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ミュージカルを見よう その②(「メリリー・ウィー・ロール・アロング」編)

こんにちは。

前回、「キャバレー」の観劇記を書きました。

その続きです。今回紹介するのはこちら。

「メリリー・ウィー・ロール・アロング」

メリリー・ウィー・ロール・アロング(2回目)

日本ではいまいちマイナーな感じもしますが、巨匠スティーブン・ソンドハイムの代表作で、本公演はあのダニエル・ラドクリフが出演することでも話題になりました。

・開演までのあれこれ

ブロードウェイでミュージカルを観るとき、たいてい私は当日~翌日券を割引で売ってる「tkts」という窓口を利用します。意外なほど良い席が3割引きとかで買えるのでオススメ。
で、今回もそこで「メリリー」の割引券を買おうと思ったら、当日分も翌日分も売ってなくて焦りました。人気作品だと割引チケットが出回らないんですよね。

上の電光掲示板にチケットリストが載ってます。タイムズスクエアにある方の窓口は翌日券売ってないので注意

別の転売サイトを見ても「メリリー」の売り出し自体が全然ないので、しょうがなく公式サイトから正規料金で購入。高めの席しか残ってなかったのもあるけど1人$650(10万円)しました。
何年か前にヒュー・ジャックマンとサットン・フォスターの「ミュージック・マン」を$800で観たことあったけど、今回のは日本円で見るとそれ以上のお値段。今年は為替が高くてやってられませんね。これ以降私はもう買い物のとき値札を見なくなります(見ても腹が立つだけなので)。

翌日、劇場で開演前の列に並んでいると、プラカードを持って何やら叫んでいる人が1人。アメリカのこういう都市部だと「昼ご飯のお金をください」って物乞いの人がいるのよね~と思ってたら、「チケットが余ってたらください」ということを言っていて、きみこのチケットいくらしたと思ってる という気持ちになりました。そのくらい人気の作品ということです。

・開演

この作品「メリリー・ウィー・ロール・アロング」は、主人公がビジネスで成功していくのと裏腹に、そのかつての親友2人との友情がいかにして破綻していったか…というのを、時系列をさかのぼる形で描写していくという、少し工夫した作品です。「キャバレー」の観劇記でも言及したように、こういう作品は演出が気になるところ。
例えば同じソンドハイム作品の「カンパニー」も時間ループ的な要素があるけど、最近のリメイクでは、ボックスみたいなセットが複数組み合わさっていて、それを主人公だけが行き来することで「別の時間」みたいなものを表現していましたよね。

本公演がどうだったかというと、ウェルメイド~~~~って感じです。最低限の、しかし簡素ではないステージ構成。1シーン内でのセットの展開もほとんど無く、音楽も少人数で派手すぎない鳴らし方で、ケレン味は無いんだけど居心地の良い舞台進行になっていました。よくイギリス演劇とかを表現する言葉で「抑制の利いた」という措辞がありますが、まさに本作は抑制が利いてるな~と思います。

開演前に撮ったステージ。このくらいの「描き込まれ感」がちょうどいい

演技面でも、特に主演のジョナサン・グロフは控えめな演技を意識しているように感じました。前日観たのがゴテゴテの「キャバレー」だったからその落差で余計そう見えたのかもしれないけど。

全体的に、「メリリー」はそもそも作品としての構成がずるいですよね。バラバラになった状態から始まって、みんな仲良かった頃の在りし日の思い出で締められたら、「もう戻らないあの美しい日々…」みたいになってそらエモいに決まってます。
また、主人公の機会主義的というか独善的なやり方が嫌でダニエル・ラドクリフが離れていったんだ、という風に物語当初は描かれるんだけど、話が進んでいくといやダニエル・ラドクリフのやり方もうまくいかないよ、と察せられていくというストーリーテリングも好きです。それじゃあ俺はどうすればよかったって言うんだ、というような…

君ならどうする?

でも主人公の不倫で結婚生活破綻したくだりは、普通に不倫しないほうがいいと思った。

・総評

派手さは無いけどしみじみ良いなあ~という作品。これを成立させるには、くたびれた40代の姿から希望に満ちていた20代の姿まで、登場人物のあらゆる時代の姿を全てしっかり演じないといけないわけで、役者陣の演技の確かさが裏側にあったと思います。
その意味でもダニエル・ラドクリフは良いキャスティングだった。現在の姿に「ハリー・ポッター」のあの頃の姿が重なってくるから。


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