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私が補聴器ユーザーとなるまで。

今日、6月6日は補聴器の日だそうですね。
せっかくなので、私が補聴器を使い始めた経緯と感想を、つらつらと書いてみようと思います。
誰かの役に立ったら幸いです。

片耳聾と私

物心ついたときから、右耳は聴こえませんでした。
未熟児で産まれたので、もしかしたら生まれつきかもしれません。
幸いなことに、左耳はほぼ問題なく聴こえていたので、私はそれを「当たり前のこと」として育ちました。
今から思えば、右や後ろからの呼びかけに反応が鈍かったり、内緒話が苦手だったり、ステレオの"モノラル"や"サラウンド"の違いが分からなかったりとなんだかんだ不都合はあって、ごく一部の人以外にはひた隠しにしたりもしてました。
でも音楽を学べる程度には聴こえていたこと、あまり気にしないようのびのびと両親が育ててくれたこと、何より"進行性の病気ではない"と小さい頃に言われていたことで、右耳が聴こえないことはあまりハンデとは思わずにいられました。

二度の聴力低下と難聴

状況が大きく変わったのは今から4年ほど前でした。
それまでにも、離婚に伴って聴力が落ちたり、仕事中に強い眩暈で立っていられなくなることがあったりと予兆はあったのですが、4年前は世界から音が消えていく感覚でした。
仕事中、同僚の声が何を言っているのか分からない。
自分の足音も、車の音も、建物内で鳴っている音楽も、うっすらとしか聴こえない。
飼い猫の鳴き声も聴こえない。
…本当に、恐怖でした。
藁をもすがるように向かった総合病院でステロイドを処方され、幸運なことに一度は回復しました。
おそらく、聴力が低下して比較的すぐに病院にかかったのも功を奏したのでしょう。

ですが、それから約一年後に再発。
今度は、病院に行くまで時間が空いたことも手伝ってか、再度のステロイドも甲斐なく、軽度の感音難聴として症状が固定してしまいました。

私の聴こえと補聴器ユーザーとなるまで

おそらく、当時の私は、耳が聴こえなくなる恐怖や絶望感と共に、
「来るべきときがきた」
…と、覚悟のような、諦めのような感情があったのだと思います。
進行性でないと言われここまで片耳聾としてきたものの、どこかで、同年代よりはこの日が早く来る、と覚悟はしていたのです。
…こんなに早いとは予想外でしたが。
だから多分、ほんの少しだけ、冷静でいられたように思います。

そして、症状が固定された私は、どうしたら今の仕事が続けられるのか悩みました。
当時、耳元でかなり大きめな声で話してもらって、ようやく聞き取れるかどうかという状態でした。
好きな音楽も何の曲か分かりませんでしたし、当時存命だった飼い猫の鳴き声も、よほど大声でもなければその片鱗すら聴こえませんでした。
今の仕事は、大勢の人と、声を介してやり取りすることが多く、このままではとても続けられません。
そこで浮上したのが、補聴器という選択肢だったのでした。

医師に相談したところ、「すでに日常生活に影響が出ているのであれば」と補聴器外来と言語聴覚士の案内をしてもらいました。
そこで補聴器をレンタルして試しながら、私の補聴器生活はスタートしたのです。

補聴器生活になって

レンタルで補聴器生活を始めた当初は、言語聴覚士の先生からあらかじめ聞いていた通り、雑音に悩まされました。
髪の毛が擦れる音、紙のくしゃくしゃ音、フォークナイフのカチャカチャ音、シュレッダーの轟音…その度に身をすくませながらも、一日中つける訓練をする感じでした。

途中でイヤーモールドを作ってもらって雑音がほぼ収まると、途端に仕事上でのやり取りがかなり改善されました。
補聴器なしの状態ではほぼ人の声が聴き取れなかったのが、補聴器をつけると7〜8割は拾えるようになったのです。
本当に、光明が射したような気がしたものでした。

実際のところ、よく誤解をされますが、補聴器は万能の道具ではなくて、騒がしいところでの聴き取りが難しかったり、相手との距離や向きが重要だったり、複数人での会話は拾いにくかったりと、難聴になる前に出来ていたことがなかなか難しかったりもします。
ですが、補聴器を使い始めたおかげで今の仕事を続けられている、言わば恩人(?)です。
本当に大事な相棒だと思っています。

終わりに

補聴器によっては、音楽を聴くことも補助したり、様々な機能がついているものもあります。
私の使っているものも、スマホからの音をBluetoothで飛ばせるようになっており、どうしても電話をしなくてはならないときにとても助かります。
機器を揃えたら、パソコンからも音を飛ばせるようにも出来るのです。

何が言いたいかと言うと、聴力が低下したら、
可及的速やかに病院(耳鼻科)へ相談を!
そして選択肢として、補聴器を検討してみて欲しいです。
高価なものだけど、地域によって、また年齢や難聴の程度によっては助成が出るかもしれない。
諦めなくてよいことが、あるかもしれません。

今回綴ったのは、あくまでも私個人の体験談と感想です。
片耳聾とはいえ聴者であったこと、難聴でもがいていること、いつか来るかもしれない失聴への覚悟と恐怖と心の準備をしていること、どれも紛れもない私自身の一部です。
もしかしたら…の未来も少しだけ念頭に、これからも補聴器と二人三脚(?)で日々を過ごしていこうと思います。





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