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[メタバース入門] Decentralandの始め方とその考察

本記事は、CoinGeckoが公開した「How to Get Started With Decentraland & Gameplay Review」の日本語翻訳版です。

はじめに

2021年10月に開催されるMeta(旧Facebook社)の最新のメタバース展示会が話題になっていますが、今はEthereumを利用した分散型の3D仮想現実の世界であるDecentralandを紹介する絶好の機会だと言えるでしょう。Decentralandは、HabboやSecond Lifeのように、プレイヤーが自信のアバターを使ってオープンワールドを探索し、遊ぶことができる空間です。従来のオープンワールドとは異なり、Decentralandは分散的な世界であるため、仮想空間内におけるプレイヤーの自由度は極めて高く、無限大の開拓余地が残されています。しかし、Decentralandは昔からこうだったわけではなく、プロジェクト開始時のクオリティは非常に地味なものでした。

Decentralandの地味な始まり

Decentralandは当初、中央集権的なVRゲームに「反撃」するために、志を同じくする複数のメンバーによって2015年に作られました。開発者が「石器時代」と呼ぶ初期のDecentralandは極めて簡素で、2次元のピクセルグリッドの形でモデル化されており、ピクセルはコンセンサスアルゴリズムPoWを用いてユーザーに配分されていました。

2016年末には、Decentralandは土地が異なるプロットに分割された3Dの世界に変わりました。各区画には、その区画に表示されるべきアセットを含む特定のファイルへのハッシュ証明が関連付けられていました。ユーザーは、分散型ハッシュテーブルを使って仮想世界を移動し、特定の場所のファイルとアセットをダウンロードすることができました。

2017年初頭、Decentralandは最初のベータ版を開始し、土地の区画が20ドルという低価格で販売されました。それらの小さな区画のゲーム内の土地が、今では簡単に数千ドルで売れるようになりました。実際、この1カ月間には、116の小さな土地区画からなるバーチャル不動産が、流通市場で240万ドル以上の値をつけています。

売却された資産の日次平均価格(単位:米ドル)

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出典: nonfungible.com

Ethereumが人気を博し多くのユーザーを惹きつけている中、Decentralandはスマートコントラクトを利用する形で、徐々にEthereumエコシステムのなかに組み込まれていきました。これにより、メタバース内でのインタラクティブなアプリケーション、インワールド決済、およびP2Pコミュニケーションが可能になりました。今日、プレイヤーは、デジタル資産の取引、友人との交流、VR会議の開催など、拡大を続けるデジタルワールドを探索することができます。

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Decentralandとは?

Decentralandはその名の通り、「Decentralized Land」の略で、コミュニティによってコントロールされた、完全没入型のデジタル世界です。Decentralandの世界は、ブロックチェーン上でNFT(Non-fungible Tokens)として表現される多くのデジタルランド区画から構成されています。土地の所有者は、自分の土地の範囲内であれば、自由に創作活動を行い、その作品を誰もが見れる形で展示することができます。

土地の区画は、OpenSeaなどのセカンダリーマーケットプレイスから、さまざまなトークンを使って購入することができます。ただし、区画の大きさや特定の公共エリアへの近さ次第で、コストは高くなる傾向にあります。

狭さを問題に感じた場合は、隣接する区画を使って土地を拡大することができます。これにより、土地の管理や開発が容易になり、通常の土地では収まりきらない構造物を建てることが可能です。団地は、ERC-721 NFTで表現され、その中に土地区画のデータが含まれています。

Decentralandの経済は、ネイティブトークンであるMANAによって大きく支えられています。MANAは、仮想エコシステム内の土地区画、ウェアラブル、その他のサービスの購入に使用できます。また、トークンの保有者は、コミュニティ内で改善提案を作成したり、投票したりすることで、ガバナンスに参加する権利を有しています。MANAトークンは、BinanceUniswapなど、ほとんどの集権/分散型取引所で入手できます。Decentralandの成功と資産価値の高騰により、MANAトークンの価格も過去1年間で5倍以上に上昇しています。

