ケルン市内での3vs3リーグ

まえがき

今季は所属クラブから「人がいないから週に1回だけU6の練習をやってくれないか?」と頼まれました。元々自分の担当している学年と同じ練習日、同じグラウンド、練習時間も互いに支障なし、ということで引き受けることに。ノーと言えない日本人です。

引き受けた後になって、「ケルンの他クラブのU6は週末に試合してるから、それもよろしく!」、「子供をクラブでサッカーさせたいって親から連絡あったから、練習招待の調整しといて!」(複数)と詐欺のような順序で話が展開され、結局は「週1の練習」では済まない労働を課されることになりました。

それでも悪い話ばかりではなく、サッカーを始めたばかりの子供たちの成長過程を見るのは興味深く、ケルンで行われている3vs3リーグを実際に体験できるのはやはり勉強になります。

年末年始に日本へ一時帰国した際に、地元の少年団の監督であり市のサッカー協会会長を務める人にこの話をしたところ、この3vs3リーグ(いわゆるフニーニョ)の試合形式に興味を示していました。

フニーニョについては日本でも取り上げられてから数年が経つので、耳にした方や既に実践している方も多いかもしれません。

そして先日、「低学年で3vs3の大会を考えているので、ドイツの大会要項の日本語版を送ってください」という旨の無茶振りを受け、ケルンで行われている3vs3リーグの大会要項をまとめました。

JFAが既にスモールサイドゲームのガイドラインを出しているので、ケルンのローカルな大会にどれだけ需要があるか分かりませんが、せっかくなのでまとめた試合形式やルール等をここでもシェアしたいと思います。


試合形式

U6からU9までが3vs3で試合を行う。ミニゴールを計4つ置いて行う方式と、少年用ゴールを2つ置きGKを含め3+1vs3+1で行う方式がある。

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ミニゴール式

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少年用ゴール式

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選手数

指導者はチームのメンバーを以下に従い小さいチームに分ける。

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交代選手は各ゴール後、あるいは1分毎にローテーションで交代。

フィールドのサイズ

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ルール

1. 試合開始前に出場選手は自陣ゴールラインに並び、試合開始の合図と同時にフィールド中央に置かれたボールに向かって走る形で試合を開始する。

2. ミニゴール式ではシュートエリア内からのシュート、少年用ゴール式ではセンターラインを越えてからのシュートのみ得点が認められる。

3. ボールがフィールド外に出た場合は、タッチラインからのドリブルインあるいはキックインで再開。ドリブルインした選手は自らシュートを打つことができる。タッチラインからの再開時はボールがライン上に静止していること、そして選手がフィールド外から過剰なスピードでドリブルインしないことに注意する。

4. ボールがゴールラインからフィールド外へ出た場合は、ゴールラインからのドリブルインあるいはキックインで再開。相手チームの選手はシュートエリア内に留まっていてはならない。(ミニゴール式)

5. コーナーキックの代わりにサイドのタッチライン上のシュートエリアのマークからのドリブルインあるいはキックインで再開する。敵陣シュートエリアでボールがフィールド外へ出た場合も同様に再開する。(ミニゴール式)

6. リスタート時は、相手選手はボールから3メートル離れなければならない。

7. ゴール後はゴールラインからのドリブルインで再開される。その際に相手選手はシュートエリア内に留まっていてはならない
* 試合を再開するチームへのプレッシャーがそれでもなお大きい場合は、相手選手はセンターラインまで下がることが推奨される。

8. 選手交代はセンターライン付近の選手交代エリアで行われる。

9. 一方のチームが3点以上リードした場合、ゴール差が1点に縮まるまで、負けているチームはフィールドプレーヤーを1人追加し数的優位の状態でプレーする(4vs3、5vs4、6vs5)。負けているチームが交代選手を要していない場合、勝っているチームがフィールドプレーヤーを1人減らし数的不利の状態でプレーする(2vs3、3vs4、4vs5)。このルールは、少年用ゴール形式でも選手数に応じて適用される。

10. シュートエリアでのプレーの妨害:シュートエリア内で守備側選手によりルールに反するプレーの妨害が行われた場合、ファールされたチームはペナルティー攻撃権を得る。
ペナルティー攻撃:ファールされたチームの1選手がセンターラインから攻撃方向へドリブルを開始。守備側のチームの1選手が自陣シュートエリアに立ち、それ以外の全出場選手はドリブルを行う選手後方のゴールライン上に並び、ドリブル開始と同時にフィールド内へ入りプレーを再開する。

