不思議な空(14

どれくらい時が過ぎたのだろうか

日も傾き始めていた。

目は腫れて

涙の跡まで残っている。

セナはずっと何も言わずに横にいてくれた。

その間

ずっと同じ方向を向いていた。

その先にあるのは海しかなかったけれど。

しばらくして

わたしは口を開いた。

「セナ。。。ありがとう。。。」

セナは何も言わずに、少し微笑んだ。

セナの笑顔は見たことがなかったけれど

私までなんだか照れくさい気持ちになった。

「わたし。。。怖い夢を見たの。。。

まるでそれを体験しているかのような。

知っているかのような。。。

でもうまく思い出せず

涙だけが止まらず。。。」

するとセナは

わたしに渡してくれたものと

似ている棒を手に持ち

口元にあて

綺麗な音色を奏でた。

わたしはまるで

その音色に抱かれているような心地よさだった。

夢に出てきた

女の人の子守唄によく似ている。

そんな音色だった。

セナは奏でおえると

「ヒノコ。

君の声は君に届いているかい?」

と、不思議な事を聞いてきた。

「わたしの声??う〜ん。。。

聞こえていると思うのだけど。。。」

「そうじゃない。口で発する声ではなく

そなたがこの音色を感じた所から

生まれ続けている声だ。」

「生まれ続けている?。。。よくわからないわ」

「そなたは、この音色を聞いた時にどんな思いだったか?」

「夢に出てきた方の事を思い出していたわ。

多分、わたしの母様だった人じゃないかと

思うけれど。

その人が歌っていた子守唄と、とてもよく

似た音色の音なような気がしたわ。」

「音の中には思いがつまる。

音色にある音の思いが

そなたの中で響き合い

そなたの中にある

過去の響きが

そなたにしか聞こえない

音として生まれるのだ。」

セナがいう事はいつも難しい。

わたしは分からなくて、今日あった事を話していた。

「わたしね。今日ね。

霊巫女様にお会いしたの。

次期霊巫女へおなりなさい。と言われたわ。」

セナは黙って聞いていた。

「セナも言ったわよね。

最善へ向かっている。と。

霊巫女様とお話ししていたら、わたしも

なんだか、そんな気持ちになってきたの。

明日からマナヒへ行き

バァバのもとで学ばなくてはいけない。。。

もう決めたの。向かってみる。って。

わたしはこうやって、あなたに会えるのが

いつの間にか、とても大事な時間になっていた。

けれど、しばらくはここにも来れないし

きっとジィジのいる家にも戻れない。

あなたに会えないと思うと寂しいは。」

すると、セナは黙っていたが

しばらくすると


「そなたとは、常に会う事ができるし

そのうち、もっと身近に会えるようになる。

僕の事を思い出してくれたら

僕はいつでも空に現れる。

寂しくなったら

この空を見上げたらいい。。。」

「でも、中々会えないと思うわ。。。」

わたしはセナに言い返した。

バァバのはる、結界はとても強い。

そう簡単に誰もが破れはしない。

「それでも、わたしは必ずそなたに会いにいく。

それまでに、何かあれば

空を眺めればいい。

わたしは必ずそなたのそばにいる。」

そういうと、またどこからか風が吹き

セナの姿は風がどこかに運んでいったかのように

いなくなり

わたしだけが取り残された。

「あなたはすぐ消えてしまう。。。」

心細くなったけれど

空を見上げたら

いつの間にか日は落ちて

空が真っ赤や青色や紫や

とても不思議な色をしていた。

そこに細長い

立派な雲が月に向かうように飛んでいた。

不思議な空。

いつまでも

いつまでも

ここに座り眺めていたい気持ちになった。







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