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土地の所有は、Decentralandで行える体験の半分を占めるに過ぎません。残りの半分は、素晴らしい構造物や作品を作って展示したり、Decentralandのメタバース全体を探索したりすることです。アバターとは、ユーザーがDecentralandの中で仮想の人格を持ち、メタバースを探索したり、他の人と交流したりするための3次元キャラクターです。

アバターは好きなだけ作ることができ、自分の特徴的な外見にカスタマイズしたり、何百種類もの衣装から選ぶことができます。現実の世界とは異なり、髪型や顔の特徴を即座に変更することもできます。

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無料の衣装が気に入らない場合は、DecentralandのプレミアムNFTウェアラブルをプレセールやセカンダリーマーケットでMANAを使って購入することができます。ウェアラブルには、UncommonからMythicまでの様々なレアリティがあります。レアリティが高ければ高いほど、そのアイテムの供給量は少なくなります。

ブランドやコンテンツ制作者は、特別なコンテストやイベントのために限定ウェアラブルを作成することもできます。これらのウェアラブルはデフォルトでPolygonのブロックチェーン上で発行されるため、ユーザーは高額なガス料金を支払うことなく取引を行うことができます。MetaMask Beanie や当社独自のGecko Hatなどのレアアイテムは、セカンダリーマーケットで手に入れることができます。

Decentralandのプレイしてみよう

さて、ここまでDecentralandの概要について紹介してきましたが、実際にプレイするにはどうすればいいのでしょうか。必要なのはウェブブラウザだけで、そこからは2つの方法があります。MetaMaskなどのウォレットを使用する方法と、一部の機能が利用できなくなりますがゲストとしてサインインする方法です。

全ての機能を満喫するために、MetaMaskなどのデジタルウォレットを使用することをお勧めします。デジタルウォレットを持つことで、秘密鍵とシードフレーズを大切に管理していれば、ゲーム資産やインワールドでの進捗データを安全に保存・移転することができます。

ここでは、デジタルウォレットを使ってDecentralandに入るためのステップバイステップガイドをご紹介しますので、以下を読み進めつつ、ぜひメタバースに飛び込んでみてください。

ステップ1: ウェブブラウザを開き、https://play.decentraland.org/ に向かいます。

左のオプションをクリックして、ウォレットを使ってプレイします。

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ステップ2: 接続するウォレットの選択

クリックすると、接続するウォレットの種類を選択するプロンプトが表示されます。MetaMask、Fortmatic、またはWalletConnectから選択できます。この例では、MetaMaskを使用します。

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ステップ3:Decentralandへのログイン

MetaMaskウォレットを接続すると、ログインするための署名要求が表示されます。署名すると、Genesis Plazaのアバターに移動します。初めてのログインの場合は、アバターをカスタマイズするためのメニュー画面が表示されます。

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Step 4: アバターのカスタマイズ

アバター選択画面では、「ボディ」「ヘッド」「トップ」「ボトム」「シューズ」「アクセサリー」「コレクターズアイテム」など、さまざまな方法でカスタマイズして、自分だけのオリジナルアバターを作ることができます。

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ステップ5: アバターに名前をつける

完了したら、新しいアバターに名前を付けてください。オプションとして、Decentralandのニュースレターを購読するかどうかを選択することができます。

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Step 6: これで、Decentralandの世界を探索する準備が整いました。

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Decentralandを探索する

Decentralandのゲームプレイは、HabboやSecond Lifeといった初期の仮想コミュニティスペースを彷彿とさせます。Decentralandに入ると、プレイヤーのアバターはGenesis Plazaに配置され、ここはプレイヤーにとって「ホテルのロビー」のようなものです。ここでは、様々なイベントやゲーム、Decentraland内のトレンドの場所などをチェックすることができます。ここでは、新しいプレイヤーが最初に到着することが多いので、多くの新しいプレイヤーと出会い、おしゃべりを楽しむことができます。

