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どうして、春は、やってこないんだろう

「どうして、春は、やってこないんだろう?」
 大男は、まどべにすわり、雪としもでまっ白になった庭をながめながらいいました。
「早く春が来ればいいのに・・・」

『わがままな大男』オスカー・ワイルド/小野忠男、井上ゆかり

 あなたがあの日「待ち侘びた春はやってこない」と、「春が来ないことを知りながら過ごす冬だって、とてもいい」と言ってから、どれくらいの時間が経っただろうか。

 本当にきてしまった別れの寂しさに溺れたり、何も変わらない月曜深夜に涙したり、あなたの後輩の1人を「推しメン」と呼ぶと決意したり。映画の中にいる、あなたのようであなたではない人に何度も何度も会いに行ったり、無いと思っていた写真集が出ると知って複雑な気持ちになったり。東京ドームであなたの幻を見るために、泣いたり、笑ったり。そんな風にしてるうちに、世間ではもう、春も終わろうとしている。



 さすがに逃げ場がないくらい日に日に辛くなってきて、やっぱり俺は飛鳥ちゃんが好きじゃないんじゃないかと、いつものように真実に気づき始めて。このままでは、大事な大事なその日を幸せな形で終えられない気がするから、一旦気持ちの整理。後ろ向きで、すみません。



 先日行われた、写真集キャンペーンのSHOWROOM。正直、面食らった。
 写真集は2月撮影だという。そこにいるあなたは、乃木坂46の齋藤飛鳥ではない。現在の、そして未来の齋藤飛鳥である、そう理解していた。なので正直、甘く見ていたのかもしれない。
 今でも忘れない、あの夜は本当に苦しかった。ストレスで戻したのも、全く寝られなかったのも、人生で初めてだった。

 原因は知ってる。そこにいた現在のはずの齋藤飛鳥さんは、あの日永遠の別れを告げた乃木坂46の齋藤飛鳥と同一人物であることに、一瞬気づいてしまったからだ。時間は実は地続きで、もう会えないと思っていたあの人は、実は今も普通にそこにいるんじゃないかと、そういう現実に触れてしまったから。
 もう会えないって言ったじゃん。あの日の別れは何だったんだよ。俺は辛かったんだよ? そんな風に大好きな人に八つ当たりしたい、そんな気分だった。大好きな人なのに。


 とか考えていたけど、少しずつ気持ちに整理がついてきて、#飛鳥へ突撃 とかも見る勇気が出てきて、見てみたら意外とそこにいた飛鳥ちゃんが今の飛鳥ちゃん、すなわち「もう乃木坂46じゃない齋藤飛鳥」として後輩と会っていて、なぜかとても安心したりしていたところに、これですよ。

 「トーク復活」

 本当にもう、どう受け止めればいいのか全く分からない。どういうことだよ。昔のコンテンツはまだ良いよ。でもトークは違うだろ。今の飛鳥ちゃんが乃木坂46の齋藤飛鳥に戻るなんてことが、あって良いわけないんだよ。これまでの長い長い冬は、何だったんだよ。もう乃木坂46の齋藤飛鳥さんと、永遠の別れをしたんだよ俺は。
 それを喜んでいる仲間たちとの温度差も、正直辛い。彼らを悪くは思わないけど、みんな受け入れられるのが不思議ではある。そしてもし、それが飛鳥ちゃんが望んでやったことだとしたら、俺はもはや、飛鳥ちゃんのことが全然わからなくなってしまった。

 辛かった日々が思い出されるから嫌だとか、そんな簡単な話じゃない。俺はたしかにあの日、乃木坂46の齋藤飛鳥さんに永遠の別れを告げた。正確に言うと、あの子から告げられたんだ。そして、何日も何日もかかって、少しずつ、でも確実にそれを理解して、受け入れてきたんだよ。


 卒業コンサート。どういう気持ちで見ればよいのか、まだ分からないままだ。そこで見るあなたの姿は、乃木坂46の齋藤飛鳥の幻だと思っている。その日、その場所で、ステージの上にだけ現れる、あの頃のあなたの姿。もう二度と見れない姿、もう二度と会えないあなたのことを目にするのは、本当に辛いよ。でも、辛さと真正面から向き合いながら、その時間をなんとか楽しもうと、幸せな時間にしたいと思っている。思っているけど、そんなこと出来るんだろうか。


 飛鳥ちゃんの春はどこにあるのだろう。春は来ないなんて、言わないでよ。あなたと一緒に春を迎えることだけが、今生きる希望なんだから。そう思いながら、最後の最後の冬を共に過ごす、その日が来る。

 ねぇ、飛鳥ちゃん。春は、来ますか?




その後のメモ ※ALT参照(自分用記録)