『情シスの眠り姫』【300字小説】
第71回Twitter300字SS
・お題:眠る
・ジャンル:オリジナル
・文字数:297字(改行、空白除く)
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辞令先を告げると皆、気の毒そうな顔をした。
「ああ、『眠り姫』のとこかあ……」
仕事はリモートのため、件の『眠り姫』にも会えず仕舞いだった。
Slackで業務のやり取りはするが、たまに反応が遅いくらいで目立っておかしなことはなく。
「ゆき……ゆうき?」
画面の『眠り姫』——『YUKI HASHIMOTO』を指でなぞる。
どんな人なんだろう。
1カ月が経ち、初めての部内ミーティング。
そして、『眠り姫』の幻想が打ち砕かれた日。
「橋本! 寝るな!」
そう、隣でいびきをかいている彼が、橋本さんだ。
首から下げた社員証には「橋本優姫」の文字。
初めて会った先輩の親御さんを恨むことになる日が来ようとは、露程も思わなかった。