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2020年上半期マイベストBLコミック 5選

今回は”マイベストBL”コミック5選。選考基準は小説同様、
①2020年1月~6月に発売された作品
②シリーズものの続編ではない(シリーズ1巻目、スピンオフなどCP違いならOK)
③過去作品の新装版や文庫版ではない(同人誌や電子配信の書籍化ならOK)
です。

コミックの方は新たに何冊か読んで、ランキングが入れ替わったので、Twitter投稿画像とは一部異なっています。小説編と同じく、最後に選考基準から漏れた作品も含め、総合トップ10を紹介しておきますね。


『リバース』

麻生ミツ晃/ガッシュコミックス(海王社)

オメガバースの頂点🗻はここかもしれない…❗❗

◆あらすじ◆
小説家の円と警察官の吐木は、同じ施設で育った”同志”で”番”。円はフェロモン分泌が異常で番以外の人間もそのフェロモンを感知してしまう上、番関係を結んだことで遺伝子変化が起こり、一般の抑制剤も効かなくなっている──そう、振る舞っている。
何も知らない吐木は円を支える為と出世を蹴り続け、所轄への異動初日に担当することになったのは、Ωを狙ったレイプ事件。そんな中、円は発情期に入り強烈なフェロモンを発しながら吐木を求める──まるでΩのように……。

麻生ミツ晃さんとの出会いは、栗城偲さんの『蛍火』(コレも最高に好きな作品)の挿絵だったはず。なんて繊細で陰影のある素敵な絵を描かれる方だろうと思い、その後『ティアドロップ』を読んで大ファンになりました。麻生さんの作品はいつも、作中の人々の物語をすぐ側で覗き見ているような、なんとも言えない没入感陶酔感に浸ってしまうんです、私。無駄なカットやセリフが一切無い緻密な脚本繊細なタッチで描かれる美しいキャスト、それを最高の形で見せる完璧な演出‼️麻生さんはまるで一流の映画監督のよう🎬

これまでリアリティのある大人の恋愛を切なく描く作品が中心だったと思います。今回はオメガバースということでどんなお話なのか期待度MAXで読み始めましたが、私の期待値などはるかに超えた圧巻としか言いようのない作品でした❗❗まさに敬服の至りでございます🙇

ではありながらどこか違和感温度差のある二人と、その周辺で起こる連続Ωレイプ事件を軸にしたオメガバース×サスペンス。あらすじが割とネタバレではあるので作品の内容については割愛しますが、違和感の正体や受けの円が隠す秘密とその理由が紐解かれてゆくと、深い愛と悲しみに胸を締め付けられます。重ねた嘘の代償バース性の宿命、それらを超越してたどり着く二人の新しい関係が本当に感動的です✨

先程二人の間に温度差があると言いましたが、麻生さんの作品には共通して温度感があると思うんです。始めは低温状態がしばらく続くのですが、これはトラウマ秘密を抱える登場人物が自分の気持ちを押し殺しているからに他ならず、それが何かのトリガーで感情が爆発して一気に沸点に達する。そうなるともう涙腺崩壊😭この火力調節が本当に巧み!三ツ星シェフでもあるのか!麻生さん☆☆☆

オメガバースというジャンルがBL界で覇権を握る一方、飽和状態とも言える今だからこそ読むべき最高峰のオメガバース作品だと思います。


『群青夏恋』

カシオ/ガールズコミックス(集英社)

「僕の穏やかな日々を壊したのは 美しい君でした」帯がすべてを物語るセンシティブな青春ストーリー。

◆あらすじ◆
「学校までの見飽きた田舎道 時間は腐る程」
クラスメイトとの仲は上々 部活では全国クラスの腕前 何不自由ない高校生活 ただ、つまらない…。
そんな浅井の前に美貌の転校生・紺野が現れ、平穏が崩れ出す──!?

そこはかとなくダークな雰囲気と、繊細さや純粋であるがゆえの危うさ衝動と葛藤の描き方が素晴らしく、私の琴線をかき鳴らしまくるカシオさん。作品のほぼ全て拝読しております。コメディやエロに振った作品でも執着閉塞感などの要素が盛り込まれ、私好みのビターな味付けなんです💕

そしてカシオさんの多くの作品には人を狂わせ魅了する悪魔的な美を持った少年(青年)が登場します。その昔、BLなんて言葉がまだ無く耽美系とかJUNEとか呼ばれていた頃に私が夢中になった"魔性"を感じられるのが堪らないんですよね😍魅入られたら最後、抗えず堕ちていく…お耽美ヽ(*`▽´)/今回の主人公・紺野もそんな人物として描かれています。

不満もないけど何か足りない日々を送っていた浅井の人生は、美貌の少年・紺野との出会いで大きく動き出します。自身に生まれた衝動を簡単に恋や性癖として受け入れられない浅井の家庭環境や、紺野の秘めた想いなどが複雑に絡みながら、それでも互いに求めずにはいられない…。高校生同士の恋愛ものはかくあるべきという私の理想がここにありました❗️DK尊いわ~💕

