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不思議な物体①

わたしは、海で貝を拾うのが好きだ。

あの波打ち際で懸命に貝を探していると

あっという間に時間が過ぎてしまう。

その日も天気が良く、海がキラキラ光り

貝殻を探していた。

すると、白くて鱗が大きくなまずのような

形の物体が、波打ち際に上がっていた。

死んでるのかな。。。

ドキドキしながら近づくと

ヒゲのようなものが動いたかと思うと

突然目が開き、赤い目でこちらを睨み付け

口を開き鋭い牙を見せた。

びっくりして、足が震え上がり、声も出せず

その場で立ちすくんでしまった。

グァーグァ。グァ、グァ、グァー

ドスの効いた低い音が

地響きのように鳴り響いたと思うと

突然、そのナマズのようなものは

血を吐き出した。

びっくりして、震える足を押さえながら

立ち上がり、そのナマズのような

ものに近づくと

頭の中に言葉が響いてきた。

『く、苦しい。。。』

この物体の声だと気づき

よくよく見てみると

右のヒレのような、なんとも小さい足の

ようなものがあり、その右ヒレの下に

見たこともない木ではない、茶色のような

硬い硬い棒が突き刺さり

血が海へと広がる。

「どうしたらいいんだろう。。。」

でも、あの棒を引っ張らないと

このままでは。。。死んでしまう。。。

「ごめんなさい。痛いかもしれないけれど引っ張るね。」

わたしは、棒を手にとり

力を込めて引っ張った。

グァーーー。グァグァン

とまた、血を吐き出したけれど

もう一度、もう一度と引っ張ると

突然する。っと抜けた。。。

その棒は波に飲み込まれ、消えてしまい

危うくわたしまで波に

飲み込まれるところだった。

あの物体の右エラあたりをみると

血の量は極端に減り

傷が半分治ってる!!

不思議に思ったけれど、

まだ、傷は完全に治ってはなかったので

袋に入っていたバァバに持たされてる

薬草を手にとり、傷に手を当てた。

『大丈夫。わたしならできる』

そう心で思うと、バァバが教えてくれた

あの言葉を唱えた。

「ニハホヘノヒ ミンミナシケ マンマラヒヘホ」

思いっきり唱えると

手から風が吹き出したかと

思うと、次の瞬間傷はなくなっていた。

そのナマズのようなものの目は

深い青い吸い込まれるような眼差しになり

わたしを見つめ

何も言う事なくさぁーと

波の中へと姿を消した。


それからと言うもの

わたしはなんとなく

あのものの姿を海の中を

探してしまうようになった。



この土手の先に海がある。

ほら、今日も水面に光があたり

一面キラキラと光美しい。

今日は会えるのかしら。

そんな事を考えながら足を進めた。




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