時がきた(17


ばぁ様のお屋敷につき

扉を開けると

ばぁ様が座って薬草を煎じていた。

ばぁ様はわたしを見るなり

少し驚きを見せるような表情で

突然立ち上がり

奥の部屋へと行ってしまった。

しばらくすると、戻ってきて

「ヒノコよ。今湯を沸かしておる。

その湯を体にかけ、身を清めよ。

そして、奥の部屋に掛け物を準備してあるから

しばらくは横になりなさい。」

そういうと、また向こうへ行ってしまった。

言われたように

湯が沸いたので、奥のお組みどで

服を脱ぎ、塩を体へ塗り付け

湯で流した。

すると、足の方へ血が

垂れていたのに気がついた。

びっくりして

身体を拭き、ばぁ様が用意してくれた

服に着替えて、横になった。

そこに、ばぁ様がきて

「これを飲みなさい。

身体が温まりゆるみます。」

わたしは起き上がり

ゆっくりと飲み干した。

「ヒノコよ。よくお聞きなさい。

そなたに時がきた。

神がやはり、準備を進めたのだ。

時が来なくては、儀式には挑めない。

そなたがそなたとして

そなたの身体を呼び覚ます

時がきたのだ。

ヒノコよ。

これから3日間は、身体の中の血を

外へと出す力が動く。

その間は、横にならなくてはいけない。

これを身体の下のほうへ敷いておきなさい。」

「ばぁ様。なぜわたしは血が流れているの。

何かの滊の滞りなのかしら。

どこか悪いのかしら。」

「ヒノコよ。

そなたの身体は別の命を宿す

準備ができたのだ。

女はみな、そうやって時が

くるのを待つのだ。

時がきて、出会うべくものとの

定めで、別の命を宿す事で

そなたも生まれ

人は人を生み出し

繋がり続けている。

何もおかしい事ではない。

ただ、この三日間だけは

このまま横になりなさい。」

「わかったわ。

今日、結局じい様の所へは行けなかった。

海にいたら、あまりの美しさに

身体の中の水達が、海の水に反応して

動き始めた感じがした。

突然、下腹のあたりがうごめき

ちょっと怖くて、横になったら

いつの間にか眠っていたの。」

「さようか。

海は全てに繋がっている。

どこからか、合図が来たのだろうなぁ。」

と、優しくなだめるように

ばあ様は微笑んでくれた。

わたしはそのお顔にとても安心して

気がついたら眠っていた。

夢の中で

わたしは

真っ白い砂の上を歩いていた。

綺麗な海が広がり

太陽の光も眩しく

けれどまだ、訪れたことのないような

そんな風景が広がっていた。

わたしは一人でただただ歩いていた。











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