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DeFi on Bitcoinエコシステムの現状と展望

※本記事は、CoinGecko Buzzにて公開された「Dive into the Bitcoin DeFi Ecosystem」の日本語翻訳版です。

はじめに

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ビットコインは全てのブロックチェーンの祖であり、「ピュアなP2Pの電子キャッシュ(金融機関を通さずに当事者間で直接オンライン決済ができるようになる)」として構築されました。これまでのところ、ビットコインは確かなセキュリティがあることが証明されており、Lightning Networkの導入により、マイクロトランザクションも実行可能になり始めている。

しかし、決済はあくまで出発点であり、他にも包括すべき分野が多く残されている。スマートコントラクト、特にイーサリアムの登場により、全く新しい分散型金融(DeFi)の世界が構築・展開され、クリプト・ユーザーはビットコインでの支払いと似たように、パーミッションレスかつトラストレスに、オンチェーン上で複数の異なる金融サービスにアクセスできるようになりました。

DeFiの開発に関しては他のチェーンがリードしているかもしれませんが、Bitcoinコミュニティもその栄光に安住することなく、ブロックチェーン上にDeFi dAppsを実装することに邁進してきました。私たちは、この芽生えつつあるエコシステムを深掘りし、その重要なポイントをいくつかご紹介します。

1. ビットコインDeFiの実装:サイドチェーン/レイヤー2

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ビットコインのブロックチェーンは、ローンチ当初からP2P決済のために構築されており、それ以外の用途はあまりありません。ビットコインの初期の開発は、チェーンがより安定・安全を最優先し、いかにユーザーベースの増加に合わせてネットワークを拡大できるかに集中していました(ブロックサイズ戦争を覚えている人はいますか?) 。つまり、ビットコインのブロックチェーンそのものは、スマートコントラクトやdAppsのプラットフォームとして想定されていなかったのです。2021年後半に導入されるTaprootアップグレードの実装で少し風向きが変わる可能性はありますが、今のところ、ビットコインブロックチェーンのスマートコントラクト機能は、サイドチェーン/レイヤー2ソリューション経由で提供されなければなりません。

上の図から、各ビットコインのサイドチェーン/レイヤー2がわずかに異なる技術的な実装を選択していることがわかると思います。それぞれに長所と短所があり、完璧なソリューションは存在しません。注目すべきは、Liquid NetworkとLightning NetworkもBitcoinの初期のスケーリングソリューションであり、おそらく残りの3つ(RSK、DeFiChain、Stacks)と比べてそれほど豊かなプログラマビリティを提供していないことです。それにもかかわらず、人々は試みることを止めませんでした。

2. 主要DeFiカテゴリに集中した発展

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現在稼働中のプロジェクトを見るに、ビットコインのDeFiエコシステムはまだ初期段階にあると言えるでしょう。DEX、ステーブルコイン、レンディングプロトコル、オラクルは、他のDeFiプリミティブを構築するための基礎となるため、あらゆるDeFiエコシステムの出発点です。例えば、DEXやレンディング・プロトコルがなければ、イールドアグリゲーターは必要ありませんし、レンディング・プロトコルで清算の可能性がなければ、保険も必要ありません。

まだギャップはありますが、エコシステムはデリバティブなど、より高度なDeFiの分野へと広がり始めています。批判的な人々は、これらはすべて以前に行われたと言いますが、ビットコインのエコシステムは、他のチェーンで何がうまくいき、何がうまくいかなかったかという教訓を実際に取り入れることができるのです。また、DeFiプロトコルのためのトークノミクスの設計はまだ発展途上の分野であり、ロードマップはやや不完全であっても問題ありません。大事なのは、ビットコインが当初から掲げる堅実・安全でといった信条であり、健全で詐欺的でないDeFiプロジェクトがあれば、そのエコシステムに対するユーザーの信頼は高まるでしょう。

最後に、私たちがDeFiエコシステムに注目している間にも、ビットコインのサイドチェーンやレイヤー2に展開されているクールで興味深いプロジェクトがあることを指摘することは重要でしょう。City Coin、Bitcoin NFT、Cross Chain Bridgeなどのプロジェクトも同様にエキサイティングで、ビットコインのエコシステム全体をさらに豊かにする役割を担っています。

