見出し画像

いま、地方で生きるということ|本と巡る季節

今年、気がつけば1ヶ月に1度のペースで旅をしていた。

山あいの道を車で抜けて、あるいは、田園風景が続く車窓を眺めながらたどり着いた駅で、何とも言えずほっとしている自分に気づく。

身体が深呼吸をしているのだ。

身体は、私の心よりもずっと、私のことを良く知っているのかもしれない、と思った。

西村佳哲さんの本を初めて読んだのは、8年ほど前。

「自分をいかして生きる」という本で読んだこのフレーズが心に響き、1年後には働く環境を変えていた。

わたしたちは美容師になりたいわけでも野球選手になりたいわけでもなくて、<自分>になりたい。より<自分>になれる仕事をさがしている。働くことを通じて「これが私です」と示せるような、そんな媒体になる仕事を求めているんじゃないか。なにがしたいということより、それを通じてどんな自分でいたいとか、どう在りたいかといったことの方が、本人の願いの中心に近いんじゃないかと思う。

「より<自分>になれる仕事」。

それは、自分の感性を行動に織り交ぜられる仕事だと思う。「感性」というと、アーティストやデザイナーを思い浮かべがちだけれど、必ずしもそうではなく、バックオフィスやコールセンターの仕事にだって、感性を活かせる部分はある。

ただ、自分の感性を出しやすい組織、出しにくい組織はどうしてもあるから、私は大企業から社員10名の小さな企業に移ることに決めた。

考えたことを、自分の言葉でそのまま伝えられる。

その心地よさに出会えたのは、間違えなく西村さんの本に出会えたおかげだと思う。

それ以来、西村さんの本は、働いていて気持ちが揺れた時、迷った時、必ず手に取るお守りのような存在だ。

西村さんの最新刊、「いま、地方で生きるということ」では、秋田でギャラリーを運営されていた笹尾さんのインタビューの中での二つのフレーズが印象的だった。

経済的な意味合いとは違う豊かさは、どれだけその場所に誇りをもてているかということと、身近な人をどれだけ尊敬できているかということ。
大事な人たちの表現や活動を成立させるために、周りをバーッと駆けずり回っていて、その真ん中への愛が足りなかったかもしれない。私は。周りを走り回っている時間があったら、中心をもっと充実させることができたんじゃないかって、今は思うんです。

私は、その場にいる以上は、前に進むために周りの人を元気づける存在でありたいし、一人一人にしっかり向き合っていきたいと考えている。そして、自分自身も目標や問題解決に向けて常に動いていたい。

だけど、忙殺されてそのエネルギーが湧いてこない日があった。

笹尾さんのインタビューを読んで、在りたい姿であるためには、まず自分を満たすこと、身の回りを充実させることが大切なんだと気づいた。

そして、自分を満たすためにも、尊敬している人・好きな人との時間を大切にしたいと思った。

1年を振り返り、来年のことを考えるこのタイミングで読めて良かった一冊だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?