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クマさん

育成年代で勝つ事を重要視するあまり大切な事を見落としている気がします。

まだまだ部活文化が根付いている今の現状では、大人は頭でわかっていても、子供達にとっては未知の世界。

実際に自分が子供の頃は、勝ちにこだわる環境にいましたし、もちろんその環境に疑問を持つ事もありませんでした。

疑問を持たない事=考えていない。のではなく、違う道、違う環境を知らなかったのです。
僕が高校生や大学とかでバスケを辞めてたら、あの頃が青春で部活の環境に疑問を持つ事もなかったでしょう。
でもプロになり、11年と言うプロ生活の中で感じた事は、子供の頃に勝ちを目指す事よりも、もっともっと技術をバスケットを教えて欲しかったし、何より心構えを知りたかった。

自分の親も僕よりも熱が入っていて、スポーツで全国大会に出る事の価値を物凄く感じていましたし、小学校で全国大会に出場出来た時は、僕より本当に嬉しそうでした。

ただ今思い返せば部活の練習では楽しかったイメージはなく、親にも監督にもめちゃくちゃ怒られて全国大会には出場出来たものの、本当にただ辛かった記憶があります。
ここで一つ疑問です。
【そもそもスポーツは楽しむものなのでは?】

現に中学生になると、同じミニバスの友達は多くがバスケ部に入りませんでした。
「バスケはもうやり尽くした」と言う思いだったんだと思います。
小学生で既にやり尽くしたなどと感じている事がどうかと思いますが、
これは僕も例外ではなく、中学校に上がっても最初はバスケ部には入りませんでした。
「もうバスケはいいや」と。

ミニバスの指導者は勝つ為に指導していました。
これを全て否定するわけではありませんし、指導者の方々はそれぞれ違う想いもあったと思っています。もちろん感謝もしています。

今はネットで勝っているチームの先生方の記事をみれる時代です。
いい事ばかり書いてるし、素晴らしい記事ばかり。
でも本当の記事通りの指導をしているかどうかはわかりません。通っている子供達が本当はどう感じているのか。子供達の試合の中の態度や、監督とのやり取りをみたら僕の疑問は確信にかわりました。
勝っているから正論じゃないですよね。

小学校、中学校、高校、大学までバスケのスキルをバスケ部で教えてもらった事はほとんどありません。だからビデオでNBAのスーパープレイ集をみて物まねばかりしていました。
今思えばもっと教えて欲しかった。

僕が小学生の頃「クマさん」という方がいて、名前の通り熊みたいに大柄な方で当時大学生?だったと思いますが、クマさんはアメリカに留学していて、日本に帰って来た時にはミニバスに顔を出してくれていました。
クマさんはNBAのハイライトのビデオを見せてくれたり、僕は個人的にクマさんに朝5時くらいに自分が通う小学校ではなく、別の小学校の校庭に行き、毎日ハイライトで見たNBA選手がやっている技を教えてもらいました。
レッグスルーやビハインドバック、ロール、リバースレイアップなど。今では普通の技術でも当時は"お洒落"と言われた技術です。
あの頃の僕には毎日クマさんに教えてもらう技を練習する事が本当に楽しかったんです。

今思えばあの経験はかなり大きかったです。

僕はあの時凄く成長しましたし、バスケがどんどん好きになりました。
全国大会ではクマさんから教えてもらった【必殺技】を成功させた時にクマさんが泣いて喜んでいたのを今でも覚えています。

クマさんと練習していた時にバスケの楽しさを感じていなければ、本当に小学生でバスケを辞めていたと思います。

そしてクマさんは、「諦めるな!」「どんな事があっても絶対に諦めるな!」と良く言ってくれました。
あの頃スラムダンク全盛期で、「諦めたら試合終了たい!」と。
クマさんは普段はめちゃくちゃいいお兄ちゃんでしたが、気の弱さなどを見せると、そこはビシッと言ってくれる方でした。

今自分は子供達にバスケを教えています。

たまにクマさんの事を思い出すんですよね。俺はクマさんみたいに誰かの支えになれてるかな?って。

東京のチームから福岡のチームに移籍した時に、福岡のトレーニングジムでクマさんによくお会いしてたんですよね。
「お前は俺の誇りたい。」
そうクマさんに言ってもらえた時は本当に嬉しかったですね。

そんなクマさんも今は天国にいます。
天国からクマさんは今の僕をどうみてくれてるのかな??
育成年代で勝つ事よりも大切な事は沢山あります。勝利を目指す中では大切なメンタリティーもあります。
ただ僕の中では弱気になる事や、ビビってしまう事は自分に自信がないからだと思います。自信がないなら自信が付くまで練習するしかない。
ほとんどの選手はここをクリア出来ないままです。やり切ったと限界を自分で決めている。

僕はみんなの"基準"と"自信"を変えたい。

メンタルのサポートと技術のサポート。
クマさんは幼かったあの頃の僕にとってかけがえのない存在でした。

今僕はバスケを通して沢山の子供達や選手達と関わっています。
僕も誰かの支えになれたらと思い、日々子供達や選手に接しています。
僕は今もクマさんの背中を追いかけています。

これからも頑張ります!

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