3. TVLは3倍近く上昇

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ビットコインDeFiエコシステムは、2022年2月中旬時点で、dAppsなどにロックされたアセットの総価値(≒TVL)が11億5000万ドルに達しました。TVLはDeFiエコシステムの規模を示す完璧な指標ではないかもしれませんが、そのユーザーからの全体的な関心とコミットメントを示す大まかな指標にはなります。 これはまだDeFi全体のパイから見れば非常に小さな規模ですが(2021年末に記録されたDeFi TVL総額は2340億ドル)、それでも2021年1月に開始した時点からほぼ3倍の増加となっています。

様々なサイドチェーン/レイヤー2実装の中で、DeFiChainはそのDEXとレンディングプロトコルを軸にTVLで全体の77%のシェアを持つため、Bitcoin DeFiを牽引する存在となっています。Stacksは2021年にローンチしたばかりですが、そのTVLはより長い歴史を持つRSKにすぐに追いつきました。

異なるDeFiカテゴリのうち、DEX(DeFiChain DEX、Stackswap、Sovryn)は依然として全チェーンで最も多くのTVLを保持しています。

4. Ethereum DeFiとの圧倒的な差

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Bitcoin DeFiの開発者にとって歯がゆいのは、Ethereum上のBTC量がBitcoin DeFiのそれより遥かに多いことです。Ethereum DeFiにロックされているBTCは、Bitcoin DeFiの10倍以上あります。具体的には、Ethereum DeFiにロックされたBTCのほとんどは、Maker、Aave、Compound、Curveなどのレンディングプロトコルの担保として使用されており、BTC保有者の追加リターンを提供しています。

BTCのEthereumへのラッピングまたはブリッジングは、Wrapped BTC(wBTC)によって初めて可能になりました。当初の目的は、ERC20トークンしかサポートしていなかったEthereum上のDEXにBTCの流動性をもたらすことです。その構造は、中央集権的なステーブルコインと同じで、カストディアン(wBTCの場合BitGo)が実際のBTCを保有し、それに対応したERC20のwBTCを発行する形です。renBTCのような分散型ブリッジを目指すERC20 BTCも存在しますが、現在wBTCはEthereum上の全BTCの80%を占めている。

イーサリアムにBTCをブリッジすることで、ビットコインにリッチなDeFi機能もたらすことが可能となりましたが、少なくとも現在の実装では、ブリッジアセットには独自のセキュリティリスクが残っています。こうした別チェーンは、、ビットコイン・チェーンとエコシステムからBTCの価値を奪っていると捉えることもできます。そのため、Bitcoin DeFiプロジェクトがいかに着実に開発・拡大を続け、ビットコイン・ネイティブなDeFiにBTCシェアを取り戻すことができるかが注目されます。

5. ビットコインDeFi に楽観的な理由

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個人的には、Bitcoin DeFiのエコシステムの可能性を慎重に楽観視しています。ビットコインに対する見解に関わらず、リテールや機関投資家に関わらず、クリプトの世界に足を踏み入れようとする初心者ユーザーにとって、ビットコインは依然として最初の選択肢であることに変わりはないのです。このため、ビットコイン用のウォレットやフィアット・オンランプを構築するプロジェクトが数多く存在します。新規ユーザーを獲得することは重要ですが、同様にDeFiは、HODLや支払い手段だけでなく、新しく購入したBTCで何ができるかを示すショーケースとなる可能性があります。また、機関投資家にとっても、ダウンサイドリスクをヘッジしたり、より多くの利回りへのアクセスを提供するなど、潜在的に様々な機会があります。

これまで以上に多くの資金と人材がクリプト業界に流れ込んできており、DeFiプロトコルをテスト・構築する絶好の機会が到来していまsy。ビットコインのエコシステムは必ずしもDeFiイノベーションの最前線や最先端ではないかもしれませんが、健全で安全を重要視するその信条と確かな信頼性は、他のチェーンに対して優位性となるでしょう。

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執筆者:CoinGeckoリサーチヘッド Zhong Yang Chan

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