62_PCCSカラーカードの意義(2)〜「199」タイプにCMYK値+・・・の違和感

画像1 前回、教材のカラーカードが大幅値上げした!という記事https://note.com/colorfulvision/n/n0d9982f1cd8cを投稿しましたが、その続き。
画像2 印刷する際に使うインクでお馴染みのCMYK。色料の三原色であるC:Cyan(シアン)、M:Magenta(マゼンタ)、Y:Yellow(イエロー)と黒の:Key plate(キープレイト)の略記号です。
画像3 ポピュラーな色彩教材である配色カード199タイプが大幅値上げになったことを記事にしましたが、新しい199タイプの「売り」の1つがカラーカードに収められている「色の数値」を登載したということです。JISの色表示とリンクするマンセル値、光の三原色であるRGB値、そしてCMYK値です。学生やセミナー受講生の方には「カラーカードにある色の数値を知りたい」という根強い要望もあるのでこれは便利かも!?と確認した結果、少し数値に違和感を覚えたので詳しく検証してみました。
画像4 最初にお話ししたように、たいていの印刷などに使われる色料の三原色はこの3色であり、あくまでも理論上ですが、この3色を混色することで全ての色を作ることができる・・・ということになっています。(ちなみに「白」は「色料を使わない、インクが0」の状態です)
画像5 ではCMYKの「K」って何?ということですが、K=Key plateの略であり、補足的に使われる「黒」のことです。CMYを同じ比率で混色すると理論上は「黒」になるはずなのですが、ご覧のようにCMY全てを混ぜても完全な黒にはなりません。そこで必要になってくるのが「K」なのです。
画像6 今回199タイプのカラーカードに記されたCMYK値のどこに違和感を感じたかというと、あまりにも「Kの数値」が高いということです。(左:色彩研究室、右:新配色カード199のCMYK値)です。dkg(ダークグレイッシュトーン)なので黒に近い色ではありますが、90%を超えるKの数値だとほとんど色みが消えることになります。
画像7 先ほどのCMYK値を使って混色してみました。左が色彩研究室が再現したCMYK値、右が新配色カード199に記されたCMYK値を使って混色したdkg(ダークグレイッシュ)トーンです。黒に近いとはいえdkgトーンは有彩色なのですが、右の方はほとんど色相が消えています。さらに色の違いに敏感な方は「色相のグラデーションが怪しい」ことにお気づきになられたのではないでしょうか。
画像8 ではカラーカードの中で白に一番近いトーンであるp(ペール)トーンはどうかな?と確認してみるとなんと「Kの数値」がそこそこ入っています!左が色彩研究室が再現したpトーンの色相環ですが「K」は全く使っていません。それと比べると右の新配色カード199の数値で再現したpトーンは少し薄墨のようなくすみがあるのがお分かりかと思います。そうです。K=黒が混ざっているからです。
画像9 色をくすませる時、つまり中間色(灰みがかった色)を作る場合、多くのデザイナーやイラストレーターの方はK(黒)は使わず、または分量を抑え気味でCMY主体の混色によって色を作ることが多いかと思います。写真は私が好きな色見本のサイトなのですが、CMYKのKの数値はほとんど0になっている色が多いことがわかります。すごく美しいサイトなのでオススメ→「NIPPON COLORS」https://nipponcolors.com/
画像10 最初の方の画像再び。左端がCMYのみで作られた「無彩色」(完全な無彩色ではありませんが)です。右端はいわゆる純色と感じる色であり、CMY値の配合値に0や100があるなどメリハリがあります。CMYの数値が近くなってくるとどんどん無彩色に近づいていく・・・つまり色みが弱い、彩度が低い色はCMY値それぞれの数値が近いということが言えます。
画像11 新配色カード199タイプに記されているCMYK値はほとんどの色に「K」の数値が入れられています。左が色彩研究室が再現したカラーカード199タイプの色相&トーン一覧、右が新配色カードに今回新たに記されたCMYK値に忠実に混色して作った色相&トーン一覧です。全体にくすんでいるのがお分かりですか?それはほとんどの色に「K」が入っているからかと思います。混色の方法は個人個人のご意見があると思いますが、新配色カード199タイプが色の数値を記載したという「売り」の根拠は弱いと思います。あくまでも個人の意見ですが。

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