11. ゲームは審判なしのフェアプレールールで行われる。選手の保護者はフィールドから約20メートルの距離を保って観戦し、試合への干渉を控える。チームの指導者はセンターライン付近の選手交代エリアに立ち、コーチングを控えるか最小限に抑え、選手交代と試合の滞りない進行に従事する。

12. 試合結果の記録は行われない。大会優勝者やグループ勝者等は存在せず、試合結果について語られるべきではない。重要なのは、サッカーにおける子供たちの育成とプレー体験である。

13. GKありの3vs3または4vs4における推奨:指導者は、キーパーが積極的にプレーに関与するよう鼓舞するべきである。センターラインを越えるパントキックやスローイング、手を使ったバックパスは禁止。ボールを一度手放した後、他の選手がボールに触れる前に再びボールを手に取ることも禁止。選手はこれらの行為に対して罰せられず、指導者のガイドによってこれらの行為を避けるべきである。

試合の開催と試合時間

- 毎週2~3のクラブがホームグラウンドで「マッチデー」を主催

- 1会場の最大参加チームは8チーム

- 1試合7分

- チーム毎のプレー時間は7分×6試合(計42分)

- 試合当日の休憩を含めた合計時間は約60分

試合日の対戦表の例 ↓

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試合当日のフィールドの配置 ↓

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試合日のアドバイス

3vs3リーグはフェアプレールールで行われる。保護者はフィールド内に立ち入らず、外から干渉してはならない。この試合形式は子供たちの自由な成長とプレー体験に寄与するものである。全関係者がこの形式を尊重しなければならない。

この試合形式では審判は存在しない。子供たちが自主的に判断し、問題があれば自分たちで解決する。喧嘩が生じた場合は指導者が補助し、指導者の補助によって解決がなされない場合は指導者が裁定を下す。

指導者は試合同行者としてフィールド脇にいれば十分である。全ての指導者は子供たちの幸福と成長のために参加する。最大で参加チーム数と同数の引率者がグラウンド上に立つことができる。(3チームが参加する場合、3人の指導者/引率者)

フィールドの交代とタイミング:3vs3リーグのコンセプトは1つのマッチデーを60分で開催することである。タイトな試合スケジュールに加え、会場には多くのクラブがいるので、タイムスケジュールと休憩時間は守らなければならない。(飲み物は持ち運び、次の試合が行われるフィールド脇で休憩し、休憩中のミーティングは行わない。)

指導者はコーチングを控えるか最小限に抑える。子供に命令をして操縦するのではなく、試合では彼らが自らで決断を下し試合状況に応じた創造的な解決策を見つけられるよう、彼らに自由な裁量を与える。


ドイツサッカー協会が挙げる利点

以上のようなケルンなどドイツ各地で行われている試合方式に倣い、ドイツサッカー協会が2024年から公式に3vs3~5vs5の試合形式をU10以下の年代に採用すると発表しました。最後にドイツサッカー協会が挙げる新しい試合方式の利点をまとめました。

子供への利点

・ 全ての子供たちにほぼ均等なプレー時間

・ 個人の、またチームとしての成功体験

・ 過剰な負担、過少な負担の減少(大差のつく試合の減少)

・ ポジションの非固定化 → 成長の可能性を広げる

・ 外部からのプレッシャーなしでの成長

親への利点

・ 子供の十分なプレー時間

・ 試合や大会への柔軟な参加/不参加が可能

・ 子供たちの調和と幸福

指導者への利点

・ 少ない選手数での試合や大会に参加可能

・ どの子供もプレーが可能

・ レベルにより子供をチームから外す必要がない

・ メンバー選考による親との揉め事がなくなる

クラブへの利点

・ 多くのゲストチームの子供たちや親を迎え入れる
→ 飲食の販売でクラブの育成組織により多くの収入

・ 子供/親が友達に自分/子供の成功体験を語ることで、友達をサッカーに勧誘できることも


...以上の試合運営やルールをまとめたPDFファイルをシェアしておきます。何か質問がありましたら、Twitter(@cologne_note)の方にでもご連絡ください。


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