、2010年から様々な活動をし、2014年には子を持つお母さんたちへ向けた『マザーズコーチングスクール』を、2015年からはコミュニケーションを誰もが学ぶ文化をつくりたいと『トラストコーチングスクール』をスタート。馬場さんの「子を持つ母」へのまなざしは絵本『鏡の中のぼく』(2017年)に、プロのコーチ育成への想いは『目標達成の神業』(2018年)に垣間見ることができます。


 知ったような顔で、お二人のことをえらそうに書いてきましたが、お目にかかったことはありません。でも、私の中では、勝手に、すでに長年付き合ってきたような感覚があるお二人です。
 というのも、私の好きな匂いがあるからです。レイリーや安西先生や、ドーラのような・・・。


重層的に、プロフェッショナルに。

 『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』は、馬場啓介さんが「伊藤守さんが恩師」とはじめて実名で明記した作品で、また、出会ったときのことをはじめて書いた作品です。愛読者の私にとっては「ついに!」という嬉しさがありました。

 馬場さんが2009年に伊藤守さんのもとを離れてから、およそ11年。10年以上経って、恩師の名前を原稿に書くときの、馬場さんの指先を想像してしまいます。しかも、『キングダム』という馬場さんがたびたびSNSで大好きだと発信してきた作品で。その年月の重みに、私が、勝手に、震えました。

 『キングダム』登場人物たちの「内面」「関係性」を解説したこの本を、彼・彼女たちの生みの親である原泰久さんが「読み込んでしまいます」とおっしゃる・・・。きっと『キングダム』ファンたちも「大納得」な本だと思います。

 伊藤守さんと馬場啓介さんというお二人の愛読者である私は、というと。
 馬場さんは、『キングダム』の登場人物たちや、作者の原さんを、コーチとしての視点から、深く応援しているように思えました。また、恩師の伊藤守さん、お父さん、そしてAさんへ、エールを送っているように思えました。そして、読者である私は、本を読んでいるおよそ3時間、自分が行ってきたコミュニケーションについて振り返っていました。私の大切な人たちが浮かび、「はたして、大切な人が大切にしていることを、自分は大事にできていただろうか?」と考え始めました。
 こんなに重層的に思えるのは、馬場さんが様々な視点で『キングダム』を解説しているからでしょう。その、コーチとしての、書き手としての、プロフェッショナルな仕事に、痺れました。

 重層的な作品である『キングダム』を、「コミュニケーション」という切り口で、重層的に描いた『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』。是非読んでみてください。私は、漫画『キングダム』を、改めて「読み込んで」から、再読しようと思います。

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