そしてこの作品の好きポイントは”描き切らない”というところ。曖昧と言うと聞こえは悪いですが、はっきりとした描写を避けることで読者を惹きつけると同時に、10代ならではの不安定さ危うさを表現することにも成功しています。こういった読者に委ねるような作品は消化不良ととられるリスクはありますが、この作品はその余韻というか残り香が心地良くて、これで良いんだ!と思わせてしまう力があるんですよね。流石は匂わせの達人余白の魔術師!(←勝手に呼んでる)

繊細な二人の短い夏の美しい物語。思わずこの後の季節の恋に思いを馳せてしまいました😳


『ベイカーベイカーパラドクス』

暮田マキネ/花丸コミックス プレミアム(白泉社)

カバー絵やあらすじとのギャップに悶える!後悔が生んだ歪み共依存が美味しいガチ兄弟ものに長年の飢えが満たされました😋

◆あらすじ◆
ちょっとおバカな兄・ユキと、しっかり者の弟・臣は二つ違いの兄弟で同級生。
だめだめで甘ったれなユキに並々ならぬ想いを抱いている臣は、振られたと泣きつく彼を兄弟ルールで慰めたりと、お世話にいそしむ忙しい毎日だ。
ところがある日、突然ユキに「彼女ができた!」と無邪気に告げられて……。
臣がとった行動とは!? 歪でピュアな、兄弟愛!

暮田マキネさんに対する勝手なイメージ。ふわふわした可愛い絵を裏切るストーリーの痛さ執着美味しい、トロ顔エロ過ぎ!!『還らずの夏』に収録されていた短編「All things I know.」(その後『ファザー・ファッカー』としてコミック化)の親子ものでドハマリしまして、それ以来いつか兄弟ものを描いて欲しいと切望していたマンガ家さんです。

Twitterのフォロワーさんはご存知でしょうが、私は兄弟ものが❗特にガチ兄弟がっ❗❗大好物なんです(;゚∀゚)=3 地雷ネタだから致し方ないのですが、近親ものは作品数が凄く少ない😣短編としてコミックに収録されたらで良い方で表題作になるのは稀。ましてや血縁関係のある兄弟なんてレア中のレアな訳です。だから1冊丸々ガチ兄弟のコミックというのはもはや奇跡✨マキネさんと白泉社さんに足を向けて寝られません!

一見あまあまに見える十亀兄弟、結構病んでます😨心が幼い兄を守って甘やかすため”兄弟ルール”という名の束縛箱庭に閉じ込める弟の執着。兄が自立の意思を見せたことで壊れていく関係。囚われているのは本当はどっち❓と思わせる共依存と後半兄が見せた闇の部分にゾクゾクしました!

正直なところ、私が期待したガチ兄弟ならではの背徳感禁忌色は薄く、前述した共依存による歪みがクローズアップされている印象ではあるのですが、それはそれで別の美味しさがあるものです。兄弟はみんなちがって、みんないい!

タイトルとなっている”ベイカーベイカーパラドクス”とは心理学用語で「思い出したい事柄の周辺は次々に想起されるのに、肝心の事柄が思い出せない」という心理現象のことだそうです。あとがきを読んでもう一度見直すと、表紙も裏表紙も文字がところどころ消えかけてるんですよね。技ありのカバー!!こういうの好き💗近親が地雷じゃなければ執着ものとして楽しめるはず🎵



『親愛なるジーンへ 1』

吾妻香夜/ショコラコミックス(心交社)

こんなに続きが気になって仕方ないコミックは久しぶり!名作の予感しかしない👑

◆あらすじ◆
NYに住む伯父・トレヴァーの書斎で一冊の手記を見つけたジーン。
そこには、自分ではない“ジーン”について綴られていた。――1973年。
弁護士のトレヴァーは重要な書類を紛失する。
雪が降りしきる中、それを届けてくれたのは清掃員していたジーンだった。
ボイラー室で暮らしているという、見るからにみすぼらしい彼を放っておけず、トレヴァーはお礼も兼ねてハウスキーパーをしないかと持ちかける。
まるで中世からやってきたような世慣れなさに反し、教養を感じさせる美しい元アーミッシュの青年ジーンとの同居生活は、ゲイであるトレヴァーに羨望と穏やかな幸せをもたらすが――。

Twitterに画像投稿した時点では未発売だったこの作品が神スライディングで5選に滑り込んで来ました💨というか本来続き物は除外して選んでいたのを”1巻目ならOK”なんて苦しすぎる付加条件つけてまで無理矢理ねじ込むくらいには最高すぎたんですよ、コレ(笑)未完結の作品入れるのってどうなの❓って迷いは一応あったんですよ?でも選ばない方がありえないと思っちゃったんですもん…😜

