月下美人

「寂しく、ないの?」

「あら、どうしてかしら」

ほたるは言いにくそうに俯いて、それでも確かに言葉を紡ぐ。

「ここはまるで闇の底みたい。こうして立っているだけで、おいてけぼりにされたような気分になるんだ」

彼女の世界は、誰もいない夜の街。
誰かがふらりと訪れることこそあれ、自ら賑わうことは決してない。
それは永遠にも思える夢の中のようで、その実それそのものだったから。

「ねえ、あなた」

豊かな黒髪が闇の中でなお艶めく。
月下さんが悪戯っぽい微笑みを浮かべると、右目の月が蠱惑的にきらめいた。

「今宵は満月よ」

#リプ来たうちの子とよその子で今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一シーンを書く

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