サークル・バンコクの言葉の所信表明

 鉄は熱いうちに打て、とはよく言うもので、ここ数ヶ月考えていたことをちゃんと言語化して、所信表明をしたくなったので書く。
 即売会が殆どなくなってしまってから一年半、『バンコクの言葉』という文字を書いたのもかなり久しぶりになってしまったが、それでも、この看板を背負って立っている自覚がまだある。
『バンコクの言葉』は、小説同人誌を作るサークルである。2020年は三作の同人誌を刊行し、出来た本を部屋の奥の段ボールに仕舞い込み、即売会の日を待ちわびている。2021年はあまり小説を書いておらず、これではまずいなと思い、予定や時間を整理して、ここに至る。
 先ずは当初予定していた二つの予定について。

・トライスタービジョン短編小説連載『トラビのウワサ』

 これは然るべきところまで書く。かなり趣味寄りの、ニッチなテキストになってしまったものの、個人的に楽しいのだから仕方ない。トライスタービジョンが2ndライブをやっていることがとても嬉しい。
 嘗て、アイドルの実在性なることを考えていたことがある。架空のアイドルである彼女たちに、どれだけ実在性を伴わせることができるか――それは例えば、実在アイドルっぽさを描画することであり、実在する人間のように描画することであると思う。
『トラビのウワサ』は、何かの雑誌に載っているという体で連載を続けることで、単純に『アイドルが実在する』ことを表現している、と思っている。何はともあれ毎週アイドルが何かをしていてくれたら嬉しい。俺は嬉しかった。そんな気持ち一つで続けてこれたように思う。
 余談だけれど、トラビのウワサというタイトルにしたのは或る理由がある。GRAPEVINEというバンドがいる。大好きなバンドだ。この名前の由来は、『I Heard It Through The Grapevine』から来ているらしい。この曲の邦題は『悲しいうわさ』という。そこから来ている。我ながら何を書いているんだろうと思う。でも、何かを採用する決め手って案外そんなものというか、拘りってそういうことなんじゃないかと信じている。

・トライスタービジョン短編小説連載『星追い』

 年明けには、『トラビのウワサ』と並行して連載を頑張ろうと息巻いていたが、結果書けなかった。理由らしいものは幾らでも並べられるが、まぁ、言っても仕方ない。やると自分に誓ったことを果たせなかった後悔は、この先も尾を引くと思う。それでも、次に進むために何かをしない決断をする必要があった。

 では、当初の予定を片付けて、この先何をするのか。これが本題である。

・サイレンススズカ小説同人誌『疾走』

 題目は仮である。正直、これ以外はまだ空想でしかないけれど、これを2021年の小説として書くことにした。
 今年の二月末、体力も精神も瀬戸際にあった最中に、不意に見たウマ娘の走る姿に心惹かれてゲームを始めて、競馬にも興味を持ちつつあった頃、友人に教えてもらったのがサイレンススズカにまつわる記事だった。

 ちょうど友人と通話をしながら読んでいて、つい泣いてしまったのを覚えている。その気持ちが今日までウマ娘と自分を繋いでるのは間違いない。間違いないのだが……最初に星3ウマ娘を選べる権利はシンボリルドルフに使ってしまい、とにかく『汝、皇帝の神意を見よ』で勝ちたくて、今ではちょっぴりションボリルドルフである。まぁ彼女は彼女で好きなので後悔はしていない。
 目下課題としてはゲームでサイレンススズカに触れることなのでけれど、いよいよ手段を選べなくなりつつあるので、今週末のイベントで都合の良い報せが来ると信じて疑っていない。当てるための資金は用意しているので、機会が来るのを待つのみである。
 ともあれ、ウマ娘の小説を書く。何を書きたいかというと、サイレンススズカが疾走する姿に他ならない。史実・アニメ・ゲーム……その全てをひっくるめて、一つの姿を描けたらと思う。それが、二月末に救われたことへの恩返しになればと思っている。

・トライスタービジョン小説同人誌『』(題目未定)

 ウマ娘の小説が無事に終わったら、改めてトライスタービジョンを描きたい。書きたいことは決まっていて、ずっと前から決まっていて、これを書けたら、何か自分の中で一つ、到達するのではないかと、思っている。
 前作『falling dawn』が想像以上に分厚く、そして力強い作品になったこともあって、正直力尽きたように感じた部分もあったけれど、それでも、書きたいことは書いておきたい。
 公開はかなり先のことになる筈で、基本長い予告はしない主義だったのだけれど、即売会以外の目標(〆切)を打ち立てなければ、前に進めないと思ったので、ここに到達点を定める。『輝く瞬間』から始まり、彼女たちの物語も一年が過ぎようとしている。そういう物語になると、予感している。

 この二つの大きな目標以外にも、何本か習作を書いたり、例年通り田中琴葉の誕生日小説を書いたり、とある企画に参加したりする予定である。逆に、それ以外の場面で小説を書くことはなかなかないんじゃないかと思う。昔の多忙さを思うと時の流れに驚かされるものの、相も変わらず自分のやりたいと思ったことを出来ているので、良しとしている。

 この所信表明を読んでくれる方に、いつか読んで貰えるようなものを書きたいと思っている。同人活動を始めたころから変わらない思いとして、素人の書き物を時間をかけて読んで貰えていることには、感謝の念が尽きない。
 ありがとうございます。お陰様でこうして続いてきました。引き続き、気が向いた時にご縁があればと思います。

 こうして書いたからには書く。頑張ろう。