見出し画像

【プロ野球】千葉ロッテマリーンズはなぜ鳥谷敬を獲得したのか

こんにちは。

2020年3月10日。前阪神タイガースの鳥谷敬選手の千葉ロッテマリーンズへの入団が決定した。

正直言って今は驚きでいっぱいだ。

あの鳥谷がロッテに来るなんて。

阪神タイガース一筋16年の大ベテランであり、2000本安打・1000四球を樹立した名選手だ。しかし、近年は若手の台頭や自身の衰えもあり出場機会が減少してきた。4億円(推定)の年俸もあって阪神は鳥谷をリリースした形となった。

今回は、ロッテの現有戦力と現在の鳥谷選手の状況を確認しつつ、なぜロッテが鳥谷選手を獲得したか語っていく。


※各選手データは1.02 - Essence of Baseball様、データで楽しむプロ野球様から引用しております。また、予めDELTA社からデータの引用許可を得ております。


鳥谷敬選手の現状

まず現在の鳥谷選手について振り返っておきたい。

2019年の鳥谷敬選手の成績は以下の通りになる。

74試合 .207 0本 4打点 出塁率.298 長打率.286 OPS.556
SS 86回 UZR1200:-15.2(失策回避-0.2 併殺完成0.4 範囲-1.3)

出場試合数・打率・打点・本塁打・OPSなど多くの数字がキャリアワーストに終わった。また、復活を期した守備面でも低調な数字が並んだ。

このような不振に陥った理由は2つ考えられる。

1つ目は以前より強い打球を飛ばせなくなっていることだ。具体的には、ISO(長打率-打率)・LD率(ラインドライブ率。ライナーの打球の割合)、Hard率(速度の速い打球の割合)が年々悪化している。

    ISO  LD%  Hard%
2014  .102    11.4%  36.5%
2015  .085    10.5%     35.8%
2016     .087      9.1%        29.6%
2017     .084    10.5%     34.7%
2018  .064    9.1%     29.9%
2019  .054      5.3%   19.7%
(1.02 - Essence of Baseballから引用)

こうして見ると、2019シーズンは打球速度や長打に関わる指標がかなり悪化しているシーズンといえる。ボールを飛ばせなくなってきている傾向が見て取れる。強い打球を飛ばせないと、当然野手に取られてアウトになる可能性も上がることになる。

2つ目は選球眼が悪化しつつあることだ。2019シーズンはここ数年でBB率(打席における四球割合)とK率(打席における三振割合)もワーストのシーズンとなった。

     BB率   K率
2014   13.5%  12.4%
2015   13.8%   13.8%
2016   14.1%      15.0%
2017   13.5%      10.9%
2018      13.0%      14.2%
2019   11.4%    15.2%
(1.02 - Essence of Baseballから引用)

ここ2年間で四球の割合が減少し三振の割合が増加しているのが見て取れるはずだ。

打撃成績に直結する三振率・長打率・四球率がすべて悪化していることから、2019年の鳥谷敬選手は打撃面でかなりの衰えを見せたことがいえる。UZRの数値も不調で守備面での貢献も乏しいことから、阪神は放出に踏み切ったと考えられる。


ロッテが鳥谷敬選手を獲得した理由

①2塁・3塁・遊撃のバックアップ要因

現状のロッテ内野陣を図表にしてみた。(緑は移籍選手、青は新入団選手)

2020ロッテ内野

2019シーズン、1B,2B,3Bのバックアップ要因をすべてこなしたのが鈴木大地選手だったが、彼は楽天にFA移籍した。

他に内野の複数ポジションをこなした選手では三木亮選手が挙げられる。しかし、彼も打撃守備の両面で控えレベルにとどまっているのが現状だ。

89試合 .214 2本 15打点 出塁率.270 長打率.286 OPS.556
2B    35回   UZR1200:-42.9(失策回避-0.6 併殺完成-0.2 範囲-0.5)
3B   34 2/3回   UZR1200:-8.4(失策回避0.3 併殺完成-0.4 範囲-0.1)
SS 324 2/3回   UZR1200:-10.0(失策回避0.5 併殺完成-0.9 範囲-2.3)
(1.02 - Essence of Baseballから引用)

