マチュピチュ旅立ち
雨が降る。まだ夜が明ける前。町の教会の前で迎えの車を待つ。人の気配は全くない。ただ降りしきる雨の音。所々射す薄暗い街灯。何度も、時折車が一台前のほうを通り過ぎていく。あれか。今度はどうだろう。だけど迎えの車はまだ来ない。心配になる。しかし連絡を取るための電話はない。お金はすでに払っている。待つしかない。
1時間も過ぎた頃。やっと一台の車が止まりこちらを呼ぶ。車にはドライバーと一人の客。そしてツアー会社から来たらしい現地の年配女性。本当にこれが迎えの車だろうかと心配になる。遅れて悪びれた様子はない。車に乗り込む。出発する。今日マチュピチュに行くためには電車に乗らなければならない。予定より1時間も遅れて間に合うのだろうか。しばらくすると近くの広場で降ろされた。ここで他のお客さんと合流するらしい。何度も年配の女性に、電車の時間には間に合うんだよねと念を押す。大丈夫、と言う。
ツアーバスに乗り込み他のツアー客と合流した。他にも乗る人がいるから安心だろう、と思う。ツアーのバウチャーを乗務員に渡す。そしてしばらくしてバスが走り出した。まだ夜が明けないクスコの町を出発して、ぽつぽつと夜を照らす暖色の明かりを窓から眺めた。インカ帝国が天空に築いたマチュピチュの町へと思いを馳せた。
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