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私は歓喜の笑顔が見たい

今夜、世界中が注目する試合が行われる。
フィギュアスケート女子シングルFSだ。

この異様な雰囲気の中試合は行われ、(後々変更がある可能性を残しながら)オリンピックチャンピオンが決まる。

比較的豊かで安全な日本で生きてきた私には、独裁政権に支配され、専制主義色の強い国家で生まれ育った人々の経済的・政治的な事情を理解したり、その思考や気持ちに寄り添うことは難しい。それでも彼女を取り巻く環境や年齢、健康上のリスクを考えると本当に胸が痛いし、同情もする。

ただ、件の裁定は決して納得できるものではない。 1選手の年齢や国家的な事情に、必要以上に配慮してしまっては、競技としての公平性は担保できない。

自発か強要か、故意かそうではないかはまた別の問題で、ルールはルール。例外を作っては、組織的な違反を助長させ、さらなる被害者と悲劇を生むだけだと思う。

SPが終わって、日本人選手が素晴らしい演技で好位置につけたことは、本当に嬉しい。世界中からの賞賛も、同じ日本人としてとても誇らしい。

ただ、ひとつとても心配なことがある。

ただでさえ日の丸を背負って…という、私には想像もつかない重圧を感じながらリンクに立つ彼女たちに、日本国民のみならず、世界中からの期待が集中しているように思えるからだ。

どんな大舞台でも勝負強さを見せ、いつも明るく無邪気な笑顔を見せてきたかおちゃんが、演技後に見せた涙に、いかに極限状態だったのかが透けて見えた。

日本人選手は3人とも、技術的にも世界トップレベル。ROCに批判的な意見が集まるこの状況下で、ロシア4回転トリオに、何とか太刀打ち出来そうな彼女たちに期待がかかるのは無理もないかもしれない。

だけど…。
彼女たちを"悪と戦うヒロイン"のように扱うのは違うと思う。
"ジャンヌ・ダルク"に仕立て上げないで欲しい。

私はただ美しい演技が見たい。
(ROCも含め)全てのスケーターが最高のパフォーマンスで、笑顔で滑り切る姿を見たい。

国とか関係なく、素晴らしい演技には賞賛の拍手を送りたかった。

それが難しくなってしまったことが悲しい。
偏見の目で見なくてはならなくなった状況が辛い。

あと数時間。
どんな結果になっても、きっとモヤモヤするんだろうなと思うと気は重いけど…。
少しでも多くの選手が、歓喜の笑顔を見せてくれることを願っている。

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