また彼以外の控え内野手はいずれも昨年度の守備イニング数が2桁に満たない選手ばかり。実績があり、ある程度計算が立つ内野手が不在の状況だった。

その点、鳥谷選手は2017年~2018年で3Bを合計1425 2/3イニング、2Bを125 2/3イニング守っている。UZRベースで少なくないマイナスを計上しているのは気がかりだが、1軍最低限レベルでも2B,3B,SSの穴を埋めてくれる選手はロッテにとって必要なはずだ。

昨季のOPSでは鳥谷選手と三木選手は非常に近いことから、ロッテは三木亮選手と同水準の選手をもう1人獲得したともいえるだろう。内野の層が決して厚くないロッテには貴重な選手といえる。


②遊撃手候補のケガ人の多さ

上記の内野手事情に加え、ショートを守れる選手でケガ人が多発していることも鳥谷選手獲得への追い風となった。

2020/3/10現在、平沢大河選手三木亮選手がケガを抱えていることが報道されている。平沢選手は右ひじ痛、三木選手は右ひざの手術明けでいずれも本調子ではない。

こうなると遊撃レギュラーの藤岡裕大選手をバックアップできる遊撃手がいなくなってしまう。現状はルーキーの福田光輝選手が好調なものの、福田光選手以外に1人でも多く1軍レベルの遊撃手が必要になってくる。

そこで鳥谷選手だ。守備力が衰えているとはいえ、遊撃を長年守り続けてきた選手ならば一定の計算は立つ。上記のユーティリティ性も含め、1軍に置いておいて損はない選手のはずだ。


③左の代打要因

昨シーズン、ロッテで最も多く代打に立った左打者は香月一也選手(19打数)。しかし、代打打率は.158と低調に終わっている。

一方の鳥谷選手は代打で.250(56-14)の打率を残している。右の清田選手と並んで左の代打要因としても一定の活躍が期待できるだろう。

また、衰えつつあるとはいえ、鳥谷選手の持ち味である選球眼はまだまだ高い水準を保っている。昨季のO-Swing%(ボールゾーンスイング率)とBB%(打席における四球割合)を見てみる。

        鳥谷選手  セ・リーグ平均 パ・リーグ平均
BB%      11.4%     8.6%       8.9%
O-Swing%     18.3%       28.5%      27.2%
(1.02 - Essence of Baseballから引用)

このように選球眼に直結する指標で、まだまだ鳥谷選手はリーグ平均を上回る数値を叩き出している。代打でのチャンスメーカーとしても機能してくれるはずだ。

なお、昨シーズン散々指摘された得点圏での弱さだが、得点圏打率は年ごとの再現性が低い指標と考えられている。つまり。昨年チャンスに弱かったからといって今年もチャンスに弱いとは限らない。昨年が悪すぎただけと考えるのがよいだろう。


④若手選手へのコーチ役

おそらく鳥谷選手を獲得した理由の半分はここにあるはずだ。

鳥谷選手は阪神時代から屈指の練習の虫・ストイックな選手として知られている。多くの阪神OBやマスコミから、鳥谷選手の練習量・練習に対する意識の高さ・球場入りの早さは指摘されてきた。それだけ野球に対して真摯に取り組む選手ということだ。

伸び悩む若手選手にとっては、大ベテランの域に入ってなお誰よりも練習するレジェンドの姿は大いに刺激になるのではないか。特に、定位置争いが繰り広げられている遊撃候補の選手にとっては、鳥谷選手はライバルであると同時に生きた手本になるはずだ。

かつて巨人の坂本勇人選手が守備で伸び悩んでいた時に、井端弘和選手が加入した時のように。彼から守備のイロハを学んだ坂本選手は、井端選手加入後の2014年から守備面でも評価されるようになった。

そのような若手の刺激役として、実績もあり練習熱心な鳥谷選手は大いに期待できる選手だ。


最後に

いかがだっただろうか?

同じように阪神から移籍したレジェンド選手の今岡誠選手が入団した2010年、ロッテは日本一になった。

あの時からちょうど10年。奇しくも2020年は5の倍数の年。ロッテファンの間で”ゴールデンイヤー”と呼ばれる年だ。

優勝して日本一になるための最後のピース、それが鳥谷敬選手なのかもしれない。

どんな形であろうと、鳥谷選手の雄姿をこの目で見てみたいと強く思っている。


…………

最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?