聞いたことのない音②



海にたどり着くと

穏やかな風がわたしの頬にそっと触れ

立ち去っていく

今日もやっぱりいない。

ここの海は砂浜が広がり

たまにピンクの透き通った可愛い

貝が見つかる

いつもの通り

ピンクの貝を探していると

何やら聞いた事のない音が

風の中に響きはじめてきた

なんの音だろう。

と思いながらその音のする方へ向かった。

すると

岩場のあたりで

人が座っていて

手で棒を持ち

その棒を口元に当て

何やら不思議な音を出している

『もう少しそばにいらっしゃい』

そんな声が頭の中に聞こえてきて

近寄ってみると

わたしより少し歳は上のような

少年で、真っ白い服をきて

なのに、髪の毛は真っ白い。

そして驚いた事に

目が、この海のように透き通る

青い深いなんとも優しい眼差しを

こちらに向けてきた。

「そんな音聞いた事ないわ」

「これか?これは“笛”と言うのだよ」

「ふえ?」

「この世界にはまだ、笛はないのだね。
簡単な構造だよ。棒の中が空洞になっていて
ほら、外にいくつか穴がある。
ここを押さえながら、口から空気を送ると
音色が変わるのさ。」

「へ〜!初めてみるものね。」

「欲しいかい?」

「え?!いいの?!」

「あげるよ。」

とわたしに手渡してくれた。

「ありがとう。でも使い方わかるかしら。」

「簡単さ。その先から空気を送ればいい。穴は手の指の腹で、好きに押さえてみたらいいさ。もう行かなくては。」

その瞬間、突風が吹いたかと思うと

少年の姿は消えていた。

びっくりして

わたしはあたりをまた、探したけれど

少年の姿はどこにもいない。

手元には、変わった棒だけが残った。





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