湖面月華とほうき星



「花の魔法使い?」

「まだ、見習いの称号しか持ってないんですけどね」

森の奥、小さな湖のほとりで、二人の少女は水面の月を眺めながらぽつぽつと話していた。
彼女達の周りには不自然なほど花が咲き、注意して見てみれば雑多な植物が今もなお二人を囲うように生えてきているのがわかる。

「綺麗だね」

一人がその内の一輪に手を伸ばし、優しくなでながらそう言うと、もう一人は表情を曇らせた。

「私には、なんだか、不気味に思えます」

「ユメコの魔法なのに?」

「こんなのは魔力暴走の結果であって、魔法じゃないです。……それに、これが原因で私は」

ユメコ、と呼ばれた少女は夜色の髪を触ると、もうしばらく会っていない両親のことを想った。

自分の事は忘れてしまっただろうか?

いや、それとも――そんなユメコの夢想を破るように、もう一人はいたずらっ子がそうするようにはにかんだ。

「お師匠さんと会えたんでしょ?」

それがあまりに当然のように響いて、ユメコもまたつられて微笑む。

「そうですね」

肌に吹きつく夜風は冷たかったけれど、それはむしろ二人にとって心地好いものだった。

#リプ来たうちの子とよその子で今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一シーンを書く

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