『Bright Now』あとがき

 トライスタービジョン1stライブ小説本『Bright Now』を刊行した。

 即売会・ISF10で無事に頒布出来、通販にておおよその人に行き渡ったため、本誌には収録しなかったあとがきを書いていく。


謝辞

 本誌を作成するにあたって、ご尽力いただいた二名に感謝をお伝えしたい。
 まずは表紙・裏表紙を描いていただいたすも様。初めての同人誌、トライスタービジョンの小説本『輝く瞬間』から七年、絵というものはここまで眩しく、輝くものになるのかと完成データを見て感動していたが、本を手に取ったらその感動が更新された。ほんとうに良い表紙だと思う。『輝く瞬間』は物語の展開上所恵美がセンターにならないという、今思うと異色なことをしているのだけれど、今回は王道の――全ての始まりともいえる『アイドルマスターミリオンライブ!』のカードイラスト『トライスタービジョン 所恵美』を踏襲した形になっている。裏表紙はライブBDっぽい情報を色々と作っていただいて、この小説本がまるで実在するBDパッケージのようなアイテムになってくれた。更には、本作を執筆するにあたって、1stライブに対するアイドルのスケジュール感、人数規模やセットリストについても多くの助言をいただいた。実際に三次元アイドルの現地に赴き、アイドルを推し続けているからこそいただける見地が、本作を迷い無く執筆するための支えになりました。ほんとうにありがとうございます。
 そして本誌を頒布するスペースをご提供いただいた吉崎堅牢様。自分が同人活動をするきっかけとなった御方であり、『アイドルマスターミリオンライブ!』の至極と言えるような小説たちを執筆し、本年四年ぶりに新刊を刊行された吉崎さん。今回ご縁があり同じスペースで新刊を頒布させていただいたが、夢のような機会をいただいてほんとうに嬉しかった。ほんとうにありがとうございます。新作のbooth販売はこちら。

回顧

 話したいことは山ほどあるのだけれど、あとがきという場で何でも書くのも格好がつかないため、詳しい制作の背景はまた別の記事にて。
 ともあれ本誌について思いを馳せていくと、一つ思い出すのは2020年頃、作品としては『所恵美の放課後ファミレストーク!』(pixiv公開中)を執筆していた頃から考えていた、トライスタービジョンに関する諸情報である。その中でさらっと文字だけを置いた、彼女たちが出しているらしいCDシングルのタイトルや楽曲に対して、より肉付けをしたい、実在するものにしたい、という思いから執筆は始まったかもしれない。過去作『輝く瞬間』『夏星、跳ねる。』自体もシングルのタイトル的な印象があったので、この機会に詩と曲を付けた。その試みが上手くいったのは、三作目の『falling dawn』で実際に『falling dawn』という楽曲を作り上げたからかもしれない。曲数としては七曲作った。作者である自分だけが口ずさむことが出来る。妄想力逞しい人間なので、ふとした折にそれらが口をついた時、まるでほんとうに曲が存在しているような錯覚に浸れて楽しい。この遊びは暫く続くように思う。
 ライブについて触れたので次はドキュメンタリーについて。本作がライブ・ドキュメンタリー・バラエティという三つの構成から成る本になる、と決定づけた時点で、この本は大体『出来た』ように思う。得てして優れたアイデアには、その後の苦労を厭わせない力があるように思う(逆説的に言えば、厭わせない力を出せるほどのアイデアを出さなければ、本は完成しないとも言える)。ただドキュメンタリーというものをあまり見てこなかったので、幾つか見た。見た時のメモ書きを数えたら10本以上あった。結構見たなぁ。それらを通して何らかの方向性を決めたというよりも、『これらのようにはならないだろう』という気持ちで、アイマス的な明るさと、トライスタービジョンらしいポジティブさを持ったドキュメンタリーにしようと思った。
 そしてバラエティは、アイドルマスターのライブパッケージに付いてきそうな特典映像にしよう、という意識で執筆した。あとはアニマスのゲロゲロキッチンも同類かと。先述したように明るさとポジティブさと、そして多少の笑いを含めるようにした結果、横山奈緒が出ずっぱりになった。彼女にはほんとうにお世話になっているので、次は彼女を主役に据えた、楽しい小説を書こうと思っている。具体的には、彼女と佐竹美奈子がメインとなりつつ、楽曲をドラフトし、自分たちでライブを作るという物語だ。こうしてあとがきに次の本のことを書くのは初めてになる。どんな本になるのか、期待と不安が半分半分、ならば期待を信じる他ない。

展望

 トライスタービジョンの同人誌は、こうして一つの到達点に至った。終わりではないのだけれど、もし仮に、この先彼女たちの話を書かないとしても、後悔のない一冊になったと自負している。人生先のことは何も分からないので、節目であることはちゃんと意識しておきたい。ただ、この先のことを考えていないでもない。森博嗣がVシリーズを十年近い構想を以て書き上げたように、いつかそれを書くに相応しい年齢になって、その時もまだ彼女たちの姿が思い浮かび、それを示す場があるのなら、書いてみたいと思っている。

秘話

 最後に一つだけ種明かし。ドキュメンタリーを通して問われる質問は、アニメ『アイドルマスター』の第一話で問われる『あなたにとってアイドルとは?』のオマージュである。そしてこの問いは常に私の中にあり、七年という時を経て、遂にその答えを見つけたのであった。
 ――あなたにとって『トライスタービジョン』とは?
 そこにいてほしいと願う限り、限りなく光をはなってくれる三人のアイドル。
 七年もかかったけれど、あなたたちの1stライブを見れてほんとうに良かった。