双子ちゃん育児の壮絶なリアル。SOSを待ってるだけじゃダメなんだ
突然ですが、こちら何を表している図かわかりますでしょうか。
参照元:https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/03/0327.html
こちらは、新生児の1日の授乳頻度を表したものです。一般に、回数は8回から10回程度と言われています。
ほとんど寝れないじゃん…
お母さん、これほんと大丈夫か…?
現在妻が臨月を迎えている状態の自分としては、身がすくむ思いです…
では、こちらはどうでしょうか。
参照元:https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/03/0327.html
こちらは、生後ゼロヶ月の双子ちゃんの授乳頻度です。
ほとんど寝れてない、というか、寝れなくないですかこれ。
授乳ひとつだけとってもこの調子の双子ちゃんの育児。
双子だけでなく三つ子やそれ以上という場合もあります。これを「多胎児」といいます。
壮絶、というか、これはもう無理ゲーにみえてしまいます。ましてや、ワンオペなんてちょっと考えられません。
全国の多胎児のママパパ、大丈夫なのか…?
…
「大丈夫なわけないだろ」
と、いうことがハッキリした悲し過ぎる事件が2018年に起こりました。
不妊治療の末にようやく三つ子を授かったお母さんが、ワンオペ育児の末に鬱となり、夜に自宅で子どもたちを寝かしつけていた際になかなか寝てくれずに泣き出した次男の声に苛立ち、次男を畳に2回たたきつけ脳損傷により死なせた、という事件です。
これは、衝撃でした。
なぜこんなことが起こってしまったのか、社会ができたことはなかったのか、本当に考えさせられました。その時のエントリがこれです。
そしてつい先日の2019年10月8日、お母さんに懲役3年6カ月の実刑判決がくだされました。
本当に、やるせなさ過ぎます。
せっかく、妊活の末に、ようやくできた待望の子どもなのに。
ワンオペ育児で追い込まれて、誰にも助けを求められなくて(お父さんは育休を取得されたようですが、事件当時は職場に復帰していて、お母さんは独りで寝かしつけていた)
愛しいはずの我が子に苛立って、そしてそんな自分自身を嫌悪して、ずっと楽しみにしていたはずの子育てが地獄になって…
こんなの、辛すぎる。
しかし、実はこの話は「かわいそう」で終わっていい話ではありません。
現代社会では、双子や三つ子といったいわゆる多胎児家庭が増えているからです。
多胎児育児は現代の課題
実は多胎児は約30年前と比べて、なんと1.5倍も増加しているのです。
上図の参照元:https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/03/0327.html
これはいったいなぜなのか?
石川県立看護大学の大木秀一教授は、不妊治療の普及が影響しているとみています。
不妊治療では、双子や3つ子以上ができやすいのです。
自然妊娠で多胎児になる可能性は約1%ですが、生殖医療、体外受精では約5倍の5%に達します
日本では1980年代以降、晩婚化・晩産化が進んでいて、それに伴って不妊治療のニーズが急拡大しています。
日本産科婦人科学会のまとめによると、体外受精など生殖補助治療件数は2012年は約33万件で、5年前の実に約2倍。これは人口比では米国(17万件)の約4倍です。
もはや、この国では多胎児家庭は昔ほど珍しいものではないのです。
それにも関わらず、この国では多胎児家庭を支える仕組みづくりが進んでいません。
そしてそのしわ寄せは、各家庭、特にお母さんに集中しています。
冒頭の三つ子の悲しい事件は、そんなこの社会の歪みがもっとも悲惨な形で顕在化してしまったケースといえます。
本当に、なんとかならないのか…
仲間が立ち上がってくれていた
そんな悶々とだけして、何も具体的な行動を起こすことができていなかった情けない自分。
そんな中、自分が勤めている認定NPO法人フローレンスの仲間のいっちーさんが、なんとアクションを起こしていたのでした。
双子を持つご友人の育児を手伝ったこときっかけにこの問題の深刻さを知り、ソーシャルアクションに接続していたのです。
凄すぎ!!
下記のnoteで、いっちーさんの今回の取組と今後の展開について書かれているので、是非ともご覧ください。
note中にもありますが、いっちーさんはこの問題がいかに大変かを行政に知ってもらうべく、多胎児家庭の育児の悩みについてアンケートを取ることにしました。
最初は10件も集まれば十分かなと思ったいたそうなのですが…
なんと、開始1日で200件を突破。
1週間で650件超え…!