『ラムスプリンガの情景』で大ファンになった吾妻香夜さん。今作はそのスピンオフでやはり”アーミッシュ(俗世を捨て自然のままに生きる宗教集団)”と1970年代という時代を背景に描かれます。

性マイノリティに今よりもっと偏見があった時代、自分のセクシャリティーを隠して生きるトレヴァーの前に現れた美しい青年・ジーン。家族と故郷を捨てアーミッシュとして生きることをやめたジーンは俗世を知らない純真な青年✨何も持たないジーンにトレヴァーがあらゆるものを与えているようでいて、トレヴァーの心の穴をジーンの存在が埋めてゆく。その共生関係が美しく描かれます。

この作品、読ませ方がとにかく巧み。トレヴァーによって綴られた(自分とは違う)もうひとりのジーンとの愛の回想録を、甥っ子のジーン視点で共に読み進めるという手法。タイトルカバー絵手記風で本当に素敵💖

若く美しく天使のようなジーン👼に心を奪われ焦がれてやまない。触れようと思えば触れられる近さにあるのに、触れてはいけない汚してはならないと遠ざけてしまう。トレヴァーにとってのジーンは、作中にも登場する名画『ベニスに死す』の”タジオ”なんだと思います。

2巻で完結とのことですが、まだ手記中のジーンの現在には触れられていません。二人のジーンとトレヴァーの関係がどうなっていくのか知りたいけれど少し怖くもあり…でもやっぱり早く読みたい❗❗どんな結末を迎えたとしても、私にとって宝物になるのは間違いないと思える素晴らしい作品です。


『雨月堂アンティーク』

露久ふみ/マーブルコミックス(東京漫画社)

現実と非現実、冷静と興奮、強さと弱さ、光と闇。相反するものがクロスオーバーするミステリアスな世界観純愛に心惹かれるファンタジックBL!

◆あらすじ◆
願いの種子が芽吹く、からだのおくそこで――雨の日にだけ現れる不思議な骨董店で、遠い昔に失くしたはずの祖父の形見をみつけた颯(そう)。
異質な空気を纏う店主・月路(つきじ)に、ぜひ譲ってくれと頼むが、この店で代金として貰うものはお金ではないという。不敵な笑みを浮かべる月路が出した条件は
「僕の子供を産んでください」――?!

あらすじとカバー絵の雰囲気が気になって購入したこの作品。露久ふみさんは初読みだと思っていたのですが、電子で女装攻めのを読んでました(笑)テイストが違いすぎて全然気づかなかった😅

突然の雨に降られて迷い込んだ「雨月堂骨董店」の謎めいた店主・月路に、祖父の形見の懐中時計を譲る代わりに子供を産んで欲しいと条件を出されたインテリアのバイヤー・速水。半ば自棄に条件を飲むも、会うたびに繰り返される濃厚な行為徐々に縮まる二人の距離。月路が一体何者何の目的でそんな条件を持ちかけたのか?何故二人は出会い惹かれ合うのか?お互いを思ってそれぞれが出した答えとは?それらがエピソードを交えて明らかになっていきます。

この作品、まずキャラクターが凄く好み!無機質クールな容姿の攻めは身体と頭は大人ですが、心は子供のように純粋幼い。そのアンバランスさがイイ👍敬語攻めなところも実は甘党なところも、サスペンダー&腕まくり男子なところも萌えます💗そして受け。儚げ美人な外見に反して中身は意外と男前!骨董品に目を輝かせる姿も可愛いし口元のホクロがえっちぃです😍

キーワードである”雨”、全体に漂うしっとりとした空気、作品全体を通して湿度高めなのが本当にたまらないんです!蒸し暑い室内での子作りHはもうつゆだく( ̄ρ ̄*)とにかく容赦なくがっつく攻めの、興奮や快感で終始涙目な受けのぐしゃぐしゃな表情、二人の吐息とたっぷりの白い蜜///オメガバースとも花嫁ものとも違うのですが、子作りってやっぱり最高に滾りますよね💕💕気持ちよすぎて泣いちゃう受け可愛すぎた…💕

互いに孤独を抱える二人が、寂しさを埋めるように寄り添い求め合うような愛に、上手くファンタジー要素を絡めた良作でした🎵カバー下も絶対にお見逃し無く❗❗❗




総合トップ10(続編・新装版含む)

『リバース』麻生ミツ晃
『群青夏恋』カシオ
『ベイカーベイカーパラドクス』暮田マキネ
『親愛なるジーンへ 1』吾妻香夜
『雨月堂アンティーク』露久ふみ
『愛とはかくも度し難い』峰島なわこ
『となりのメタラーさん』マミタ
『アダムの肋骨 2』みちのくアタミ
『四人のにびいろ 3』akabeko
『ネコ×ネコ beginning』たつもとみお



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