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ゲーマーもそうでない人も、簡単に操作できるようになっています。ナビゲーショナルコントロールはファーストパーソンシューター(FPS)のように操作でき、カーソルを動かすとカメラアングルが変わります。また、「V」キーを押すと、一人称視点と三人称視点を切り替えることができます。Decentralandでは、プレイヤーが特定のアクションを行う際に押すべきキーを示すことで、視覚的な補助を行っています。例えば、イベントのリストをスクロールするには「E」と「F」のキーが必要だと表示されます。これは、メタバースを初めてプレイする人にとっては、間違いなく助けになる親切な演出です。

仮想空間を端から端まで移動するのが面倒な場合は、マップ上の星マークのある場所にジャンプすることができます。これらの場所はDecentralandのポイントであり、美しい風景やインタラクティブなイベントで満たされていることが多いので、訪れる価値があります。もしかしたら、ここでしか手に入らないウェアラブルやNFTが手に入るかもしれません。

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もしあなたが土地を持っているなら、より多くの訪問者を惹きつけるために、構造物やシーンを作ってみるのもいいでしょう。Decentralandでは、ビルダーツールを使って建築する方法と、ソフトウェア開発キット(SDK)を使って建築する方法の2種類があります。コーディングのスキルや経験がほとんどないプレイヤーにとっては、あらかじめ用意された様々な3Dアセットをドラッグ&ドロップするだけで、理想のシーンを作ることができる「ビルダーツール」がおすすめです。

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技術仕様

技術的には、このゲームは現在、PCまたはMac上でのみ動作し、モバイル機器ではまだ利用できません。ブラウザベースのアプリケーションとはいえ、ゲームをスムーズに動作させるためには、それなりの機材が必要となります。公式な推奨スペックはありませんが、Decentralandを満喫するためには、以下のスペックが最低限必要となります。ただし、レンダリングスケールやアンチエイリアシングなど、さまざまなグラフィック設定を調整することで、ゲーム体験を最適化することができます。

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試しに、2台の異なるデバイスでDecentralandをプレイし、様々な機能を使ってみました。どちらもWindows 10を搭載したノートPCですが、以下のようにハードウェアのセットが異なります。

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中程度のグラフィックス品質をベンチマークとして用いた場合、デバイス1はDecentralandのGenesis Plazaで30フレーム/秒(FPS)を安定して維持するのに苦労しました。これは、グラフィックカードの性能が極めて低く、規定の要件を大幅に下回っていることからだと予想できます。

一方、デバイス2はDecentralandで60FPSという健全な数値を維持しました。しかし、Kraken本社があるようなきめ細かい作りが施された空間では、やや画面表示に重さが生じました。このように、よりスムーズにゲームを楽しむためには、より高性能なデバイスが必要となります。

DecentralandはMetaverseを支配するか?

多くの人が思い描く完璧なメタバースには程遠いものの、Decentralandチームは前進しており、ロードマップに基づいて着実に開発を進めていることがわかります。近々、まずプレイヤーの生活の質を高めるためのアップデートを優先的に行う予定のようです。これらの改善には、NFTバッジ、建物のグループ化機能の追加、そしてブロックチェーンベースのスマートアイテムを直接追加するオプションが含まれます。つまり、実際のブロックチェーン上のスマートコントラクトとの対話を、ゲーム内のオブジェクトとの対話に置き換えるということです。例えば、「Sushiswap」は仮想の寿司屋として表現され、異なる寿司のピースと対話することで資産を交換することができます。

Decentralandでは、インワールドでのアイテム取引や、より優れたマルチプレイヤーのサポートも間もなく開始されます。さらに、モバイルアプリも開発中で、プレイヤーはDecentralandでのライブイベントの通知を受け取ったり、どこにいてもバーチャルな友達とチャットしたりすることができます。