下記、いっちーさんのnoteから抜粋。
(アンケートの件数に)驚いたのと同時に、『それほどまでに、今まで悩みを言う場がなかったんだろうな、、』『きっと1人で抱えてきたんだろうな、、』と想像し、涙が出てきました。
内容も、想像よりずっと、ずっと壮絶。『双子の泣きにそれぞれ対応していたら、15時間たっていました』『乳児期の一日の睡眠時間、16分』『気が狂うかと思った』『目の前のことをこなすのに精一杯で、一分先のことを考えられない。余裕がない。』・・・・これは、本当にほんの一部です。
自分もここぞとばかりにいっちーさんの活動を微力ながらサポートさせてもらってたので、このアンケートはしっかり目を通しました。
そこで綴られていた壮絶な内容から、私が特に重要なポイントだと思ったのは、私たちは多胎児家庭からのSOSを待ってるだけじゃダメなんだ、ということです。
そもそも、助けを求めに行政窓口に行けないとう実態
多胎児の育児に奮闘する保護者の皆さまが慢性的な睡眠不足や人手不足に悩んでいることは容易に想像がつきます。
冒頭の睡眠時間の表を再掲しておきましょう。
多くの人がこれが原因となって心身ともに健康を崩しており、本当にギリギリの状態で日々育児をしています。
ここで、多くの人はこう言います。
行政にいって支援してもらえばいいじゃないの、と。
しかし、アンケートから浮かび上がってきた実態は、そもそも行政窓口までたどり着けないということです。
乳幼児はベビーカーに乗せて移動するわけですが、双子ちゃんや三つ子ちゃんの場合、それがすごい幅をとります。
公共交通機関を使うと、ここから赤ちゃん2人(以上)同時に一回抱き上げて、でかいベビーカーを畳んで、赤ちゃんとベビーカーを抱えて乗車 → 降りたらこれを展開… ということになるわけですが、これはワンオペでは厳しすぎます。
特に、女性ひとりの力では困難であることは想像に難くありません。
そしてもちろん、ミニ怪獣たちが黙って移動させてくれるはずがありません。
泣いて喚いて暴れる赤ちゃんたち2人(以上)をなだめることも必要です。
これを、睡眠不足で体力も気力も慢性的にほぼ底をついている時にやらねばなりません。
ここでさらに追い討ちをかけるのは世間の無理解です。
電車に乗ったら露骨に嫌な顔する人がいたり(そもそも、エレベーターがなかったりして使えないことも)
バスに乗ろうと思ったら乗車拒否されたり
タクシーを使おうとしても双子ベビーカーを載せるスペースがなくて乗車できないケースがあったり…
こういうことが連発するので、もう、外に出て行く気力がなくなってしまうのです。
自宅訪問型の公的保育サービスが必要だ
社会は多胎児家庭からのSOSを待っているだけでは不十分ということなのです。
普通だったら受けられる施設型の行政サービスが受けられないのです。そこに行けないから。
この状況を放置していると、多胎児家庭は社会の中から孤立してしまいます。というより、もうすでにそうなっているのです。
そのツケが、冒頭の悲しすぎる三つ子の事件です。
本当にやらなければならないことは沢山あると思いますが、下記2点は必須だと思います。
① 行政窓口をネットや郵送などで対応可能にする
② 訪問型一時保育・訪問型病児保育などの訪問型保育サービスを多胎児用に整備する
しかし、「〇〇しないといけないと思う!」なんて言ったところで世の中はそう簡単に変わらないのが現実です。
残念ながら。
アンケート拡散のお願い
今度こそ、具体的に、社会のルールを変えたいです。
そしてその社会のルールを変えるのは誰かといいますと、政治家です。
いっちーさんはこの状況を改善しようと、皆さんから集めたアンケートをまとめて政治家のところへ持って行って直談判しようとしています。
いわゆる、ロビー活動というやつです。
そしてこのロビー活動で何が一番効果を発揮するかというと、本当に沢山の人が困っているんだということを証明する市民の声です。
そんな訳で、ぜひ下記のアンケートを、知り合いの双子・三つ子のママパパへシェアして欲しいのです。
あんな悲惨な事件を二度と起こさないため、多胎児を授かったことを心から喜べる社会をつくるため、力を貸して下さい。
よろしくお願いします!
【追記】その後の展開について
皆さまのご協力のおかげで、政治が動きました。多胎育児支援は具体的に前進しています。詳細はこちらのnoteをぜひご確認ください。
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