コロナ禍からハイフレックスモデルへ

先週、一部の都道府県を除き社会的自粛が緩和されました。また、府県も緩和の方向にあるようです。私は東京に住んでいて所属先も東京なので、今しばらくはオンラインでの授業が続きそうですが、自粛が緩和された地域では、オンライン授業から通常の教室授業へいつ戻るのか・・・というのが気になります。

先週、桐蔭学園主催のオンラインイベントに参加した折、「ハイフレックスモデル(HyFlex model)」なる言葉を知りました。ハイフレックスモデルとは、対面とオンラインのハイブリット型の教育を柔軟に設計するコース設計モデルで、2010年にはすでにこの言葉はあったようです。しかし、この新型コロナの影響で、社会的自粛が緩和されても、国と国との移動規制はまだ続いていますし、秋以降も対面での授業が行えるか不透明です。そのため、アメリカでは、ハイフレックスモデルの可能性について議論が始まっているということでした。

ハイフレックスモデルの魅力は柔軟性、様々な組み合わせが考えられることです。例えば、同じ科目の中で、オンラインで学ぶ学生と対面で学ぶ学生という2つの方法が同時に走っている。もしくは、曜日や日によって、教室に集まる日とオンラインで学ぶ日に分けるなど、クラスサイズ、学びの目的などで、柔軟に組み合わせることができる。それが、これまでのハイブリット型の授業との違いということみたいです。

しかしこれは、裏返してみると、社会的距離を保ちながら、いかに学びを続けるかという消極的姿勢も見受けられるんじゃないかと思いました。

ちなみに、ハイフレックスモデルでは、教室環境を作ることが大事なようです。私が読んだ記事では、より良いハイフレックスのための教室では、

教室にモニターを設置して、教師が離れた場所からライブで授業に参加している学生を見たり、声をかけたりできるようにする
・もっとも良いのは、一部の学校で設置されているリアル・プレゼンス・エクスペリエンス(RPX)ルームで、特別に設計された教室の大画面に、離れた場所にいる学生が等身大で映し出される

と、このような物理的な教室デザインが必要なようです。

2つ目のRPXルームを作るのはかなり難しいですが、少なくとも、対面の教室とオンライン上両方に学生がいる場合、PCより大きい、プロジェクターやモニターを準備して、遠隔地にいる学生を映し出す必要があると思います。これは、以前私が自分の研究でインタビューをした先生がまさにこの状態で授業をしていて、PCだけだとどうしても遠隔地にいる学生に意識が及ばず、教室にいる学生に向かって授業をしてしまうということを話されていたからです。

ハイフレックスモデルは、学びたいけれどその場にいることができない学生にとっては、学びを続けられるいい方法だと思います。しかし、教師の注意が遠隔地にいる学生にまで届かず、教室にいる学生に向いてしまうと、遠隔地にいる学生は傍観者的になってしまう時間が長くなります。そうなると、中には精神的に学びを続けられなくなる学生も出てきそうです。なので、物理的に学生を出来るだけ大写しにして教師の視界に常に入るようにして、教師、そして教室にいる学生も遠隔地の学生を意識できる仕組みが大事になるんじゃないかなと思いました。

今回、短期間でもオンライン授業をした教育機関は、秋以降ハイフレックスモデルでの授業を行う下地はすでにバッチリできていると思います。ですから、次にまた社会的自粛になった場合、より適切に対応できると思います。

また、日本語学校などの場合、今回の経験を生かして、完全オンラインコース(日本に留学しなくてもいい)や、ハイフレックスのコースを提供するなど、新たなビジネスモデルを考えるのもありなんじゃないでしょうか。

個人的には、今回オンライン化を経験しなかった機関が、「あの時うちもオンラインにしておけばよかった…」と思うような教育マインドのイノベーションが少しでも芽吹けばいいなと思っています。



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