しかし、プレイヤーが探検できるメタバースはDecentralandだけではありません。「Roblox」や「Minecraft」などのゲームは、仮想空間での交流の分野ですでに主要なプレイヤーとしての地位を確立しています。より分散化されたエコシステムでプレイしたり構築したりできるという理由だけで、大多数のゲーマーがDecentralandに突然移行するという現象は起こりそうにありません。

従来のゲーム会社は、何十年にもわたって既存の方式を改良し、重要なパートナーシップを結んで大衆を自分たちの世界に引き込んできました。また、MicrosoftやMetaなどの企業がすでに進出しているため、分散型メタバースが真の意味でトップに立つためには、Play to Earn機能など、よりユニークなセールスポイントを組み込む必要があります。

そして、分散型メタバースの分野内でも競争は激化し始めています。「The Sandbox」や「Somnium Space」のようなオルタナティブデジタルワールドも人気を集めており、それぞれに特徴があります。例えば、「The Sandbox」では、ユーザーがオリジナルのNFTやゲームを作成し、マーケットプレイスで販売するなど、コミュニティが作成するコンテンツに力を入れています。AtariやSkybound Entertainmentなどの大手企業とのコラボレーションも実現しています。

一方、Decentralandは独自にいくつかの重要なマイルストーンも達成している。2021年6月、サザビーズはロンドンのギャラリーのバーチャルレプリカを彼らのプラットフォームで公開しました。さらに最近では、バルバドスがDecentralandに世界初のメタバース大使館を設立しました。より多くの伝統的な機関がパートナーと協力することで、これらのプロジェクトは、クリプトネイティブではない人々を惹きつけようと尽力しています。そうすることで、メタバースは単なる仮想の遊び場ではなく、社会的交流の新しいパラダイムであるという認識を変えようとしているのです。

さいごに

世界がより多くのデジタルインタラクションに移行するにつれ、完全な形のメタバースというコンセプトが徐々に現実味を帯びてきています。「Decentraland」のように、プレイヤーが完全にコントロールできるバーチャルなオープンワールドがあることで、メタバースは単なる現実逃避の場ではなくなる可能性があります。

従来のビデオゲームがよりリアルになり、より高い没入性を実現しているように、仮想世界でできることの限界は常に押し広げられています。Decentralandに様々な外部アプリケーションやコンテンツを統合することで、プレイヤーは友人とエキサイティングなミニゲームを楽しんだり、ライブアートギャラリーに出かけたりすることができます。近い将来、プレイヤーは仮想のショッピングモールを訪れ、現実世界のアイテムを購入することもできるようになるでしょう。アバター用のウェアラブルNFTを手に入れるだけでなく、同じアイテムを現実の世界で受け取ることもできます。

Decentralandのロードマップの一環として、プロジェクトはVR技術を統合して仮想現実体験を完成させることを志しています。しかし、現在の状態でも、このプロジェクトがユーザーベースを飛躍的に伸ばすことは難しいかもしれません。多くのプレイヤー、特に貧しい国のプレイヤーにとって、ゲームをスムーズに楽しむためには技術的な障壁が高いのです。Decentralandでは、世界中の誰もがメタバースに参加できるように、古いデバイスや携帯電話向けに体験を最適化することが重要です。

Decentralandや他の類似したメタバースは、アーネスト・クラインの小説「Ready Player One」に似た未来を私たちに覗かせてくれました。オアシスのような没入型デジタル世界では、現実世界の制約も、自身の想像力次第でいくらでも拡張可能になります。問題は、私たちにそれを受け入れる準備ができているかどうかです。もしあなたがメタバースを探検する準備ができているなら、Decentralandにすぐに飛び込んで、私たちのバーチャル本社を訪問してみてください。

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Crypto Valley, 左: Krakenバーチャル本社、右: CoinGeckoバーチャル本社

執筆者:CoinGeckoアナリスト「Khor Win Win

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